***23号続き***


 ヒッタイト帝国の皇帝カイルが 体調を崩している。その情報は軍の最前線からではなく 
エジプト宮廷から起った。軍の前線を通り越して 宮廷に 敵国の陣営の情報が 知れるわけない。
ユーリは ヒッタイト最前線に...カイルのすぐ側にスパイがいるのではないかと考える。
「大変だ!カイルの身が・・・カイルのすぐ側にスパイがいるかもしれない!」
 子を無くして 何も見えず 何も聞こえず 何も手につかない状態だったユーリは
やっと正気に戻った。
「皇帝陛下のご状態を 知ることが出来るなんて陛下の側近に近いものが
スパイかもしれません。一体誰が・・・。」
ルサファが 不安と険しさの混ざった表情をした。
「分からない・・・。一番考えられるのは ナキア皇太后の手の者よね。
それよりもカイルが体調を崩したなんて 心配だわ。」
 正気に戻ったユーリだが カイルの身を案じ また一つ心を痛めることが増えてしまった。
「ユーリ様。きっと皇帝陛下は ユーリ様の安否が分からず体調を崩して
いらっしゃるのだとと思います。ラムセスに捕われの身である私達ですが
取り合えず 私達は無事であることを 皇帝陛下にお知らせしたほうが
いいのではないかと思うのですが・・・。」
「で、でも・・・私 カイルに合わせる顔なんてないわ。何て言ったらいいのか・・・。」
ユーリの表情は再び 先程までの暗い表情に戻った。
「何を言うのです!海に投げ出され、エジプトのチャーター船でしたが
助けれらたこと 幸運に思うべきです。その幸運を 無駄にはしてはいけません。
カイル様に、皇帝陛下になんとしてでも 連絡を取るべきです!」
 ルサファは カイルのことを またカイルの率いるヒッタイト帝国のことを そして
何よりもユーリのことを考えて 連絡を取るように強く言った。
 ユーリは暫く考えた。カイルの肩には ヒッタイト帝国のすべての重みがかかっている。
政治も軍事も経済も。平民の安全な暮らしも 全てカイルの肩に担っているのだ。
その重荷を 分かち合うために カイルの正妃に・・・タワナアンナになろうと決心した。
こんなところで 何もせずボウっとしていてはダメだ!
 ユーリは やっと目覚めた。
「わかった・・・。けどどうやって?ここはラムセスの家だもの。
連絡を取ると言っても どうやって取るの?私の持っている携帯電話は エジプトだから圏外だし。
第一、充電が切れてるわ。」
「私の携帯もです。充電どころか、海水に浸かっていたのでもう使い物になりません。」
ユーリとルサファは 携帯を見つめ 溜息をついた。
「ねえ!電話といえば!ラムセスの家の何処かに パソコンはないのかしら?
電話回線を使って・・・E.メールで連絡を取るのよ!」
「そうですね。ユーリ様!こんな大きく立派なラムセスの家。パソコンに一台や二台、
探せばきっと何処かにありそうですよね。」
 ユーリとルサファの表情は 少し明るくなった。2人は ラムセスの家から パソコンを探し出し
カイルへ E.メールを送ることを試みることにした。

 草木も眠る牛三つ時。ラムセスの屋敷は 静まり返っていた。
ルサファは ラムセスの屋敷の一室にパソコンを一台見つけた。ユーリを連れて
そうっと 2人はパソコンのある部屋に忍び込んだ。
 パチン。ユーリはパソコンの電源を押した。パソコンの電源は入り
しばらくすると 暗い部屋にボウっとモニターの明かりが浮き出た。
 WINDOWS B.C.14と言う文字が出た。この時代の最新版は WINDOWS B.C.13だが
このパソコンには一つ古い型のWINDOWS B.C.14が入っているようだった。
WINDOWS B.C.14の文字が消え マイコンピューターやマイドキュメント、ごみ箱などの
アイコンが左端ポツポツと並んだ。次に壁紙が すうっと浮き出た。
「薔薇だ!」
ユーリは 小さな声で言った。(ねね家PCと同じじゃ♪)
「Outlook Expressが入ってますよ。ユーリ様。これなら メールが送れますね。」
「良かった。あっ ポスペも入ってる。ラムセス家では 何のペット飼っているのかしら?」
ユーリは ポスペのアイコンをダブルクリックした。
 ラムメカの部屋という部屋が出た。薔薇模様の部屋に赤いパソコンが こちらを見つめていた。
どうやらラムセス家では メカのラムメカを飼っているらしい。
「ラ、ラムメカ・・・?おやつは何があるのかしら?」
ユーリはおやつを あけた。ノーマルのおやつの他に 薔薇おやつがあった。
試しに 薔薇おやつをあげてみた。ラムメカは喜んで 薔薇を食べた。
 次にユーリは ラムメカにマウスを当てた。
「日頃の恨みよ!殴ってやるーーーー!!!!」
ユーリは マウスでラムメカをボカボカ殴った。ラムメカは 殴られパキーンと
金属音を鳴らした。
「ユーリ様!遊んでいる場合では ありません。早くこっちの Outlookで 
皇帝陛下にメールを出しましょう。メールアドレスは ユーリ様お分かりですか?」
「うん、分かるよ。私とカイルだけのヒミツのメアドがあるの。
えーっと、カイルのメアドは・・・yu-ri_love@hittaito.○×.△□でしょ。
私のメアドは kairu_sukisuki@hittaito.○×.△□っと入れて・・・。」
 ルサファは カイルとユーリのメアドに少し退いた。だが 連絡が取れれば
どんなメアドだろうが 関係ない。誰かに見つからないように 早くメールを
書くようユーリを 急がせた。
 メールの内容は 海に投げ出された後 不運なのか?幸運なのか?
エジプトのチャーター船に助けられ 今はラムセスに連れられて エジプトにいること。
カイルのすぐ側に エジプト宮廷に通じるスパイがいるかもしれないということ。
それら2つについて書いた。敢えて子のことには 触れなかった。
振れることが出来なかったのである。
「さあ、書けたわ。あとはきちんと送信できるかどうかが問題ね。」
 ユーリは メール送信のボタンをクリックした。すぐにインターネットに
接続され ユーザー名とパスワードのチャックが入った。パスワードも
確認され ネットに繋がり メールの送信が始まった。
『送信完了』の文字が画面に出た。
「やった!送信できたわ!」
ユーリとルサファは 小声で喜んだ。
 とその時、カチャンとドアが開いた。
「あら?何してるの?お二人さん。」
 ラムセスの妹 ネフェルトが部屋に入ってきたのだ!焦る ユーリとルサファ。
せっかくカイルにメールを出せたのに このままではラムセスに告げ口されるか?!
「あら、ネットやってるの?やっぱり夜は11時からの テレホよね♪
どうぞネットサーフィン楽しんで行ってね。そうだ!ラムセス家で HP持っているのよ。
一応アドレス紹介しておくわね。アドレスは・・・
http://www.ro-s.ramusesu.○×.△□よ。暇だったら遊びに来てね。」
 ネフェルトはアドレスを押しつけ 部屋から出て行ってしまった。
「な、何?今の・・・私達がパソコン使っても 大丈夫なのかしら・・・?」
ユーリは 呆然とした。
「とにかく メールを送ってしまえばこっちのものです。
ユーリ様!カイル様の元に メールが届くことを祈りましょう!」
 やれることはやった!(本当にそうだろうか・・・?)
あとは 邪魔されるされることなく メールが届くことを祈るばかりである。

〜おわり!〜



注意;くれぐれもカイルやユーリのメアド、またはラムセス家のHPに
   繋げないように。絶対に繋がりません!(爆)