天国の新入り




 人気シリーズ?(爆)天国パロディに新しいメンバーが増えた。あまり喜ばしいことでは
ないけど、本編のストーリー上仕方のなかったことなのだ。
 エジプト戦でラムセスの刃により命を落としたヒッタイト帝国第5皇子のマリ殿下。
少し遅れてユーリの流産した赤ちゃんがこの天国にやってきたのだ。
赤ちゃんの名前がないので、ここでタイル君と命名しよう(第一皇子がデイルだから・爆)。
「まあまあまあまあ、マリ殿下にタイルさま。こんな何もないところに
よく御出でくださいました。さあさ、どうぞ上がってください」
 先に天国の住人となっていたウルスラは、すっかり世話焼きオババ……じゃなかった
世話焼きおねーさんのようになっていた。
「別に好きでここに来たわけじゃないんだけど……」
「ばぶー」
 2人はウルスラが勧めるがまま天国に足を踏み入れた。
「おおおおおお! マリ! よく来たな! さあさ、新しいメンバーが加わったので
今日は宴会じゃー! よいな我が永遠のライバル、ミタンニ王トッシュラッタ!」
 そう叫んだのはザナンザの父であり、マリの父である先々帝シュッピルリウマ王で
あった。
「父上、また宴会ですか? 天国に来てからというものずっと飲みっぱなしじゃないですか。
麻雀に勝っても宴会、負けても残念会。一日たりとしてアルコールの抜ける日なんて
ないですよ。休肝日っていう言葉をしらないんですか?」
 父を気遣うのは第4皇子のザナンザであった。
「ええい! うるさい! 私が宴会をすると言ったらするのじゃ!
それよりも……タイルくん……私の孫じゃぁ〜。おお! なんとかわいい!
こんな所に来て孫が抱けるなんて思っても見なかったぞ。およよよよよ」
 カイルとユーリの子にあたるタイルくんを抱き上げてシュッピルリウマは泣いた。
「はぁ〜い」
 イクラちゃんのように「ばぶー」と「はぁ〜い」しか言えないタイル君。
小さなもみじのような手でヒゲをグイグイ引っ張っていたがシュッピルリウマは
かわいくて仕方がないようだ。
 ザナンザは休肝日を作るように勧めたが、やはり宴会は行われた。花の咲き乱れる天国で
連日、飲めや歌えやの大騒ぎ。宴会はいつまでも続いていた。

 それからしばらく天河主要キャラ関連で天国に来る者はいなかった。
 しかし、ある日トントンとドアを叩く音がした。世話焼きオババ……
いやおねーさんのウルスラが「はぁ〜い!」と小刻みに走りながら迎え出ると……。
「ウ、ウルヒ! それもハダカ!」
 ウルスラはいつもより1オクターブ高い声をあげた。
「何? ウルヒ!?」
 ウルスラの声にザナンザやマリ、ティト、シュッピルリウマがかけつけた。
「フフフ、私も命を落としてしまいましてね。今日からこちらの仲間入りさせて
もらいますよ……」
 長い金髪をなびかせてウルヒはクールに言った。
「ななななな、なんでウルヒがこの天国に……」
「あんなに悪行を重ねた男が何故天国?!」
「そうだ! 私はお前に殺されたのだ!」
 ウルヒに殺されたシュッピルリウマをはじめ、みんな彼に向かって怒っていた。
「私の美しさがこの天国に導いたのでしょう! みなさん、どうぞよろしく」
 素っ裸のウルヒは両手を広げて挨拶をした。
「ちょっとどうでもいいけど何でハダカなのよ! レディの前よっ!」
「おやおやあなたはウルスラさんじゃありませんか! 死んだ時ハダカだから
仕方ないんですよっ!」
 ウルヒはウルスラに向かってお尻をきゅっと突き出しウインクした。
「ウルヒが天国なんて間違いだ! どこかで手違いがあったんだろう。
役所に問い合わせろ!」
 ザナンザとマリは急いで天国3丁目にある役所に問い合わせに行った。

 しばらくしてザナンザとマリが帰ってきた。
「やはりウルヒは間違いだった。天国か地獄かを決める裁判所のねねという裁判官が
ウルヒの美貌とハダカに見とれて天国行きのスタンプを押してしまったんだと!」
「やはりそうか……で、ウルヒをどうするんだ?」
「役所で地獄行きバスの回数券をもらってきた。今度の5時13分に地獄行きのバスが
来るからそれに乗せるように言われたんだ」
 ザナンザとマリは地獄行きの回数券をみんなに見せた。
「そうよね、やっぱりウルヒが天国なんて間違いよね」
「そうじゃそうじゃ!」
 ウルスラもシュッピルリウマも強く賛同した。
「と、いうわけでウルヒ。お前はやっぱり地獄だってさ、諦めろ!」
 ザナンザは強く言った。
「うううう〜ん。それは残念んんん〜。ここでナキアさまを待とうと思っていたのにィ〜」
 素っ裸のウルヒは体をクネクネさせながら言った。
「ナキア皇太后がここに来るわけないでしょ! えええい! クネクネするなっ! 
気持ち悪い。早くバス停に行けー!」
 ウルヒの傷のついた背中を蹴っ飛ばしたのはウルスラであった。
「地獄に行くのは仕方ありませんが……。もし、もし! ナキアさまが
天国にいらしたらどうしよう……。私は地獄、ナキアさまは天国、
現世で結ばれなかったのに、死んでも結ばれないことになってしまう……。
もしもナキアさまが天国だったら!」
 ウルヒは突然ナキアの心配をしはじめた。
「だからナキア皇太后が天国のわけないでしょ!」
「あんなの天国に来たら迷惑だよな……」
「心配しなくても地獄だよな!」
「もし天国に誤って来ても、地獄に送ってあげるから安心しな……」
 天国キャラのメンバーたちはナキアは地獄と信じて疑わないようだ。
「じゃあ、ナキアさまがもし天国に来たら、ウルヒが地獄で待ってると伝えて
下さいね。必ずですよ!」
 ウルヒは懇願した。
「はいはい、必ず伝えるから安心しな……」
「必ずですよ!」
 ウルヒは強く念を押して地獄行きのバスに乗った。
「ナキア皇太后が天国に来るわけないのに……」
 天国キャラ一同は地獄行きのバスを見送りながら溜息をついた。

 果たしてナキアは天国か? 地獄か? ウルヒとナキアは結ばれるのか?(爆)


♪おわり

地獄でのウルヒへ