****皇帝(タバルナ)賞〜ユーリはオレのものだ編〜****


 「バンクス主催、ヒッタイト帝国天皇賞……もとい皇帝(タバルナ)賞がこれから開催されます。
解説は私ハデイと、実を言うと隠れ競馬ファンの解説者イル・バーニ様です。
さあ今日のレースの勝者にはユーリ・イシュタル様を獲得できるという大特典付き。
ユーリ・イシュタルを我が物にしようと各地から様々な方が集まっております。
では第二神殿競馬場にいるリュイさん、参加者の意気込みを聞いてください。」

 「はいこちらリュイです。すごい熱気です。みなさん燃えていますよ!
では早速、1枠の方から紹介していきましょう。1枠のカイル・ムルシリさん、今日のレースの意気込みは?」
 リポーターはニコニコ笑顔でマイクを向けた。
「ユーリの心は私にあるのに何故こんなことするんだ。まあ、どうせ私が勝つに決まっているが……」
 未来の妻が商品とあって、皇帝陛下はやや不機嫌であった。
「あ……えっと、自身満々のカイル・ムルシリさんでした。では、2枠の……えっ、あらまあ 
あなたはザナンザ殿下ではございませんか どうしてここにいらっしゃるんです?」
 「ユーリを獲得できる最後のチャンスだと思って冥界の世界から舞い戻ってきたんだ。
ユーリ私が勝つことができたら一緒に冥界に行ってくれ。」
「・・・はあ、なんだかすごいことになっていますが、とりあえず次に行ってみましょう。
3枠はと・・元ミタンニ帝国王太子 黒大子ことマッテイワザさんです。マッテイワザさん
今日はなぜこのレースに参加しようと思ったんですか?」
 「ミタンニ帝国再建のためにまずは名をあげようと思ってな。イシュタルを我が物にしたと
皆に知れたら私の株も上がるだろう?はははっ。」
「み、みなさまいろいろな思惑があるようです。さっさと次に行きましょう。えっと次は・・・
できれば紹介したくないです。この方。4枠のエジプトからお越しのラムセスさんです。
いつものことながら なんて格好なさってるんです?」
 リュイが聞くのも無理もない。このくそ暑い乾季にマントをかぶり、
エベレストにでも登るのではないかという大きなリュックを背負っていたのだった。
「ふふふ よくぞ聞いてくれた。リュイおまえはいい女だぜ」
 と、言うや否や――
 バサッ。ラムセスが被いかぶっていたマントをとった。
 会場あぜん、ラムセスのこんがり焼けた小麦色の背中には、
遠山の金さん顔負けの桜吹雪・・・いや薔薇吹雪の刺青がしてあったのだった。
「どうだユーリ、ムルシリにはこんなのないだろう。これで夜も楽しくなるぜ!!!」
 静まり返る会場、リポーターリュイは、なんとかしてこの場をつなぎ合わせないといけない。
 がんばれリュイ!!!
「あ、あのラムセスさん、そのリュックを背負ったまま出場なさるつもりなんですか?」
「フッ、オレはエジプトの武豊と言われているんだ。このリュックにはユーリへの
贈り物がたんまりさ。オレは・・・」
「もういいですラムセスさん 時間がないので次行きます。えー次の5枠は
あら? 楔形文字じゃないわ。なんて読むのかしら? 5枠の方お名前と意気込みお願いします。」
「20世紀日本から来た氷室です。ユーリのファーストキスの相手はこの俺なんだ。
ユーリ、一緒に日本にかえろうぜ。俺から見れば1〜4枠の奴らなんて3000歳の爺さんだ。
負けてたまるものか!」
「ふぅ〜とにかくこちらの紹介終わりました。それではユーリ・イシュタル様の所にいる
シャラさん。お願いします。」

「はい、こちらシャラです。ユーリ様、いまの心境をお聞かせ下さい。」
「え〜私ってば もってもて。うふふ。」
(誰だこんな企画考えた奴・・・と内心おもうシャラであった。)
「では 放送席戻します。ハデイさん お願いします。」

「はい、放送席戻りました。そろそろレースが始まるようです。5頭の馬と5人の騎手が緊張した
面持ちでスタートを待っています。あっスタートしました。5頭とも綺麗なスタートです。
そこから少し先頭に出たのは カイル陛下、やはりイシュタルを思う心が一番強いのでしょうか
どんどん他の4頭を引き離していきます。おっとどうした カイル陛下 腰元から黒い小型の・・・
なにあれは?どうやら携帯電話をとりだしたようです。誰かと話しているようです」
 解説ハディの元に妨害電波が入った。
「ちょっといいですか放送席。こちらシャラです! ユーリ様に動きが見られました」
「もしもし カイル? あたしユーリよ。私はあなたのものだからがんばってね。」
(今 応援メッセージなんて送ってどうする! こんなんでタワナアンナが勤まるのか!
と思うシャラであった。)
 ・・・「以上放送席 再び戻します。」 


「おっと、カイル陛下電話に気をとられて転倒 落馬だ。他の4頭にどんどん抜かれていきます。
もう優勝は望めないでしょう。いま先頭にいるのはザナンザ殿下だ。いい調子です。
このまま行けば優勝です」
 そのときどこからか ピコポンピコポンという音が鳴り響いた。
「えっ何の音? あっザナンザ殿下の胸元のランプが赤く点滅しております。
どうやら冥界に帰る時間が来たようです。
ウルトラマン・ザナンザ、3分しかこの世界にはいられないようです。」
「ユーリ、無念だ。もう帰らなければ行けない、何処にいても愛している。
わ・・すれ・なぃ・・でくれ・・・」
「あっとザナンザ殿下の姿が消えた。私ハデイはザナンザ殿下のファンだったんでお名残惜しいです。
殿下・・・(T_T)」
 と、泣いているハデイ。
 泣いている間にラムセスと黒太子の間で先頭争いが起こっていた。
 両者とも1歩も譲らない。どちらに勝利の女神は輝くか? 戦いの女神イシュタルは
どちらのものになるか?ここからが見物であった。
 と、そのとき突然 突風。(都合が言いなんていわないでね。)
 黒太子の毎日トリートメントを欠かさない長い黒髪が手綱に絡まって、黒太子は止まってしまったのだ。
ここからは エジプトの武豊、ラムセスの独走である。ラムセスすごい汗だ。薔薇吹雪に汗が光って
薔薇が朝露を浴びているよう。やっぱりリュックが重いのだろうか?辛そうだラムセス。
ゴールまであと10メートル・・・、もう優勝はラムセスか?Vサインをしていますラムセス。
おっと投げキッスまで(いらん)調子に乗って、馬の上にまで立っています。
危ないぞラムセス。あっ 言わんこっちゃないラムセス落馬。
ゴールまであと3メートルだというのに・・・。
 んっ?一緒に落っこちたリュックが動いている。中から・・・アレキサンドラ王女が出てきた!
 そのままゴール!!!
 バンクス主催、タバルナ賞の勝者はアルザワ帝国第一王女 アレキサンドラ姫です。
 「おねーさまは私のものよ。他の男どもには渡さないわ!」

おしまい♪


*エピローグ*
シャラ「あれ?氷室君はどうしたの?」
リュイ「ああ 彼は20世紀の人間で馬なんて乗りなれてないから、スタートと同時にあさっての
    方向に行っちゃた。」
シャラ「なんだ 結局彼は忘れられちゃうのね。」

はっ!イル・バーニの発言がないわ・・・(ねね)