天河版「ナイルに死す」BYまゆねこ

                       (オリエント急行殺人事件?続編)

 やっとの思いで、エジプトに着いたカイル、ユーリをはじめとするヒッタイト一行は
ようやくナイル川からヒッタイトに向け出航することになった。

「やれやれ、やっとヒッタイトに帰れるのか!もうオリエント急行はじめ、旅行はこりごりだ」カイルが言うと、
「何だよ!まだエジプトに着いたばかりなのに、もう帰るのか?俺は接待係なんだから
もうちょっと見物していけばいいのに!ピラミッドなんかどうだ?ユーリ」
とラムセス。
「うるさい!全く早く帰りたいのは誰のせいだと思ってるんだ!しっしっ」
「でも、せっかく来たんだからピラミッドくらいは見たかったなあ」とユーリ。
 ちょっと名残惜しそうなユーリをせきたてカイルは船に乗り込んだ。
「これ以上エジプトにいるなんて言われたらかなわないからな、ラムセスめ!」

 やがて船は心地よい風を受けてナイル川を地中海へと下り始めた。
「アッ!ピラミッドだ!ねえカイル見てみて!」日本を出て以来久々の船旅にはしゃぐユーリであった。しかし・・

「ねえ、カイルひょっとして気分悪いんじゃない?どうしたの?」ユーリが気づくとカイルは
床にうずくまっていた。
「ユーリ!すっかり忘れていたんだが、実は私は船は初めてなんだ!気持ち悪い!
バケツか洗面器を用意してくれないか?」とカイル。
「そう言えば、戦争に行く時もずっと陸づたいだったもんね!ヒッタイト人は船苦手なのかな?ねえ、キックリ、バケツ用意してくれない?」
 ところが、キックリも船は初めてでバケツを持ちながらこっちに向かって来た。
「陛下!オエッ、陛下!どうしましたか?」
「キックリ、ちょうどいいところに!おい、そのバケツを私によこせ!」とカイル。
「い、いやです!いくら陛下の頼みとは言えこれだけは譲れません」バケツを死守しながらキックリが言った。
「この野郎!お前は私の長年の家来じゃないか!おとなしくバケツをよこせ!」
バケツをめぐってカイルとキックリの間にケンカが始まりそうなのでユーリは慌ててイル=
バーニとハディを呼んだ。

 ところが2人ともまたもや船酔いらしく手に洗面器を持っている。
「ユーリ様、申し訳ありません。私達も船は苦手なもので・・」
「陛下!大変です。このままでは私達ナイルに死すことになってしまいます。」
「どうでもいいから早く私にバケツをよこせえええ!」カイルは真っ青!

 その時、船の外から
「え〜、バケツに洗面器、バケツに洗面器はいかがすか〜?」と聞き慣れた声がした。
 ユーリが船の外を見るとそこには小舟に洗面器とバケツを積んだラムセスの姿が・・

「ちょっと!ラムセス!何て商売してんのよ!」とユーリ。
「オイ!そこのバケツ売り。どうでもいいから私にバケツをくれ〜!」とカイル。
「おれにも!」「私にも!」と船の上から次々に声がかかる。
「まいどあり〜」ラムセスは大儲けである。
「ラムセス!あんたねえ!ヒッタイト人が船に弱いの知っててあこぎな商売してるわね!」
「ユーリさすが、鋭いな!こんな金づる達を逃す手はないんでね」とラムセス。
「この!ラムセス!捕まえてやる〜」怒ったユーリであったが、
「ははは、やめとけ!やめとけ!この川は俺の庭と同じだから、いくらお前が水泳得意でも俺にはかなわないぜ!」余裕のよっちゃんラムセスであった。
「何であんたがそんなこと知ってんのよ?」
(実はねねパロで神殿のぞきをやって、鼻血出したの知ってますよね!?)

「いけね!逃げろ〜」相変わらず逃げ足だけは速いラムセスであった。

 その夜、地中海に出た船はますます、揺れが激しくなり、早めに床についたカイルは
またもや、おあずけじゃなかった!気分が悪くなり、ユーリの看病を受けていた。
「う〜ん、ユーリ私がこんなに船に弱いとは自分でも知らなかった!」とカイル。
「しかたないよ!船は初めてなんだもん。今夜はあたしの調合した薬でも飲んで早く寝てね。」とユーリは手作りの酔い止め薬を出した。
「ユーリ何だこれは!やけに臭いぞ!」
「良薬口に苦しって言うでしょ!文句言わないで飲んだ飲んだ!」
「ちぇっ!どっかのマンガでは船の中でラブラブなのにひどい船酔いでしかも苦い薬なんか飲まされてるのは私だけなんだろうなあ!」その通りであった。(^_^;)

 次の日、やっと船はウガリトの港に着き、カイル達ヒッタイトの一行はようやく船酔いから
解放されたのであった。
 その後大量のエジプト産のバケツや洗面器を土産に弟のマリ殿下のいるカルケミシュ
に立ち寄った。
「兄上、よくぞお立ち寄り下さいました。ところでこの大量のバケツと洗面器は?」
「気にするな!たんなるエジプト土産だ!」
「でも結構穴空いてますけど・・」
「うむ、やっぱりバケツと洗面器は鉄製に限る!」
と言ったかは定かではない。
(もちろん、ハレブの時以上に一週間ユーリと寝所にこもって弟に思いっきり嫌な顔をされたのだが・・・)


                             〜終わり〜