***ある日の皇帝執務室***

                                 BYまゆねこ

 とある日のヒッタイト王宮、いつものようにカイルは午前中の謁見を
済ませ鼻歌混じりに後宮へ向かった。最愛の側室ユーリと長いランチ
を楽しむためである。
 そこへイル・バーニがやって来た。
「陛下、昼食まで、まだ間があります。どうぞ執務室でたまった書簡にお目
を通して決裁をいただきたいのですが・・」
「何?午前中は謁見で予定が終わりではないのか?」カイルが言うと
「御言葉ですが、ハレブよりご帰還の後の戦後処理および兵士の残業手当
藩属国等へのご返事の書簡もあります。」
「陛下、ご一緒に元老院への印もお願いします。」その後ろでアイギル議長も
控えていた。

「く〜何で皇帝の私が執務室に缶詰にされなきゃいかんのだ!」
せっかくの昼の楽しみを邪魔されてカイルはふてくされていた。
その間にも粘土板の山とパピルスの束が次々と運ばれてきた。

 そこへ遅くなったカイルを捜してユーリがやってきた。
「カイル♪何してんの?早くお昼ごはん食べようよ。」これぞ天の助け!
「イル、もういいだろう?ユーリが待ってるんだ。私は行くぞ」
しかしイル・バーニは引き下がらない!
「甘いですな!陛下、ユーリ様とおこもりになった4日間どれほど仕事がたまったか!
ユーリ様も未来のタワナアンナならご一緒にお願いします。」
「あ、あのさイル・バーニ!そう言えばそのためのエジプト戦に備えてシムシェックの
鷹狩り訓練思い出したからさあ!」慌てるユーリ。
「仕方ないですな。じゃあ鷹狩りにお行きください。おっと陛下はだめですぞ。」
「じゃあカイル、また後でね」ユーリはそそくさと行ってしまった。

「くそ〜ユーリにまで裏切られるなんて!これじゃあ、どっかのへちゃむくれの
マ◯ネラ国王みたいじゃないか!」カイルはすっかりふてくされていた。
 おまけに廊下を通ったナキアまでが
「おや?ムルシリ2世陛下は有能ではなかったのかえ?それが仕事がたまって
缶詰とはのお、ホッホッホ、愉快愉快!」と高笑いをして通って行った。

 そこへキックリが焼いてない粘土板を持ってやって来た。
「陛下、タロス工房への鉄の支払いとエジプトへの書簡をお願いします。」
「キックリ、ちょうどよかった。私はこれから元老院へ用事があるから陛下を
見張っていてくれ!」
 イルが出ていくとカイルはこれで邪魔がいなくなったと思ったのか・・
「おい、キックリお前は私の第1の側近だよな?この場を見逃してくれ!」
「だめですよ!陛下と言えどもお仕事だけは・・」
 しかし、キックリはイル・バーニと比べるとどうもカイルに甘い。そして・・

 約1時間後、イル・バーニが執務室に戻ると子どもが丸めたような粘土の固まり
と椅子にしばられたキックリしか残っていなかった。


                                〜終わり〜