***ヒッタイト帝国美女コンテスト〜アマゾネス編〜***
                      BY金


【プロローグ】

 厳しい地の季節が終わり、水の季節がやってきた。
 「ねー、カイル。あたしお願いがあるの」
楽しい夕食を終えたころ、ユーリはささやいた。
 「なんだ、なにが欲しい? なんでもプレゼントするよ」
 「ちがうの、物ではないの。新年祭で、あたしやってみたい事があるの。
ヒッタイト幾千の神々にも、きっと喜んでもらえるよ」
<いったい、ユーリの願いとはなんでしょう?>
 「それはね、アマゾネス コンテスト。この国の女性で、だれが一番強いか競ってみたいの」
 「競ってって、ユーリ。おまえも出るつもりか?」
カイルの驚きに、側近たちもビックリ。
 「もちろんだよ。寒い地の季節で、運動不足だったんだもの。
 あのーカイル、いけない? あたし負けないつもりだよ」
自信満々なユーリに、カイルは渋々ながら応じました。
<さ〜、いかなる事にあいなりますか?>


   
1  アマゾネス コンテスト開会式

 新年祭の神事が終わり、神殿の広場ではコンテスト会場が設けられていた。
玉座にはカイルが、皇太后の席にはナキアがいた。
左右には、元老院議員と側近たち、神官たちも楽しげに見ている。
会場の後ろには、衛兵と民たちが控えていた。
 「ただいまから、アマゾネスコンテストを開会する。闘士たちよ、ひざまずき
 皇帝陛下のご好意に感謝せよ」
アイギル議長の声が、観衆たちのどよめきをとどめた。
闘士たちは、貴族、民の女性たちで50人いた。
娘も夫人もいるし、かっぷくのいい者もいる。
そしてそのなかには、ユーリと三姉妹の姿があった。
「おい、イシュタル様だ。イシュタル様が、きっと優勝だぜ。
 ダンナ、おれ賭けるぞ〜。今日のもうけ分が掛け金だ」
群衆の歓声のなかで、商人がベールを被った男にそう言った。
「いいだろう。私はこの髪を賭けよう。かつらにすれば、いい儲けになるだろう」
みごとな金髪に、商人はほくそ笑んだ。
<この男、お分かりですよね。ナキアの忠実なるしもべ、ウルヒです>
  
 一人の書記がルールを読み上げた
 「ひとつ、 武器は持たずに 素手で競うこと
  ひとつ、 噛みついたり ひっかいたりしないこと
  ひとつ、 髪をひっぱらないこと
  ひとつ、 ルール反則者は そく退場させる」
 会場は2カ所に分けられ、身分、年齢を問わずに取り組みが決められた。

 「陛下、セルト姫もおられますなー。アリンナの神官長のご推挙とか。
 なにか裏があるかもしれません。調べさせてはおりますが、どうぞご注意を!」
イル・バーニーのささやきに、カイルはうなずいた。
 「陛下、わたくしからも願いがある。聞いてもらえるか?」
ナキアの動きにルサファたちは、緊張した。
 「どう言うことですか、義母上」
いぶかしげに見るカイルに、ナキアは答えた。
 「わたくしも、あのコンテストに出場することにした。タワナアンナであるわたくしが
一番なのだと皆に証明するためにな」
 「・・・・・・・・・!」
カイルもイル・バーニーたちも、アイギル議長までもが呆然とした。
 「おい、女って怖いもんだな〜。陛下が気の毒になってきたぜ」<(T_T)m(_ _)m>
ミッタンナムアの声に、男たちは沈黙の同意を浮かべた。


    
2  実況中継

 ブヒヒ〜ン おれヒッタイト一番、美馬のアスランです。
このたび天候神テシュプの命により、コンテストを案内することになりました。
神様も天国でも、これ楽しみにしているようなんだ。
だけどユーリってば、おきゃんだね〜。人にしておくのもったいない。
あっ、ユーリと三姉妹が、変わった白い服で出てきた。
ハデイ特製のレオタードとかいう物だそうです。<ねねさんのパロ参照 m(_ _)m>
 
みんな程良いスマートなお姿で、ミニスカートだぞ〜。
あっ、カイル様が熱くユーリを見つめてる!

 「ちょっと、わたしにも話をさせろよ。えー、こちら会場のてっぺん、空の上です。
わたしはシムシェック。ユーリ様の忠実なる鷹です。アスランと組んで中継いたします。
空から見下ろせば、ハットウサも人も小さく見えます。
始まりました、コンテスト。ユーリ様のお相手は、たくましい農家のおかみさん。
おっ、大根足を足蹴にして、ユーリ様背負い投げで一本とりました。さすがイシュタル様だ!
ハデイも、貴族の夫人を羽交い締め。リュイもシャラも勝ちました」

 フフ〜ン、カイル様たちのお顔の色が、七色に変わっていってるぞ〜。
ユーリや三姉妹が強いから、複雑だろうな〜。またまた、アスランです。
これで、闘士たちは半分に減りました。
あれ? なんと刺激ある姿! ナキアが黒い網タイツに細いコルセットで出場してきたぞ〜。
衛兵も群衆も、妖艶な色気にタジタジ。ブヒヒ〜ン!!
 
 「アスラン、まじめにやれ! ナキアの奴、その色気と魔力で二人の女を打ち負かしました。
わ〜、ユーリ様が4回目の勝負に挑みます。リュイが相手です。キックリ、ひどく心配顔です。
カイル様も興奮顔。リュイ負けました。だけどリュイもキックリも、安心しきった顔になりました。
ん? ユーリ様の後ろで、見覚えのある黒い長い髪。セルト姫です。
お相手は、ギュゼル姫様。ユーリ様の次ぎに、わたし好きなんです。ああ〜、負けてしまいました!」


 
   
 3   アマゾネス結果

 おい、シムシエック! 私情を入れるなよ。こちらアスランです。
今度はシャラが、そのセルト姫と対決。平手でノックアウトされて、くやしがってる。
ハデイが、ウガリットで出会った娼婦さんを負かしたぞ〜。アリンナ一番の腕だものなー。 
これで、4人の強わ者が決まりました。
もちろんユーリ、ハデイにセルト。そしてナキアも残ってるぞ〜。反則してないだろうな?
組み合わせが、第一神殿で占われている模様。
あれ? この香り。薔薇の甘い香りだ! どこからなんだ?
 
 「アスラン、 薔薇の首輪をつけた犬から、香りがしているよ。気流で、こちらまで
香りが伝わってきた。おっ、犬がベールを被った男に近づいたよ。あいつだな!
アスラン、後はお願い」
 
 アスランです。その前に、組み合わせが決定しました。
ナキアとハデイ、セルトとユーリ。惜しいな〜、ユーリとナキア見たかったのに……。
そうだった! あのエジプトの薔薇男。群衆の中に入っていったぞ〜。
おれたちヒッタイトのライバルだけど、矢を抜いておれの傷を治してくれたんだものな〜。
ブヒ〜ン シムシエック、おれに免じて見逃してやってくれよ。
 
 「ちょっと、実況中継はどうなったのよ! アスラン、シムシエック。
あたしお姉さまの、ご活躍を楽しみにしてるのに〜。ちょっと、どいて!
えー、これからあたしアレキサンドラが、一頭と一羽の代わりにコンテストの解説をいたします。
な〜に! お姉さまがセルト姫に負けてる〜。あ〜ん、お姉さまが〜……」
<(-_-;)(T_T) アレキサンドラ姫が、泣きじゃくってマイクを壊したもようです
音信不通となって中継できなくなりました _(_^_)_m(_ _)m>

 落胆する群衆たちの前で、倒れたユーリはセルト姫に起こされて会場を去った。
ハデイも悪戦苦闘で、ナキアのキックでノックアウト。
 「これより、アマゾネスコンテストの決勝戦と敗者復活戦を行う。
 決勝戦は、ナキア皇太后様にセルト神官様。復活戦は、イシュタル様にハデイ。
 ただいまより始め! 」
アイギル議長の声に、沈みこんだ群衆たちに活気を与えた。
 だが結果は、ナキアが優勝。鼻高々にほほえみ、群衆を睨みまわしている
そんなナキアに、セルト神官は物静かに睨み返していた。
ユーリは、ハデイに力の差で負けてしまった。
<気の毒なユーリ、カイルにどう告げるつもりなの? >



    
 【エピローグ】

 王宮のなかでは、ナキアの機嫌のいい笑い声が響いていた。
 「陛下、これがわたくしタワナアンナの実力です。
 今後陛下でも、わたくしを粗末に扱うことがあれば許しませんわよ」
ルサファたちが、くやしそうに歯がみしている。
ナキアが去ったあと、イル・バーニーが玉座に近づいた。
 「陛下、残念ですが、皇太后の反則は認められませんでした。
 また、セルト姫も白です。しかし皇太后に、強い恨みを抱いているのは
 確認できました。今後もあの二人には、監視の目を光らせるつもりです」 
カイルは、黙ってワインを呑みこんだ。
 
 「あのー、陛下。あたし、ごめんなさい。こんな結果になってしまって。
 うぬぼれてしまって、4位にしかなれなかった」
 「いいえ、ユーリ様。悪いのはあたしです。あたしがナキアをやっつけてやれば、
 こんな事にはならなかったのです」
うなだれるユーリとハデイに、カイルは苦笑を浮かべた。
 「ユーリ、おいで。疲れただろう。ハデイたちもご苦労だった」
抱き上げられたユーリは、不安げにカイルを見つめた。
 「あのコンテストは、武力だけを競っただけなのさ。ユーリの本当の実力は、
 みんな良く知っている。それに、私はおまえが負けて、ホッとしているんだ」
 「えっ」
 「これ以上強くなったら、私はどうすればいいんだ? 夫婦げんかもできなくなる」
側近たちに明るい笑い声が流れた。
 「まったくだな。俺もムルシリ2世に同感だ。それ以上じゃじゃ馬になったら、俺も形なしだ」
 「ラムセス! なぜあんたが、ここにいるの?!」
だがラムセスもカイルも、キックリたちも驚きはしなかった。
 「ユーリ、ラムセスを呼んだのは私だ。エジプトの親善大使として来てもらったのだ」
 「カイル! 」
 「これから、ナキアを退治する。ネフェルテイテイも同意して、エジプトと和平を結んだんだ」
 「ナキアを退治……」
満月の明かりが、王宮内をほのかに照らしだした。
 「一緒に闘おう、ユーリ。魔女のアマゾネスは、もういらない」
ぶ然とするラムセスをあとに、ユーリとカイルは寝所へと去っていった。
 <ラムセス わたしでよければ、いつでもお相手いたしますわ ファンの一人より>

     お粗末でした!



  アマゾネス☆ギリシア神話に出てくる女だけの部族 
        弓を引くのに右乳房を切りとった恐ろしい女傑です 
        ホメロスの英雄叙情詩「トロイア」で女王が出てきました