赤髪の白雪姫二次小説
たなばた

舞台はリリアス。リリアスに夏があるかどうかはわからないけど、七夕ネタです(^O^)

 リリアスの初夏。
 冬の間に積もった雪もとけ、爽やかな風が吹く一年で一番過ごしやすい季節であった。
夜でも外套なしで過ごせる貴重な期間である。
 空気が澄み、ひんやりとした夜風が気持ちいいリリアスの空の下には、白雪とオビはいた。
「今夜はよく晴れて星が綺麗に見えますね、お嬢さん」
 空を見上げると、無数の星が輝いていた。まるで星が降ってくるような圧巻の夜空である。
「そうだね。特にあっちの空に輝く2つの星がきれい!」
 白雪は東の空に大きく輝く2つの星を指す。
「ああ、あの星は遠い東の国では『織姫と彦星』っていうらしいですよ」
「おりひめとひこぼし?」
 聞きなれない言葉に白雪は首をかしげる。
「東の国の昔話で『たなばた』という物語があるんです。織姫と彦星というカップルが
仲が良すぎて仕事をしなくなったため、織姫の父に離ればなれにされてしまうんです。
彦星に会えなくなった織姫は毎日泣いて悲しみ、あまりに可哀想になった織姫の父は
『たなばた』という、ちょうど今の時期の初夏の一日だけ彦星と会うことを許されるんです」
 白雪はオビの話を熱心に聞く。
「離ればなれになってしまう織姫と彦星。まるでお嬢さんと主みたいですね」
 オビは夜空に輝く2つの星を見つめて言う。
「そ、そうかな?」
「まあ、お嬢さんと主は仕事熱心だから、仲が良すぎて仕事をしなくなるっていう所は違いますけどね」
「う……ん」
 白雪は肯定とも否定ともとれない返事する。
「そうそう。『たなばた』にはお願い事もするそうですよ。なんでも、東の国の習慣では
細長い紙に願い事を書いて葉っぱに吊るすとか……」
「葉っぱ? それって薬草でもいいのかな?」
「さ、さあ? ……お嬢さんの願い事は『主に会えますように』ですかね!」
 薬草でいいかどうかはわからなかったので、願い事の方に話を持っていった。
「うん……そうだね。オビは? オビはどんな願い事するの?」
 まさか自分に願い事が降られるなんて予想外だった。咄嗟に願い事が思いつかずオビは少々沈黙する。
「うーん……。主とお嬢さんが幸せでありますように……ですかね!」
 白雪の顔をまっすぐに見つめる。
「そんなのダメだよオビ。願い事は自分のことでなくっちゃ!」
 白雪は声を出さずに笑う。

 ――いいえ、自分の願い事ですよ。

 オビは心の中で呟く。再び夜空に視線を移す。
 織姫と彦星の間には、無数の星が河のように流れていた。あの河のような星たちにも
名前があったような気がする。何という名前だったか……ずっと昔に聞いた話なので忘れてしまった。
 オビは軽く目を閉じる。瞼の裏には今まで見ていた星空がくっきりと浮かび上がっている。
 今日、お嬢さんと一緒に見たこの星空は、なかなか忘れられそうにないかもしれない。
 オビは白雪に気づかれないよう、ゆっくりと深呼吸をした。


♪おわり


七夕なので、短編ネタです。お読み頂きありがとうございます。






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