もしも赤髪の白雪姫が学園モノだったら?
クラリネス学園

7.箱根旅行(R18)

【前編】 【中編】 【後編1】 【後編2】


【前編】

「白雪、夏休みに入ったら旅行に行かないか?」
 そう言われたのは大学一年の夏休みに入る数週間前のことだった。
 高校を卒業してそのまま附属のクラリネス大学に進学したゼンと白雪。
木々、ミツヒデ、オビ達も一緒に進学していた。
「いいよ、みんなで旅行楽しそうだね」
 白雪はニッコリゼンに笑いかける。
「あ……いや、みんなでじゃなくて…二人で行きたいんだが……どうかな?」
「えっ……」
 白雪は一瞬固まる。いつも5人一緒だから、みんなで旅行かと思ったからだ。
「一泊で…近場でいいんだけど……」
 ゼンは顔を赤らめながら俯く。
「あ……」
 白雪も意味を理解して顔を赤らめる。しばらく、二人の間に沈黙が訪れる。
その沈黙を破ったのは白雪だった。
「いいよ」
「え?」
 ゼンが顔を上げ白雪を見つめる・
「いいよ、二人で行こう!」
「ほんとか? 白雪?」
「うん」
 白雪はにっこりと笑顔になる。
「じゃあ、どこへ行こうか。一泊だし近場でいうと……」
 ゼンが行き先を考えようとしたところに、白雪が勢いよく返事をする。
「箱根がいい!」
「箱根?」
「うん、箱根のえう”ぁ屋に行きたい!」
 白雪は目を見開き、真剣な表情であった。
「えう”ぁ屋?」
 聞いたことのない単語にゼンは首をかしげる。
「箱根にね、えう”ぁ屋っていうエヴァンゲリオンのグッズを売っているお店があるの。箱根はエヴァの舞台でもあって……」
 オタク白雪の細かい説明が始まった。
 オタクではないゼンにはこの先聞いていてもほとんど理解不明の単語が並んだ。とにかく白雪は箱根に行きたいということだけはよく伝わった。
「わかった。わかったぞ、白雪。箱根に行きたいのは、よぉ〜く伝わった」
 少々興奮気味に説明する白雪を落ち着かせる。
「それでね、できれば箱根に行く途中の高速道路のサービスエリアの足柄ってところにも寄りたいの!」
 白雪は真剣な表情でゼンに向かって訴える。
「足柄?」
「うん、今、足柄ってサービスエリアがエヴァンゲリオンとコラボしていて、
エヴァの初号機の立像とか、ロンギヌスの槍も展示してあるみたいなの!」
 また知らない単語が出てきたゼンであったが、足柄というサービスエリアに白雪が行きたいことは理解できた。
「わかった。白雪、少し落ち着け」
 ゼンは白雪の肩に手を置き、彼女の熱を冷まそうとする。
 オタクである白雪と付き合うのは全く構わないし、好きな気持ちも変わらない。むしろオタクな白雪はいつも楽しそうで、見ているこちらまで幸せな気分になる。
「あ、ごめんなさい、ゼン。私ってば興奮しちゃって……」
 白雪はわが身を振り返り反省する。
「でも、サービスエリアに寄るとなると、車が必要になるな」
 ゼンが考える。
「あ、そっか……」
「家にある車を借りていくかな……。白雪、ベンツとフェラーリとBMW、どの車がいい?」
 ゼンはさらりと言う。
「はああ?」
 白雪は声を裏返らせる。
 大学生の口から出るとは思えない高級車の名前に目を丸くした。
「あ、でも俺、まだ免許取り立てで、家の近所しか運転したことないんだよなぁ〜。箱根、初の遠出になるかな……」
 白雪は顔を青くする。大学生に似合わない高級車で迎えに来られても困るし、免許取り立てのゼンの運転もはっきり言って不安であった。
「ゼン、いいよ。今回、足柄のサービスエリアは諦める。電車で行こう!」
「え? でもせっかく車で出かけられるチャンスだぞ。どの車で行こうかな?BMWかベンツかな? フェラーリは兄上がいつも使ってるから貸してくれるかな?」
 ゼンはブツブツ一人で呟いている。このままでは高級車に乗せられてしまいそうだ。
 白雪は考える。
「私ね、新宿からロマンスカーで行きたいな。ゼンと一緒に電車の座席に横並びに座ってこうしたいな……」
 白雪はゼンの横にぴったり寄り添い、腕を絡ませる。ゼンの肩に頭を乗せて体を密着させる。
「そ、そうか。白雪が電車でいいっていうなら……。電車でもいいぞ」
 ゼンは白雪の手を握りニヤケ顔になる。
 なんとか高級車で箱根に行くことを阻止できて白雪は胸を撫で下ろした。

***

「白雪、お待たせ」
 白雪のマンションの前にBMWが迎えに来ていた。ゼンが助手席から顔を出す。
 旅行のことをミツヒデに話したら、ミツヒデと木々も便乗し、
同じ日に伊豆方面へ旅行に行くということになった。
途中の箱根でゼンと白雪は降ろしてもらうことになったのである。
 白雪は木々の待っている後部座席に座る。
「よろしくお願いします。ミツヒデさん」
 運転はミツヒデが担当することになった。
 ゼンよりもミツヒデの方が、運転技術に安心がある。車はゼンの家のBMWを借りることになった。大学生には高級車だが、ミツヒデの運転で、かつ4人ならまあいいかなという気になった。
「おはよう、白雪」
「おはよう、木々さん」
 木々も白雪を歓迎する。
「よし、足柄のサービスエリア目指すぞ!」
 ゼンが片手を上げ助手席で声を上げる。
「そ、そんなに大きな声で言わなくても……恥ずかしいよ……」
 4人を乗せたBMWは足柄に向けて出発した。

 足柄サービスエリアに着くと、そこはもうエヴァ一色であった。
「すごい……。想像以上だ……」
 BMWから降りた白雪は足柄サービスエリアを見渡して感動する。
 サービスエリアの建物に入るとエヴァ初号機が展示してあった。
その初号機をエヴァに出てくるキャラクター達が上から見下ろしているようにイラストが展示してあった。まるでNERV本部のような作りに白雪は感動した。
 外には綾波レイやロンギヌスの槍、エヴァカラーのプリウスも展示されており、白雪のオタク心を満たすものであった。
「白雪、写真撮ってあげるよ」
 木々が気を利かせて、白雪とエヴァキャラクターたちを一緒に撮影してくれた。
「あー! 俺も白雪と一緒に写真撮る!」
 そこへ嫉妬したゼンが入り込んできて、エヴァキャラクター達とゼンとの3ショットになった。
「白雪、楽しいか?」
 ゼンが笑顔で白雪に訊ねる。
「うん、すっごく」
 白雪は満面の笑顔で返す。
「白雪が楽しいならいい」
 白雪の楽しそうな笑顔を見てゼンは満足そうであった。
 足柄のサービスエリアで休憩もかねて滞在した4人は、再び車に乗り込んだ。
 ここに来るまでは、助手席にゼン、後部座席に女子二人の組み合わせで座っていたが、足柄からは、助手席に木々、後部座席にゼンと白雪が座った。
 ゼンが隣に座っている。
 白雪はこれからのことを思わず想像してしまい、少し緊張してしまった。
本当にゼンと旅行に来てしまったのだ。その実感が沸いてきたのだ。
 箱根湯本が近くなると、車が渋滞してきた。
 ゼンと白雪の宿泊する箱根湯本の旅館の前まで送迎する予定であったが、これでは相当な時間がかかってしまう。ミツヒデは、ゼン達を箱根手前で降ろして電車で行かせることにした。
「ミツヒデ、運転ご苦労」
「送っていただいてありがとうございます。ミツヒデさん」
 車から降りた二人はミツヒデに礼を言う。
「ゼン白雪楽しんで来いよ! 俺たちはこれから伊豆に向かうから……」
「二人とも楽しんできてね」
 木々が手を振る。
「運転気を付けて、ミツヒデさん、木々さん!」
 白雪とゼンは手を振ってBMWを見送った。

「荷物持つ?」
 ゼンが白雪の肩かけカバンを見つめる。
「ううん、大丈夫。一泊分だしそんなに重くないし」
 白雪は首を振った。
 突然二人きりになると更に緊張が増した。
 胸がドキドキしてゼンの顔をまっすぐに見れないような気がする。
 白雪は何気なく景色を見ている振りをすると、視界に飛び込んできたある看板があった。
「えう”ぁ屋だ!」
 白雪は大きな声で叫んでしまった。箱根湯本の駅の近くにあると地図には書いてあったがこんなに近くにあると思っていなかった。
「あ、本当だ。白雪の言っていた店だな……。行くか?」
「うん」
 白雪は真剣なまなざし大きく頷いた。
 えう”ぁ屋の入口には、まず浴衣姿の綾波レイの等身大の人形があった。
白雪はまず綾波をスマホで撮影し、続いてえう”ぁ屋の看板も撮った。
「綾波レイと一緒に写真撮ろうか?」
 ゼンに声を掛けられ、白雪は一瞬躊躇したがこんな機会は滅多にない。
お願いすることにした。白雪のおかげでエヴァの殆どのキャラクター名を覚えてしまっているゼンであった。
 綾波と一緒に写真を撮った後、店の中に入った。大きな店ではないが、
ここでしか売っていないエヴァグッズがたくさん並んでいた。白雪は一つ一つじっくりとグッズを見ていった。
「白雪、こっちにカヲル君があるぞ」
「えっ!」
 ゼンの方へ行くと、浴衣を着たカヲル君のクリアファイルがあった。背景は寄木細工柄の美しい模様が施されている。
 高校の時、自分がオタクだとばらしてからゼンの態度は全く変わらなかった。むしろ、白雪な好きなキャラクターを見つけると、今のように教えてくれたり、色々なイベントにも一緒に行ってくれたりして協力的であった。
本当にゼンは優しい。こんな優しい人と一緒にいられて本当に幸せだと思った。
「すごい! 浴衣姿のカヲル君! レアものだぁ〜!」
 白雪は迷わずクリアファイルを手に取る。
「飛鳥もかわいい! これも買っちゃおう! あとネルフマークも……」
 白雪は合計三枚のクリアファイルを手に取る。
「楽しそうだな、白雪。俺もこれなら使えるかな……」
 ゼンは寄木細工柄のネルフマークの入ったクリアファイルを手に取る。
「ゼンも買うの?」
「ああ、ここに白雪と一緒に来た記念にな」
「あ、じゃあ、私がプレゼントするよ。貸して」
 ゼンが手にしているクリアファイルを取る。
「いいのか?」
「うん。付き合ってくれたお礼に。それにゼンとお揃いになるのも嬉しいしね」
 白雪ニッコリと微笑みかける。
「わかった。ありがとう」
「あと、この湯呑もかわいいな。鹿月のお土産にしようかな……」
 白雪はネルフマークの湯呑を手に取る。
「鹿月もエヴァが好きなのか?」
「うん、オタクだからね。箱根のえう”ぁ屋に行くって言ったら羨ましがってた。そうそう、鹿月ね、彼女ができたらしいの!」
「あの美少年に彼女か。よかったな……」
 ゼンは心の奥底でホッとしていた。
「よし、ネルフマークと、ゆるしとのセットの湯呑を鹿月へのお土産にしよう!」
 白雪は湯呑も一緒に持ってレジへ向かった。

 えう”ぁ屋を出た後、駅周辺を散策してから旅館へ向かった。
 予約した旅館は、川のせせらぎが聞こえる庭園のある落ち着いた雰囲気の和風な旅館であった。
 二人はチェックインして部屋へ案内される。部屋の中ももちろん和室であり、二間あった。
 入ってすぐの部屋は、大きめのテーブルと壁に大型のプラズマテレビが設置されており、窓側に応接セットがあった。
 もう一部屋は寝室で、同じく和室であったが、ローベッド風のベッドの上に布団がひいてあった。
「お茶入れるね」
 白雪はテーブルの上にあったお茶セットに手をかける。
「あ、ありがと」
 ゼンは短く礼を言う。
 遠くで微かに川のせせらぎが聞こえるだけで部屋の中は静かだった。
 今日、二人でここで過ごすんだなと思うと、白雪はお茶を用意しながら緊張してきた。チラリとゼンを見る。こちらは向いていないで、窓の方を見ている。
 白雪は入れたてのお茶とテーブルに置いてあったお茶菓子をゼンの前へ出す。
「はい、どうぞ」
 緊張を和らげようと白雪は笑顔でゼンを見つめる。
「あ、ありがと」
 ゼンの顔が少し赤くなったのは気のせいと思うことにした。お茶を一口すすった後、ゼンが腕時計を見た。
「あと30分くらいで夕食だな」
「そうだね」
「そういえば腹減ったな〜、夕食はしゃぶしゃぶの食べ放題だよな。楽しみだな!」
 白雪の顔を見つめて嬉しそうに言う。
 夕食は和食としゃぶしゃぶの食べ放題の選べるタイプで、肉が食べたいゼンの希望で後者を選択してあった。
「私も、お腹ペコペコ。いっぱい食べなきゃね!」
「ああ!」
 ゼンは満足そうに頷いた。

 しゃぶしゃぶの食べ放題で食欲中枢を満たした後、二人は露天風呂に向かった。もちろん男女別々だが露天風呂の他に炭酸泉や檜風呂などいくつかのお風呂があった。
「ゼン、お待たせ」
 男湯と女湯の別れる出入口でゼンと待ち合わせの約束をしていた。
 白雪が風呂から上がると、ゼンがもう待っていた。
 ゼンがこちらを向く。一瞬何か言いたそうにしたが何も言わなかった。
「じゃあ、部屋に戻ろうか」
「うん」
 二人はお揃いの浴衣を着て部屋へ向かった。部屋に戻る途中、男湯と女湯は同じお風呂だったか、どのお風呂が一番気持ちよかったなどの話をした。
 部屋に一歩入ると、やはり静かだった。
 隣の和室のベッドが気になったが、白雪は見ないように心掛けた。
 ゼンも部屋に戻ってからは何も言わない。部屋の静けさに、どうしていいかわからず、白雪はテレビのリモコンを手にした。
「テレビでも見よっと」
 いくつかチャンネルボタンを押して番組を流す。お笑いの一番騒がしそうな番組にチャンネルを合わせた。
 特に好きなお笑い芸人というわけではなかったが、白雪はテレビに集中していた。もちろんゼンが気になったが、テーブル越しに一緒にテレビを見ているようだ。何も言わない。
 白雪は赤い髪に手をかける。スーッと髪を梳くとまだ半乾きで少し湿っていた。手持ちぶたさに、何気なくテレビを見ながら指で髪をクルクル巻いていると、背後から何か気配があったような気がした。
「白雪……」
 ゼンから名前を呼ばれたと思い、振り向こうとした次の瞬間、背後から抱きしめられていた。背中からしっかりと抱きしめられ、ゼンのぬくもりが感じられる。お風呂上りのせいか、すごく温かかった。
 ゼンは白雪の肩をしっかりと抱え、首筋に顔を埋める。
「ゼ、ゼン……」
 抱きしめられ白雪は硬直する。ゼンの息が首筋にかかり少しくすぐったい。胸がドキドキしてどうしたらいいか分からず、抱きしめられたままでいるとゼンが耳元で囁いた。
「少し早いけど、もう寝ようか……」
 白雪の体は一瞬ビクッとなる。うんと言いたかったのに緊張して声がなかなか出なかった。
「まだテレビ見る?」
 ゼンが背後から白雪の顔を覗き込む。白雪は勢いよく首を振る。
「もういい……」
「じゃあ、隣の部屋に行こうか」
 白雪は布団が引いてある部屋に視線を移す。そしてゆっくり頷いた。


【中編】

 ゼンに手を引かれて隣の部屋へ行く。
 布団の上へ座るとふわりという羽毛の感触が心地よかった。
 手をしっかり握られたまま、見つめあう。白雪は恥ずかしくて視線を逸らそうとすると、瞳を閉じたゼンの顔が近づいてきた。慌てて白雪も瞳を閉じる。柔らかな唇の感触が重なった。
 ゼンの右手が白雪の背中に回る。背中をゆっくりと撫でられたかと思うと、その手は、白雪の左脇をなぞり前に回った。浴衣の上からそっと左胸を触られた。
「白雪……ブラジャーしてる」
「ご、ごめん……こういう時は、ブラは外した方がよかったのかな?」
 お風呂上り、そのまま浴衣を着るのは少々ためらいがあった。
大浴場から部屋に戻るまでとはいえ、浴衣一枚で歩くのは恥ずかしいと思いブラを付けてしまった。それに……。
「ううん、どっちでもいい」
 ゼンは白雪の浴衣の帯に手をかける。リボンで結ばれた帯はシュルンと簡単にほどけた。
「あっ…」
 ゼンの目の前にブラジャーで包まれたふくよかな胸が現れる。
「かわいい…お揃いだ」
 ゼンは白雪の胸元とその下のショーツを見て嬉しそうに笑う。
パステルピンクに控えめなレースのついたブラとショーツのセット。
ブラの胸元とショーツの中央には赤いリボンがついている。髪の色に合わせたつもりであった。
「こ、この日のために買いました……」
 白雪は顔を真っ赤にして言う。
 浴衣の下にブラを付けたもう一つの理由。この日のために買ったブラとショーツのセットを
ゼンに見てもらいたいという気持ちもあった。
「そうなんだ。似合ってる……脱がせちゃうけど」
 背中に手がまわり、ブラのホックが外される。
真っ白なふくよかな胸とその中央の桜色の頂きがゼンの目の前に露わになる。白雪は両手で隠そうとしたが、ゼンの手がそれを阻む。 
 ゼンは白雪の桜色の頂きにそっと口づけた。
「んっ!」
 白雪の体はビクッ震える。両手をしっかりとゼンに抑えられ抵抗することはできなかった。
ゼンは白雪の胸に顔を埋めたまま、布団に押し倒した。
柔らかな布団の感触が白雪の体を包み、上からはゼンのぬくもりに包まれる。
 ゼンは胸に顔を埋め、桜色の乳首を舐めながら、もう片方の胸を揉みほぐす。
生暖かい舌の感触がくすぐったくて、白雪はギュッと目を閉じた。
胸を弄んでいたゼンの手はしだいに下方へ伸び、ウエストの部分へ降りる。お腹の部分から腰のあたりをじっくり撫でられた後、更に下方へ手が伸びた。白雪の大事な中心部に手がかかる。両脚をしっかり閉じている白雪の脚の間に無理やり手を割り込まるせる。先ほどのブラとお揃いのショーツの上から白雪の秘所に触れる。
「んんっ!」
 目を閉じたままの白雪は声を上げる。
 ゼンは少し態勢を変え、白雪の横から肩を抱く。
もう片方の手でショーツの上からゆっくりと大事な中心部を往復する。
 そこは徐々に湿り気が出てきた。
「白雪、ココ。だんだん濡れてきたよ……」
 白雪はギュッと目を閉じ、必死に声を我慢する。
「そこ……、なんかダメ。変な気持ちになっちゃう……」
 白雪の反応を見ながらゼンは指を動かす。白雪の体が時々ビクッと震える。
「ここか? ここが気持ちいいのかな?」
 ショーツの上から一番敏感な突起を探し当て、そこを中心にゼンは指を往復させる。
「あっ! ゼン、やめてっ! ああっ……」
 白雪は顔を歪ませゼンの手から逃れようとする。
 だが、しっかりと抱きかかえられ逃げることは不可能であった。ショーツがどんどん濡れてきて大事な中心部が潤ってきた。  
 ゼンはショーツの脇からそっと指を入れる。ヌルリとした生温かい粘液が指に絡みついた。白雪の秘所は充分に潤っており、敏感な突起を指で直接刺激した。
「ああっ!」
 白雪の体が大きく揺れる。敏感な突起を数往復した後、割れ目に沿って膣口に指を移動させる。
「あっ!」
 白雪が目を開ける。泣きそうな顔にも見えたが、そのまま中指の第一関節までそうっと進めてみた。
 白雪は再び目を閉じる。少々苦しそうな表情だった。何度か浅く指を往復させた後、中指を奥まで挿入させてみた。
「あああああっ!」
 白雪は顔を歪ます。
「ほら、白雪。奥まで入ったよ」
 白雪の中で中指を軽く動かす。愛液がどんどん溢れ出てきていた。
 ゼンは一度指を抜き、邪魔になったショーツを脱がせると、白雪は生まれたままの姿になった。
「ゼン、ずるい……。私だけ裸で……」
 白雪はうっすらと目を開け、息を切らせながら呟く。白雪が裸なのに対し、ゼンはまだ浴衣を着ていたのだ。
「わかった。じゃあ俺も脱ぐ」
 ゼンはニヤリと笑い、帯を緩め浴衣を脱ぐ。
 白雪と同じ姿になり、横から抱きかかえる。
 直接肌に触れるぬくもりが温かい。愛おしくなり、ギュッと白雪を抱きしめる。
「ココ、舐めてもいい?」
 ゼンは白雪の潤った部分に指をかける。
「えっ?」
 白雪は一瞬目を見開いたが、しばらくして無言で頷いた。
 白雪を仰向けにして両脚の間に入る。潤った中心部に口づけ、舌を這わせる。肥大した敏感な突起、クリトリスを舐めると、白雪は身体を震わせ逃げようとした。白雪の両手を押さえ刺激を続ける。愛液の溢れる膣口にも舌を這わせ、入口を刺激した。
「そろそろ限界になってきたな……。ちょっと待ってて」
 ゼンは一度白雪の体から離れ、布団の近くに置いてある自身の荷物に手をかける。カバンの中から小さな袋を取り出し、封を切る。ゼンはそそり立ったモノにゴムをゆっくりと装着し、白雪のほうへ戻る。
 白雪の上へ覆いかぶさり軽く抱きしめる。首元に顔を埋めて、軽くキスをする。
「挿れていい?」
 赤い髪のかかる耳元で囁いた。
「……うん」
 白雪は小さく頷いた。
 ゼンは白雪の両脚を抱えて、ヌルリとした中心部に先端を当てる。白雪は緊張でギュッと目を瞑る。
「うっ! 痛っ!」
 ゼンが先端を押し進めようとしたとき、白雪が苦しそうに声をもらした。
「ゼン、そこじゃない……。多分違う……」
「え?」
 ゼンは動きを止める。
「さっき……指入ってたところ……もう少し下……」
 白雪に言われてゼンはもう一度指を当てて位置を確認する。
「ごめん、痛かったか?」
「ううん、大丈夫……」
 白雪はふうっと大きく息を吐く。彼女もだいぶ緊張しているようだ。
 ゼンはもう一度、膣口の位置を確認して、限界まで達した先端を当てる。白雪の脚を抱え、愛液で充分に潤った密壺の中に一気に押し進めた。
「ああんっ!」
 白雪が大きく声を上げる。
「白雪、入ったよ!」
 ゼンは白雪の手を握り彼女の様子を見る。目を瞑り少々表情は苦しそうだった。
「このまま動いていい?」
 ゼンが尋ねると、「うん」というか細いが聞こえた。同時にゼンの手を強く握り返した。

 ゼンが入ってきた時、熱くて痛かった。
今まで感じたことのない圧迫感で、どうしたらいいかわからなかったが、ゼンと一つになっていることはわかった。
 そうだ、体の力を抜かなきゃ。目を瞑り軽く深呼吸すると、ゼンが動き始めた。ゼンが往復すると、しだいに胸に何かが突き上げてくるような感覚に襲われた。ゼンが自分では届かない最奥を突いてくる。その度に何とも言えない快感に襲われた。
「白雪、もうイク!」
 ゼンが一度大きく動く。
「ああああんっ!」
 白雪は気持ち良さに声を漏らすと、ゼンは白雪の中ですべてを放出した。
 繋がったままの状態でゼンは白雪に覆いかぶさる。
 白雪の肩を抱き、赤い髪に手を添える。
「大丈夫か?」
 耳元でゼンが囁く。
「うん、大丈夫」
 白雪は軽く息を吐きながら笑う。
「それならよかった」
 ゼンは白雪を強く抱きしめる。白雪もゼンの背中に手を回し答えてくれた。
 
***

 脱ぎ捨てた浴衣を着て、布団を整えていると、白雪が固まっていた。
「どうした? 白雪?」
 ゼンは固まっている白雪に問いかける。
「お布団が……すごい湿ってる……」
 白雪はこちらを向かずに、先ほど行為のあった場所を整えながら呟く。
「ああ、白雪のせいだな」
 ゼンはニヤニヤしながら言う。
「ええっ!」
 白雪は驚きこちらを振り返る。赤い髪と同じくらい真っ赤な顔であった。
「白雪が濡らしたんだろ?」
「そ、そうかもしれないけど……。でも……」
 ゼンは意地悪く質問すると、白雪は恥ずかしさに真っ赤な顔のまま俯いてしまった。
「白雪、こっちの布団で寝ればいいから大丈夫さ」
 ゼンは白雪の手を引き、もう一組の布団の方へ抱き寄せる。
「きゃっ!」
「こうやって一緒に寝れば関係ないだろ?」
 白雪を抱えて一つの布団に入る。腕枕をして赤い頭を抱え込む。
 白雪は最初、ゼンの顔を見つめて固まっていたが、しだいにゼンの胸に頭を預け寄り添った。
「うん、そうだね」
 白雪は長く息を吐き体の力を抜いた。
 すごく緊張して疲れたような気がする。このままゼンのぬくもりに包まれて眠ることは気持ちいいかもしれない……。
 そっと目を閉じると、強い眠気が襲ってきた。何も考えずにゼンに身を預けると頭をやさしく撫でられたような気がした。
 記憶はそこまでで、白雪は深い眠りに落ちていった。

【後編1】

 目が覚めると外は明るかった。
 部屋の時計を見ると5時を少し過ぎたところであった。起きるにはまだ早い。
 ゼンのぬくもりに包まれて一度も目を覚ますことなく朝になってしまった。
ものすごく深い眠りだったような気がする。横を向くとゼンの顔が目の前にあった。
仰向けに寝ている白雪は、ゼンに抱き枕のように抱えられており、
すぐ真横にゼンの顔が迫っている状態であった。
 ゼンの片方の手がちょうど胸の辺りに置かれていたが、偶然なのか故意なのか、眠っている彼に問うことはできない。
 自分の姿を改めてみると、浴衣がはだけて前が空いていた。
かろうじて帯がとまっている状態である。白雪は恥ずかしくなりゼンの手をそうっと外してゆっくりと起き上がった。
乱れた浴衣を直し、帯をしっかりとしめた。
「ん……白雪。もう朝か? 今何時だ?」
 ゼンが目を覚ましてしまった。隣でもそもそと動いている。
「あ、ゼンおはよう。まだ5時だよ」
「まだそんな時間か。もう少し寝ててもいいな……」
「あっ!」
 ゼンは白雪の腕を引っ張り布団に潜り込ませる。
白雪はしっかりと肩を抱かれ身動きができない状態になった。
ゼンは白雪の首筋に顔を埋めそのまま軽くキスする。
背中をさすられ腰まで伸びた手は、前の膨らみに辿り着く。
浴衣の上から二つの膨らみを何往復かした後、襟元から内部に侵入する。
「あっ、ちょっとゼンっ!」
 胸の膨らみをしっかりと捕まれた白雪は、彼の手から逃げようとする。
せっかく肌蹴た浴衣を直した矢先にもう乱されてしまった。
「んんっ!」
 白雪は目をギュッと閉じ声を上げる。胸の頂上を指で弄ばれ身体をビクつかせる。
「起きるまでまだ時間あるし……、もう一回しようか……」
「えっ?」
 驚きを表す白雪に、ゼンはやさしく笑いかける。
「決めた。もう一回する!」
 ゼンは白雪の浴衣の帯に手をかけ、あっという間に脱がせる。
明るい朝の光に照らされ白雪の裸体が露わになる。
「こ、こんなに明るい所で恥ずかしい……」
 白雪は顔を赤らめ両手で胸を隠す。
「よく見たいから隠さなくていい……」
 ゼンは白雪の両手を布団に押し付けて固定する。
白雪の体をじっくりと観察した後、桜色の乳首をペロリと舐める。
「んっ!」
 白雪は体を震わせる。
「こっちもしっかり観察しようかな……」
 ゼンはショーツに手をかけて脱がせる。
白雪は抵抗し両脚を必死に閉じようとしていたが、無理やり彼女の脚の間に入り込む。
「いや……恥ずかしいからそんなにじっくり見ないで……」
 脚を開かされ、明るい光の中、恥部がゼンの前に露わになる。
ゼンは身動きせず白雪の恥ずかしがる場所をじっと見つめている。
「いやっ!」
 白雪は逃げようとしたがゼンにしっかりと太腿を抱えられる。
 ゼンはそのまま秘所に吸い付く。白雪の敏感な部分に舌を這わせ彼女の中心を刺激する。
膣口を舐めると中からトロリとした透明な液体が漏れ始めていた。
「ああっ!」
 感じているのか、白雪は腰をくねらせ上へ逃げようとする。ゼンはしっかりと太腿を抱え逃がさない。
しばらく白雪の秘所を堪能し、ゼンは身体を起こし彼女を見つめる。
「どうしたの?」
 突然動きの止まった彼を不思議に思い、脚を広げさせられたまま白雪はうっすら目を開ける。
ゼンはじっと白雪を見つめている。
「あのさ、白雪……。うーん……やっぱりいいや」
 何か考えているようだ。一体何がいいのだろう?
「え? 何か私……変だった?」
 白雪はハッとして起き上がる。
明るい中で秘所を見られ、もしかしたら何か変な所があったのではないかと思い白雪は青くなる。
「いや、何も変じゃない。何て言うか、その……できれば白雪もオレのを……」
 ゼンは言いにくそうに視線を下に落とす。
「え? ゼンの何?」
 白雪は首をかしげる。
「俺のも……その触ってというか舐めてもらえたら嬉しいかな……なんて……」
 ゼンの声が小さくなる。
「えっ?」
 白雪は目を大きく開き驚いた表情をする。その表情を見たゼンは慌てて発言を撤回する。
「いや、ゴメン。やっぱり嫌だよな。いいよ、ゴメン」
「……」
 白雪は沈黙する。目線はゼンのモノに落ちている。
「ゼン……、いいよ」
「え?」
 ゼンは驚き顔を上げる。
「昨日からずっとゼンにしてもらってばかりだから、私も何かゼンにしたい……」
 白雪は顔を赤くし、言葉を絞り出す。
「いいのか?」
「うん」
 白雪は大きく頷く。
「あのっ……、でもどうしたらいいか分からないから、教えて欲しいの……」
 まっすぐに白雪に見つめられ、ゼンはドキッとする。
顔を赤らめながら教えを乞う白雪がなんとも言えぬ色っぽさがあった。
 今度は白雪が起き上がりゼンが仰向けに寝る。白雪はゼンの腰の辺りに座る。ゼンは、
まずは固くなっているモノを触るように指示する。
「すごい……こんなに固くて大きいものが入ってたんだ……」
 白雪はゼンの肉棒をゆっくりさする。ゼンに言われた通り先端のほうを中心に軽く撫でる。
「……」
 ゼンは無言であった。
「ゼン? どうしたの?」
 何も喋らない彼に白雪は問う。
「確かに、明るい中、見られるのって少し恥ずかしいな……」
 小さな声で呟いた。
「ほら、やっぱり恥ずかしいでしょ! 私の方がもっと恥ずかしいんだから」
 白雪は頬を膨らます。ゼンはむくれる彼女の赤い頭を軽く撫でて宥める。
「あとは……どのへんを舐めればいいの?」
 手にゼンのモノを持ちながら遠慮がちに問う。
本当にどうしたらいいのかわからない白雪に、亀頭のあたりを中心に好きなように舐めていいと指示する。
「わかった…」
 小さな声の後、唇の柔らかな感触が先端に当たる。
生温かい舌の感触が何とも言えない。亀頭を一周した後、上からくわえたり、
棒の部分を舐めてくれたりと一生懸命に尽くしてくれている。コツをつかんだのか、白雪は亀頭部分を舐めながら、
交互に指で刺激してきた。ゼンは自身のモノがどんどん固くなるのを感じた。
「白雪、もういい!」
 ゼンは起き上がり、白雪を後ろから抱きしめる。
「きゃっ!」
 突然起き上がったゼンに白雪は驚く。驚くのも束の間、背後から乱暴に胸を揉まれ、
もう片方の手は秘部を押さえる。割れ目をなぞり膣口に指が入れられる。
そこは愛液で充分に潤っており、いつでもゼンを歓迎できる準備ができていた。
「ああっ!」
 白雪は声を上げる。
 ゼンは後ろから膣口に肉棒をあてがう。
「待って、ゼン!」
 ゼンは白雪の声に動きを止める。
「あの……、ゴムを付けて欲しいの……」
 白雪は小さな声で言う。
「ああ、そうだな。ごめん。悪かった」
 ゼンは鞄の中からゴムを出し、装着する。
再び白雪を後ろから抱きしめ、膣口に当てる。
「いい?」
 赤い髪のかかる耳元で囁くと、白雪は何も言わずに頷いた。
 白雪の腰をしっかりと抱え、後ろからゆっくりと挿入を試みた。濡れた膣口にズブリと肉棒が入っていく。
「あああああ!」
 白雪は苦痛そうに声を漏らす。
「白雪、入ったよ。このまま動くよ」
 後ろから白雪を何度も突き上げる。前のめりになる白雪を抱えながら体を動かした。
「白雪、このまま膝をついて四つん這いになれる?」
 ゼンは白雪の赤い髪のかかる耳元で囁く。
動きを止めて繋がったまま、白雪に膝をつかせて、更に前方に両手をつかせて四つん這いにさせた。
「ああんっ!」
 後ろから激しく突かれた白雪は声を漏らす。
 昨日の夜とは全く違う挿入にどうしたらいいかわからない白雪であったが、
ゼンが自分を求めてくれているのはわかった。秘所がこすれ合って、グチュグチュという音が部屋に響き渡る。
自分の体もゼンに応える準備が充分にできていて、彼を求めているのだとわかった。
「白雪……、最後は前からしたい」
 ゼンは動きを一度止め、肉棒を白雪から抜く。四つん這いの彼女をひっくり返して仰向けにする。
両脚を広げ、よく潤った彼女の中心にスルリと肉棒を挿入する。
「ああっ……ゼン……」
 白雪は彼のほうに手を伸ばす。ゼンは伸ばされた手を掴み、ギュッと強く握った。
 そのまま白雪の中で欲望に身を任せ何度も往復する。ゼンのモノは固さを増し、彼女の中でも限界が近づいてきた。
「白雪、もうすぐイク……」
 ゼンは一度大きく白雪を突き上げる。彼女の最奥に向かって自身の分身を放出した。
「ああんっ!」
 最奥を突かれた白雪は声を漏らす。
 しばらくしてゼンは動きを止める。
「大丈夫だったか?」
「う……ん」
 白雪はゆっくり返事をする。白雪は肩で息をし、呆然と天井を見つめていた。
 仰向けに寝ている白雪の隣に布団をかぶって横になる。裸のまま、やさしく彼女を抱きしめる。
「強引にしてゴメン……」
「ちょっとビックリした……」
 白雪はゼンのほうへ向きを変え、胸に顔を埋める。
「もう少し眠ろうか……」
「うん」
 目を閉じると強烈な睡魔が襲ってきた。裸で抱き合ったまま白雪は深い眠りに落ちていった。


***

 白雪は再び目を覚ました。時計を見る。8時だった。これは起きなくてはならない。
宿の朝食の時間も終わってしまう。隣のゼンを見ると、仰向けで寝息を立てて気持ちよさそうに眠っている。
抱きつかれて拘束されているようなことはなかった。
 白雪はそっと布団を出る。布団を出た瞬間、自分が裸であることに気づき恥ずかしくなった。
白雪は部屋の隅にある鞄を引き寄せる。チャックをそうっと開けて着替えと化粧道具を出す。
ゼンを起こす前に着替えと身支度を終えてしまおうと思った。
布団の側に脱ぎ捨てられている浴衣はよけて、ブラとショーツを拾い、身に着ける。
キャミソールとブラウスを着終わったところで、ふと視線を感じた。
おかしいと思い振り向くと、ゼンが布団に横になったまま、じっとこちらを見ていたのである。
「おはよう、白雪」
 ゼンがニコリと笑う。
「お、起きてたの……? ゼン」
「うん」
「い、いつから?」
 ゼンはいつからこちらを見ていたのだろう? 今さっき目が覚めたのだろうか? 
「白雪が鞄を開けた音で目が覚めた」
「それなら、すぐに声かけてくれればいいのに……」
 何故黙ってこちらを見ていたのだろう。不思議に思った。
「白雪が着替えてるとこ見ていたかった」
 満面の笑みでゼンは答える。
「ええっ!」
 予想外の答えに白雪は驚く。
「どうぞ、そのまま続けて……」
 ゼンは笑顔でこちらを見ている。あとストッキングとスカートを履くだけだが、
続けてと言われてもこのまま着替えを続けられるわけがない。
「せ、洗面所で着替えてきます」
 白雪は着替えと化粧道具を持ってゼンの前から逃げた。

 白雪に逃げられたゼンは、起き上がる。8時を過ぎている。さすがにもう起きなくてはいけない。
ふと、布団の側に脱ぎ捨てられている浴衣が目に入った。
よく見ると、ほんの少しだが、うっすらと血がついていた。
 ――当人は気づいていないかもしれない。
 ゼンはニヤケ顔を押さえながら、そっと浴衣を裏返して血が見えないようにした。


***

 朝食を済ませた後、宿をチェックアウトして箱根湯本の駅に来た。
 この後、ゼンの希望で星の王子さまミュージアムに行くことになっていた。
同じ王子として共感できる部分があるのだろう。
足柄のサービスエリアやエヴァ屋にも付き合ってもらったので、ゼンの行きたい場所にも、もちろん一緒に行くつもりだ。
それに星の王子さまミュージアムは白雪にも興味がある場所だった。
箱根湯本の駅から出ているバスに乗って星の王子さまミュージアムへ向かった。
 星の王子さまミュージアムはフランスの街並みを再現したようなかわいらしい雰囲気で、
カフェやミュージアムショップの充実していた。
ゆっくり昼食とお茶をしたあと、二人は箱根湯本の駅へ戻った。
行きはミツヒデに車で送ってもらったが、帰りは新宿までロマンスカーで帰ることになっていた。
駅の構内でロマンスカーの切符を買い、列車が来るまでお土産を見て時間を潰した。
 ロマンスカーに乗る時刻になったので、二人はホームへ行く。
荷物を網棚に上げて席に座るとゼンのスマホが震えた。
「あ、ミツヒデからだ。向こうもそろそろ車で帰るらしい。ちょっと返信する…」
「うん」
 ゼンはミツヒデのLINEに返信する。白雪も隣でスマホをいじっていた。
しばらく二人はスマホの画面を操作する。
 ゼンはミツヒデに返信が終わったところで隣の白雪をチラリと見た。
まだ白雪はスマホの画面を見つめている。誰かにLINEしているのかな? 鹿月かな? 
白雪は少々俯き加減で、赤い髪に隠れて彼女の表情は確認できなかった。
そういえば、箱根まで車で行こうと行ったとき、白雪はロマンスカーで行きたいと言っていたっけ。
ロマンスカーの横並びの席に座って腕を組みたいって希望していたような……。
 ゼンはもう一度白雪を見る。まだスマホの画面を見つめていて、
腕を組んでくれそうな気配はまったくない。昨日はあれだけ濃厚に接したのだから、
今更ここで腕なんか組まなくてもいいかもしれないが、隣にいるとなると、どうしても彼女に触れたくなる。
こちらから触れてしまおうか……迷っていると、肩に重みを感じた。
白雪がゼンの方にぴったりとくっついてきたのだ。ドキリとしてゼンは白雪の顔を覗き込む。
 ゼンは軽く溜息をついた。
 白雪は眠っていた。スマホを片手に持ったまま、すやすやと寝息をたてて眠っていたのである。
 ゼンは今にも落としそうになっている白雪のスマホを前の座席のテーブルの上に置く。
白雪のスマホを持っていた手を取る。細い指を軽く撫でた後、起こさないよう軽く手を握る。
こちらにうな垂れかかっている赤い頭に自分の頭もそっと乗せてみた。
ふわりとシャンプーの匂いがした。そのままゆっくりとゼンも目を閉じる。
 電車のガタンゴトンという揺れと、隣の……白雪のあたたかなぬくもりがゼンを心地よい眠りに誘っていった。


♪おわり




後編の別バージョンがあります。大きな声では言えませんが、避妊していないバージョンです。
途中までは一緒ですが、ラストはまったく違いますのでご興味のある方はお読みください。



【後編2】

 目が覚めると外は明るかった。
部屋の時計を見ると5時を少し過ぎたところであった。起きるにはまだ早い。
 ゼンのぬくもりに包まれて一度も目を覚ますことなく朝になってしまった。
ものすごく深い眠りだったような気がする。横を向くとゼンの顔が目の前にあった。
仰向けに寝ている白雪は、ゼンに抱き枕のように抱えられており、すぐ真横にゼンの顔が迫っている状態であった。
ゼンの片方の手がちょうど胸の辺りに置かれていたが、偶然なのか故意なのか、眠っている彼に問うことはできない。
 自分の姿を改めてみると、浴衣がはだけて前が空いていた。
かろうじて帯がとまっている状態である。白雪は恥ずかしくなりゼンの手をそうっと外してゆっくりと起き上がった。
乱れた浴衣を直し、帯をしっかりとしめた。
「ん……白雪。もう朝か? 今何時だ?」
 ゼンが目を覚ましてしまった。隣でもそもそと動いている。
「あ、ゼンおはよう。まだ5時だよ」
「まだそんな時間か。もう少し寝ててもいいな……」
「あっ!」
 ゼンは白雪の腕を引っ張り布団に潜り込ませる。
白雪はしっかりと肩を抱かれ身動きができない状態になった。
ゼンは白雪の首筋に顔を埋める。そのまま軽くキスする。背中をさすられ腰まで伸びた手は、
前の膨らみに辿り着く。浴衣の上から二つの膨らみを何往復かした後、襟元から内部に侵入する。
「あっ、ちょっとゼンっ!」
 胸の膨らみをしっかりと捕まれた白雪は、彼の手から逃げようとする。
せっかく肌蹴た浴衣を直した矢先にもう乱されてしまった。
「んんっ!」
 白雪は目をギュッと閉じ声を上げる。胸の頂上を指で弄ばれ身体をビクつかせる。
「起きるまでまだ時間あるし……、もう一回しようか……」
「えっ?」
 驚きを表す白雪に、ゼンはやさしく笑いかける。
「決めた。もう一回する!」
 ゼンは白雪の浴衣の帯に手をかけ、あっという間に脱がせる。
明るい朝の光に照らされ白雪の裸体が露わになる。
「こ、こんなに明るい所で恥ずかしい……」
 白雪は顔を赤らめ両手で胸を隠す。
「よく見たいから隠さなくていい……」
 ゼンは白雪の両手を布団に押し付けて固定する。
白雪の体をじっくりと観察した後、桜色の乳首をペロリと舐める。
「んっ!」
 白雪は体を震わせる。
「こっちもしっかり観察しようかな……」
 ゼンはショーツに手をかけて脱がせる。
白雪は抵抗し両脚を必死に閉じようとしていたが、無理やり彼女の脚の間に入り込む。
「いや……恥ずかしいからそんなにじっくり見ないで……」
 脚を開かされ、明るい光の中、恥部がゼンの前に露わになる。
ゼンは身動きせず白雪の恥ずかしがる場所をじっと見つめている。
「いやっ!」
 白雪は逃げようとしたがゼンにしっかりと太腿を抱えられる。
ゼンはそのまま秘所に吸い付く。白雪の敏感な部分に舌を這わせ彼女の中心を刺激する。
膣口を舐めると中からトロリとした透明な液体が漏れ始めていた。
「ああっ!」
 感じているのか、白雪は腰をくねらせ上へ逃げようとする。
ゼンはしっかりと太腿を抱え逃がさない。しばらく白雪の秘所を堪能し、ゼンは身体を起こし彼女を見つめる。
「どうしたの?」
 突然動きの止まった彼を不思議に思い、脚を広げさせられたまま白雪はうっすら目を開ける。
ゼンはじっと白雪を見つめている。
「あのさ、白雪……。うーん……やっぱりいいや」
 何か考えているようだ。一体何がいいのだろう?
「え? 何か私……変だった?」
 白雪はハッとして起き上がる。明るい中で秘所を見られ、
もしかしたら何か変な所があったのではないかと思い白雪は青くなる。
「いや、何も変じゃない。何て言うか、その……できれば白雪もオレのを……」
 ゼンは言いにくそうに視線を下に落とす。
「え? ゼンの何?」
 白雪は首をかしげる。
「俺のも……その触ってというか舐めてもらえたら嬉しいかな……なんて……」
 ゼンの声が小さくなる。
「えっ?」
 白雪は目を大きく開き驚いた表情をする。その表情を見たゼンは慌てて発言を撤回する。
「いや、ゴメン。やっぱり嫌だよな。いいよ、ゴメン」
「……」
 白雪は沈黙する。目線はゼンのモノに落ちている。
「ゼン……、いいよ」
「え?」
 ゼンは驚き顔を上げる。
「昨日からずっとゼンにしてもらってばかりだから、私も何かゼンにしたい……」
 白雪は顔を赤くし、言葉を絞り出す。
「いいのか?」
「うん」
 白雪は大きく頷く。
「あのっ……、でもどうしたらいいか分からないから、教えて欲しいの……」
 まっすぐに白雪に見つめられ、ゼンはドキッとする。
顔を赤らめながら教えを乞う白雪がなんとも言えぬ色っぽさがあり胸が高鳴った。
 今度は白雪が起き上がりゼンが仰向けに寝る。
白雪はゼンの腰の辺りに座り、まずは固くなっているゼンのモノを触るように指示する。
「すごい……こんなに固くて大きいものが入ってたんだ……」
 白雪はゼンの肉棒をゆっくりさする。ゼンに言われた通り先端のほうを中心に軽く撫でる。
「……」
 ゼンは無言であった。
「ゼン? どうしたの?」
 何も喋らない彼に白雪は問う。
「確かに、明るい中、見られるのって少し恥ずかしいな……」
 小さな声で呟いた。
「ほら、やっぱり恥ずかしいでしょ! 私の方がもっと恥ずかしいんだから」
 白雪は頬を膨らます。ゼンはむくれる彼女の赤い頭を軽く撫でて宥める。
「あとは……どのへんを舐めればいいの?」
 手にゼンのモノを持ちながら遠慮がちに問う。本当にどうしたらいいのかわからない白雪に、
亀頭のあたりを中心に好きなように舐めていいと指示する。
「わかった…」
 小さな声の後、唇の柔らかな感触が先端に当たる。生温かい舌の感触が何とも言えない。
亀頭を一周した後、上からくわえたり、棒の部分を舐めてくれたりと一生懸命に尽くしてくれている。
コツをつかんだのか、白雪は亀頭部分を舐めながら、交互に指で刺激してきた。ゼンは自身のモノがどんどん固くなるのを感じた。
「白雪、もういい!」
 ゼンは起き上がり、白雪を後ろから抱きしめる。
「きゃっ!」
 突然起き上がったゼンに白雪は驚く。驚くのも束の間、背後から乱暴に胸を揉まれ、
もう片方の手は秘部を押さえる。割れ目をなぞり膣口に指が入れられる。
そこは愛液で充分に潤っており、いつでもゼンを歓迎できる準備ができていた。
「ああっ!」
 白雪は声を上げる。
 ゼンは膣口にモノをあてがう。我慢できず、そのまま自身の肉棒を後ろから白雪の中へ押し進めていった。
「あああああ!」
 白雪は苦痛そうに声を漏らす。
「ごめん、白雪。このまま動くよ」
 後ろから抱きかかえたまま白雪を突き上げる。前のめりになる白雪を抱えながら欲望に任せて体を動かした。
「白雪、このまま膝をついて四つん這いになれる?」
 ゼンは白雪の赤い髪のかかる耳元で囁く。動きを止めて繋がったまま、
白雪に膝をつかせて、更に前方に両手をつかせて四つん這いにさせた。
「ああんっ!」
 後ろから激しく突かれた白雪は声を漏らす。
昨日の夜とは全く違う挿入にどうしたらいいかわからない白雪であったが、
ゼンが自分を求めてくれているのはわかった。秘所がこすれ合って、グチュグチュという音が部屋に響き渡る。
自分の体もゼンに応える準備が充分にできていて、彼を求めているのだとわかった。
「白雪……、最後は前からしたい」
 ゼンは動きを一度止め、肉棒を白雪から抜く。四つん這いの彼女をひっくり返して仰向けにする。
両脚を広げ、よく潤った彼女の中心にスルリと肉棒を挿入する。
「ああっ……ゼン……」
 白雪は彼のほうに手を伸ばす。ゼンは伸ばされた手を掴み、ギュッと強く握った。
 そのまま白雪の中で欲望に身を任せ何度も往復する。ゼンのモノは固さを増し、彼女の中でも限界が近づいてきた。
「白雪、もうすぐイク……。ゴムつけてないから外に出すよ……」
「ああんっ!」
 ゼンは密壺から肉棒を抜き、白雪のお腹に置く。
そのまま、白濁した液体を彼女の体に数回に分けて発射する。
そのうち一回はお腹を越えて胸の辺りまで精液が飛んでしまった。
栗の花のような匂いが白雪の嗅覚をくすぐる。
「ごめん、今、身体拭くから動かないで……」
 ゼンはティッシュを探し、白雪のお腹の上の白い液体を拭く。
白雪は肩で息をし、呆然と天井を見つめていた。
「大丈夫だったか?」
「う……ん」
 白雪はゆっくり返事をする。
 仰向けに寝ている白雪の隣に布団をかぶって横になる。
裸のまま、やさしく彼女を抱きしめる。
「強引にしてゴメン……」
「ちょっとビックリした……」
 白雪はゼンのほうへ向きを変え、胸に顔を埋める。
「もう少し眠ろうか……」
「うん」
 目を閉じると強烈な睡魔が襲ってきた。
裸で抱き合ったまま白雪は深い眠りに落ちていった。


***

 白雪は再び目を覚ました。時計を見る。8時だった。これは起きなくてはならない。
宿の朝食の時間も終わってしまう。隣のゼンを見ると、仰向けで寝息を立てて気持ちよさそうに眠っている。
彼に抱きつかれて拘束されているようなことはなかった。
 白雪はそっと布団を出る。布団を出た瞬間、自分が裸であることに気づき少々恥ずかしくなった。
白雪は部屋の隅にある鞄を引き寄せる。チャックをそうっと開けて着替えと化粧道具を出す。
ゼンを起こす前に着替えと身支度を終えてしまおうと思った。
布団の側に脱ぎ捨てられている浴衣はよけて、ブラとショーツを拾い、身に着ける。
キャミソールとブラウスを着終わったところで、ふと視線を感じた。
おかしいと思い振り向くと、ゼンが布団に横になったまま、こちらをじっと見ていたのである。
「おはよう、白雪」
 ゼンがニコリと笑う。
「お、起きてたの……? ゼン」
「うん」
「い、いつから?」
 ゼンはいつからこちらを見ていたのだろう? 今さっき目が覚めたのだろうか? 
「白雪が鞄を開けた音で目が覚めた」
「それなら、すぐに声かけてくれればいいのに……」
 何故黙ってこちらを見ていたのだろう。不思議に思った。
「白雪が着替えてるとこ見ていたかった」
 満面の笑みでゼンは答える。
「ええっ!」
 予想外の答えに白雪は驚く。
「どうぞ、そのまま続けて……」
 ゼンは笑顔でこちらを見ている。あとストッキングとスカートを履くだけだが、
続けてと言われてもこのまま着替えを続けられるわけがない。
「せ、洗面所で着替えてきます」
 白雪は着替えと化粧道具を持ってゼンの前から逃げた。

  白雪に逃げられたゼンは、起き上がる。8時を過ぎている。さすがにもう起きなくてはいけない。
ふと、布団の側に脱ぎ捨てられている浴衣が目に入った。
よく見ると、ほんの少しだが、うっすらと血がついていた。
 ――当人は気づいていないかもしれない。
 ゼンはニヤケ顔を押さえながら、そっと浴衣を裏返して血が見えないようにした。

***

 朝食を済ませた後、宿をチェックアウトして箱根湯本の駅に来た。
 この後、ゼンの希望で星の王子さまミュージアムに行くことになっていた。
同じ王子として共感できる部分があるのだろう。
足柄のサービスエリアやエヴァ屋にも付き合ってもらったので、
ゼンの行きたい場所にも、もちろん一緒に行くつもりだ。
それに星の王子さまミュージアムは白雪にも興味がある場所だった。
箱根湯本の駅から出ているバスに乗って星の王子さまミュージアムへ向かった。
 星の王子さまミュージアムはフランスの街並みを再現したようなかわいらしい雰囲気で、
カフェやミュージアムショップの充実していた。
 ゆっくり昼食とお茶をしたあと、二人は箱根湯本の駅へ戻った。
行きはミツヒデに車で送ってもらったが、帰りは新宿までロマンスカーで帰ることになっていた。
駅の構内でロマンスカーの切符を買い、列車が来るまでお土産を見て時間を潰した。
 ロマンスカーに乗る時刻になったので、二人はホームへ行く。
荷物を網棚に上げて席に座るとゼンのスマホが震えた。
「あ、ミツヒデからだ。向こうもそろそろ車で帰るらしい。ちょっと返信する…」
「うん」
 ゼンはミツヒデのLINEに返信する。白雪も隣でスマホをいじっていた。
しばらく二人はスマホの画面を操作する。沈黙が流れる。
 ゼンはミツヒデに返信が終わったところで隣の白雪をチラリと見た。
まだ白雪はスマホの画面を見つめている。誰かにLINEしているのかな? 鹿月かな? 
白雪は少々俯き加減で、赤い髪に隠れて彼女の表情は確認できなかった。
そういえば、箱根まで車で行こうと行ったとき、白雪はロマンスカーで行きたいと言っていたっけ。
ロマンスカーの横並びの席に座って腕を組みたいって希望していたような……。
 ゼンはもう一度白雪を見る。まだスマホの画面を見つめていて、
腕を組んでくれそうな気配はまったくない。昨日はあれだけ濃厚に接したのだから、
今更ここで腕なんか組まなくてもいいかもしれないが、隣にいるとなると、どうしても彼女に触れたくなる。
こちらから触れてしまおうか……迷っていると、肩に重みを感じた。
白雪がゼンの方にぴったりとくっついてきたのだ。ドキリとしてゼンは白雪の顔を覗き込む。
 ゼンは軽く溜息をついた。
 白雪は眠っていた。スマホを片手に持ったまま、すやすやと寝息をたてて眠っていたのである。
 ゼンは今にも落としそうになっている白雪のスマホを前の座席のテーブルの上に置く。
白雪のスマホを持っていた手を取る。細い指を軽く撫でた後、起こさないよう軽く手を握る。
こちらにうな垂れかかっている赤い頭に自分の頭もそっと乗せてみた。
ふわりとシャンプーの匂いがした。そのままゆっくりとゼンも目を閉じる。
 電車のガタンゴトンという揺れと、隣の……白雪のあたたかなぬくもりがゼンを心地よい眠りに誘っていった。


***

 白雪は本屋のアルバイトを終えて、家に戻った。
 箱根旅行から帰ってきて2週間。
 学校が夏休みであった白雪は、アルバイトと同人イベントに明け暮れていた。
最初、アニメグッズの販売のアルバイトをしようと思ったが、
オタクな男子に囲まれる可能性があるとゼンに反対され、普通の本屋さんでアルバイトをしていた。
「あれ? おかしいな……」
 白雪は誰もいない部屋で呟く。
 そろそろ生理になってもおかしくない時期なのに、まだのようだ。
白雪はスマホのカレンダーを見る。先月から数えると、予定より2日遅れている。
今まで2、3日遅れることはよくあるから、きっと明日か明後日にはなるだろう。
念のため、ナプキンを余分にカバンに入れておこう。
特に気にせず白雪はテレビの前に座り、アニメの録画を見始めた。
 次の日、また次の日になっても生理は来なかった。白雪は少し緊張してきた。
以前1週間くらい遅れたこともあったような気がする。だけど最近はほぼ定期的にきていたはずだ。
箱根旅行のとき……朝、ゼンは避妊していなかった。外に出したけど可能性はゼロじゃない……。
 ――こんな漫画のような展開、夢なら覚めて欲しいと思った。
自分に……実際に起こるなんて今まで考えてもみなかった。
検査薬を使うにはまだ早いであろう。あともう一日待って来なかったら、
ゼンに相談した方がいいかもしれない。白雪はゴクリと唾を飲み込んだ。
やはり次の日も生理にはならなかった。
白雪はスマホを手に取る。
どうしよう、ゼンに相談するのはまだ早いかもしれない。
もう2、3日様子を見てもいいかもしれない。白雪はスマホを握りしめて迷う。
 ゼンじゃなくて木々さんに相談しようか……。
いや、やめよう。きっと心配してミツヒデさんに伝わってそれがゼンに伝わって……大事になりそうだ。
やっぱりゼンに相談しよう。
 白雪はスマホの通話ボタンを押した。

「どうした白雪? 突然会いたいなんて珍しいな」
 白雪はゼンの家の近くの公園まで出向いていた。
なるだけ人気のない二人きりになれる場所を選んで話をしようとしていた。
 何も知らないゼンは白雪に会えてニコニコ顔であった。
「あの、話があるの……」
 ゼンとは裏腹に笑えない白雪。真剣な表情であった。
「どうした? そんな真剣な顔して。なんだか高校の時、
屋上で白雪がオタクだってばらされた時みたいだな〜。わはは〜」
「……」
 白雪は無言であった。昔話を出されても、今は笑える時ではない。
「ちょっと待った、白雪! どうしたんだ? まさか……別れ話か?!」
 ゼンは全く笑わず、真剣な白雪の態度に青くなる。別れ話でもされるのかと思ったのだ。
「ううん、違うの……」
 白雪は首を振る。ゼンは少しほっとしたが白雪の真剣な表情は変わらない。
「あの……、生理が来ない……です」
 白雪は俯きながらゼンに告げる。
「えっ!」
 ゼンは言葉を詰まらす。白雪が真剣な顔をしていた意味がやっと分かった。
「生理が来る予定の日から5日遅れてて……、前に1週間くらい遅れたこともあったけど、
最近は順調だったから、あの……その……」
 白雪は俯いたまま胸の前で手を組む。まだ本当に分からないけど、まずはゼンに相談したかった。
 ゼンは一歩白雪に歩み寄る。胸の前で握っている手にそっと触れる。
「ごめん、白雪一人に心配させて……」
 俯く白雪は顔を上げる。目の前にいるゼンの顔を見つめる。
「ゼン……」
「わかった、白雪。何かあったらすぐに連絡してくれ。夜中でもいつでもいいから、一人で悩むなよ」
 ゼンはまっすぐに白雪を見つめ、手をギュッと握る。
白雪はそんなゼンの優しさに思わず涙がこぼれそうになる。唾を飲み込んでぐっと我慢した。
「うん、ありがとう」
「うちに寄ってく?」
 ゼンは公園からすぐ近くの豪邸を指さす。
「ううん、いい。もう帰る」
 白雪は首を振る。
「じゃあ、駅まで送るよ」
「うん、ありがとう」
 最寄りの駅までゼンは見送ってくれた。
 改札に入って電車がくるまで、ずっと彼はこちらを見つめている。
 電車がホームに入ってきた。ゼンの姿が電車に消される。
 白雪は電車に乗り込み、まっすぐゼンのいる改札側の扉の前に行く。窓越しにすぐにゼンと目が合った。
 ゼンがこちらに向かってやさしい笑顔で手を振っている。
 発車の音楽の後に、電車が動き出した。白雪もゼンに向かって必死に手を振り返して、彼に応えた。


***

 ゼンはベッドで何度も寝返りを打ち眠れない夜を過ごした。
 窓の外はもう明るい。時計を見ると、あと10分ほどで6時だ。
夏休みでかつ今日は何も予定はないが、もう眠る気にはなれない。
起きようかと天井を見つめてぼうっとしていた。
 昨日、白雪から話を聞かされたとき、色々な意味でショックだった。一番は自分に対する浅はかさのショックだ。
 箱根の……特に朝の行為の時、避妊しなかった。
外に出したといっても可能性は充分にあるだろう。例え避妊をしていても0%ではないのだから……。
自分の考えなしの行動で白雪を身も心も傷つけてしまうかもしれないのだ。自分の愚かさと浅はかさに本当に情けない思いだった。
 ゼンがぼうっと天井を見つめていると、ベッドのコンセントで充電してあるスマホが震えた。
着信のようだ。画面を見ると白雪の名前が表示されていた。ゼンは慌ててスマホを手に取る。
「ゼン? 朝早くごめん」
「白雪! どうした?」
 ゼンは早口になる。
「生理がきたの……。朝起きたら生理になってて……」
「え?」
 ゼンはスマホを持って固まる。
「ごめんね、ゼン。あと1日私が待っていればよかったのに……。ゼンに変な心配させて本当にごめんね」
 電話越しに本気で謝っている白雪。声が泣きそうであった。
「いや、白雪。謝らないでくれ。謝るのは俺の方だ……。そうだ、白雪。今日、これから会えないか? 話がしたい」
「今日は夕方まで本屋さんでバイトだから、それが終わってからなら大丈夫だけど……」
「じゃあバイトが終わる頃、そっちに行くよ。いい?」
「うん、大丈夫」
 ゼンは白雪の本屋のアルバイトが終わってから会う約束をして電話を切った。


***

 夕方。
 本屋でのアルバイトを終え、白雪はゼンと約束した待ち合わせ場所に急いだ。
「お待たせ、ゼン」
 白雪は少々息を切らす。
「いや、大丈夫だ。どこか静かに話せる場所はないかな? この辺りの店だと騒がしそうだしな……」
 ゼンは周囲を見回す。駅から近い場所のため、辺りは騒がしい。
人も多く、この分だと、どこの店に行っても静かにゆっくり話せそうにない。
「あ、それなら、ここから5分くらい歩いたところに神社があるの。
そこならあまり人もいないし緑もいっぱいだし静かに話せそうだよ」
「じゃあ、その神社に行こう」
 ゼンは白雪の提案を受け入れる。二人は神社に向かって歩き出した。

「夜になると暗くなって物騒だから、この道は通らないけど、今日はまだ明るいしゼンがいるから大丈夫だね」
 ゼンと白雪は手を繋いで神社に向かっていた。
白雪言う通り、神社へ続く道は静かで人気がなかった。
並木道になっていて緑が豊富で明るい時間は気持ちよさそうだが、夜になると確かに暗がりになってしまうであろう。
「ああ、一人でこの道通るなよ。危ないからな」
「うん」
 白雪はゼンを見つめて強く頷く。
 遠くに太陽は沈みかかっていたが、初夏のこの時間はまだまだ明るい。
日中の暑さも和らぎ緑が豊富なこの神社へ続く道は、特に涼しい。
 すると二人の耳に「キキキキキキ、カナカナカナ」という虫の声が耳に入った。
「わあ、ひぐらしが鳴いてる……」
 白雪とゼンは見つめあう。視線を合わせながらお互い同時に言う。
『切ない声で鳴くんだなぁ』
 DSのとびだせどうぶつの森でひぐらしを採った時に出てくる台詞である。
 神社まで来ると、数人の参拝客の他は殆ど人がいなかった。あとは境内に鳩が数羽歩いているだけである。
 神社の隅に石造りの椅子があったので、二人は横並びに腰かける。
「あの……、本当にごめんなさい。私があと一日ゼンに話すのを待っていれば、変な心配させなくて済んだのに……」
 白雪はゼンに向かって軽く頭を下げる。
「いいや、謝るのは俺の方だ。その……箱根での朝、避妊しなかったのは俺だし。本当にすまないと思ってる」
 ゼンも頭を下げる。
「ううん、私も何も言わなかったのがいけないんだし、ゼンのせいじゃないよ……」
 白雪は首を横に振る。しばらく二人の間に沈黙が訪れる。神社の境内は静かだった。
遠くの方でひぐらしの鳴く声が微かに聞こえた。
「やっぱりさ……」
 沈黙を破ったのはゼンであった。白雪は顔を上げる。
「やっぱり、そういうことは結婚してからするべきものなんだよな」
「け、結婚!」
 思いもかけない熟語がゼンの口から出てきて白雪は驚く。ゼンも顔を赤くする。
「いや、まだ学生だし未成年だから結婚なんてできるわけないけど……」
 ゼンが黙ってしまう。何か言いたそうにしているが、
なかなかその先の言葉を発しようとしない。白雪は黙って彼の様子を伺う。
「今は無理だけど、もし……もしもこの先結婚するなら……白雪以外は考えられないと思ってる」
 ゼンは顔を真っ赤にしながらこちらを見つめる。
 ――白雪以外考えられない
 その言葉が鼓膜に入ってきた白雪は嬉しさと驚きで頭が真っ白になった。
何か言葉を返そうと思ったが、出てこなかった。
 すると、数メートル離れたところで境内にいた鳩が飛び立った。
その羽音で白雪ははっと我に返る。
「わ、私も……、もしこの先結婚するならゼン以外考えられない……ゼンがいい……」
 ゼンの顔をまっすぐに見つめて言ったが、恥ずかしくなって最後は俯いてしまった。
ゼンは真っ赤になった白雪の頬に手をかける。
「じゃあ、暗くなる前に帰ろうか……」
 顔を上げると、ゼンの顔も赤かった。
「うん」
 太陽はほぼ沈み、オレンジ色の光だけが神社の木々を色づけていた。
夕日に照らされる並木道を二人は手を繋いで歩いて行った。

***
 白雪はマンションに帰り、ベッドに倒れ込む。
「痛っ!」
 ベッドに無造作に置いてあった、夏コミのカタログに頭をぶつける。
 ああ、そういえばもうすぐ夏コミだ。カタログ買っておいたんだっけ……。
 白雪は仰向けになり、分厚い電話帳のようなカタログを抱きしめて天井を見つめる。
 今日はゼンから思いもかけないことを言われてしまった。あれはプロポーズという奴ではないのだろうか? 
もちろん今すぐというわけではないが、はっきりと白雪がいいと言われた。驚きと嬉しさで胸がいっぱいだった。
 白雪は分厚い夏コミカタログをギュッと抱きしめる。なんだかこのカタログの重みがゼンの重みにも似てるかも……。
 色々思い出してしまって白雪はカタログに顔を埋める。
「夢じゃないよね……」
 白雪は思わず呟く。
 こんな腐女子、オタク女にもリアルな喜び、幸せはあるのか。
夏コミカタログの中で白雪は顔がにやけるのを止められずにいた。



♪終わり


後編を2パターン書いてしまいました。アンケートにご協力くださった方、ありがとうございます。
pixivにどっちを更新しようか迷ってたのですが、後編2のほうが評判がよかったので、
避妊してないバージョンを更新してしまいました(汗)。


箱根旅行で出てきた場所についてのリンクです。
えう”ぁ屋 
足柄サービスエリア 
星の王子さまミュージアム 

えう”ぁ屋には行ったことあります。ネルフマークとカヲル君と飛鳥のクリアファイル買いました。
足柄サービスエリアと星の王子さまミュージアムには行ったことありません。
星の王子さまミュージアムに行ってみたいかな? 建物かわいらしいし、何かHPの素材にできそう(笑)。
東京のそれも都会っぽいところに、ひぐらしがいるのか突っ込まれそうですが、
箱根の強羅公園にはひぐらし鳴いてました。DSのどうぶつの森やっている友達に
「ひぐらしが鳴いてるよ〜」ってメールしたら、「旅行に行ってまでDSやるってどうよ?」って
返信が帰ってきて、「違うよ、リアルで鳴いてるんだってば!」と説明したことを覚えています。
「切ない声で鳴くんだなぁ〜」こんな声です(You Tubeの動画に飛びます)。
しかし、ミツヒデと木々は熱海方面へ旅行へいってどうなったのだろう?
自分で設定して書いておいてなんですが、ちょっと気になる?(笑)
それでは、ここまでお読み頂き本当にありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願い致します。







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