もしも赤髪の白雪姫が学園モノだったら?
クラリネス学園
by nene's world

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注意;各キャラクターの呼び名は本編のままでいきます!

1.赤髪の転校生

「今日からみんなの仲間になる白雪君よ。みんな、仲良くするように」
 クラリネス学園の生物教師ガラクが白雪を紹介した。
 珍しい赤い髪を持つ白雪に、皆、興味の視線を向ける。
「タンバルン学園から来ました白雪です。どうぞよろしくお願いします」
 ブレザーにネクタイの制服に身を包んだ白雪は丁寧に頭を下げる。
「じゃあ、席は……ゼン殿下の隣ね」
 ガラクが窓側にいるゼンの席に視線を向ける。
 ゼンはこっちこっちと白雪に向けて手を振っていた。
「俺はゼン、よろしくな。ゼンって呼んでいいぞ。それにしても珍しい髪色だな……」
 白雪の髪をまじまじ見つめる。
「よく言われます。よろしくお願いします、ゼン。私のことも白雪って呼んで下さい」
 白雪は笑顔で会釈する。
「俺の仲間も紹介する。ミツヒデと木々だ」
 ゼンの前の席にいる男女が振り返り、白雪に向かって笑顔を向ける。
「よろしく、白雪」
「よろしくね、白雪」
 二人とも美男美女だ。特に木々の方は同級生なのにうっとりするような色気があり美しい。
「木々の成績は学年一位なんだ。勉強について聞くんだったら、ミツヒデよりも木々に聞くといい」
 ゼンが誇らしげに言う。木々は「そんなにすごいことじゃないよ」と小さな声で謙遜する。
「あとオビは……」
 ゼンは後方の空席の机を見つめる。
「また寝坊して遅刻じゃない?」
 木々が呆れたように言う。
「午後から部活にだけ顔出すかもな…」
 ミツヒデもいつものことだ呟きながら溜息をつく。
「ところで白雪、放課後は暇か?」
 ゼンが白雪を見つめ尋ねる。
「うん」
「じゃあ、校内の案内する! な、木々、ミツヒデ!」
 木々とミツヒデはゼンの言葉に頷き、ニッコリと白雪に笑顔を向けた。


 ――放課後。
 白雪、ゼン、ミツヒデ、木々の4人はクラリネス学園の廊下をゆっくり歩いていた。
「ここはゼンのお母さん、ハルト様が作った学園で、第一王子のイザナ様が生徒会長をやっていて、
校長のハルカ公爵も生徒会長に逆らえないくらいの権力を持っている。
ちょっと変な学園だな。それで、第二王子がここにいるゼン」
 ミツヒデは白雪に丁寧に説明する。
「へー、ゼンって王子だったんだ」
 白雪は感心したようにゼンを見つめる。
「そんなことも知らないでこの学園に入ったの?」
 不思議そうに尋ねるのは木々であった。
「ええ、ちょっと事情がありまして……」
 白雪は苦笑いしながら場が悪そうにする。
「どんな事情なんだ?」
「あはは……」
 ゼンに苦笑いを向ける白雪。
「どんな事情だ?」
「どんな事情なの? 白雪?」
 ミツヒデと木々も白雪が転校した事情に興味を持ってしまった。
「ええっと……、あまり他の人には言わないでね……」
「うん」
 3人は同時に応える。
「実はタンバルン学園のラジ生徒会長から、この赤髪を珍しがって
『俺の女になれ』って言われて……断ったら学園にいられなくなってしまって……」
 白雪は俯き、気まずそうに答える。
「タンバルン学園のラジって、あのバカラジとかいう生徒会長か!」
 ゼンがポンと手を叩く。
「あのラジか!」
「あのラジね!」
 3人は驚き、納得したように答える。
「さすが! 他校にも届くおバカな噂!」
 白雪は、3人がラジを知っていたことに驚く。
「そうか……大変だったね。白雪」
 木々が白雪の背中にやさしく手を置く。
「この学園は大丈夫だ。イザナ生徒会長はそんなことしない!」
「ああ、兄上は絶対にそんなことしない。皆の尊敬する生徒会長だからな」
 ゼンも白雪を安心させるように笑いかける。
「そうなんだ、よかった…」
 ホッと胸を撫で下ろす白雪。
「あ、あれオビじゃない?」
 木々の声に、みんなが校庭の方へ視線を移す。
「本当だ。オビだ。あいつやっぱり部活だけに来たんだな……」
 ミツヒデがあきれたように言う。
「じゃあ、ちょっと校庭のほうへ出よう」
 ゼンのあとに白雪はついていった。

「トラックを全速力でかけているのが、俺たちのもう一人の仲間のオビだ」
 ゼンは猛スピードで走っている黒髪の男を指す。
「すごい! 早いね!」
 白雪はオビの足の速さに感動する。
「そうだ、白雪! 部活は何に入るんだ? 木々とミツヒデ、
俺たち3人は馬術部なんだ。もしよかったら白雪も一緒に……」
 ゼンは白雪を見つめ、目を輝かす。
「私はガラク先生から薬草園芸部に誘われているから、そっちに入るつもりなの」
「そうなのか……もう決まっているのか……」
 ゼンは残念そうにする。
「うん。でも馬術部ってすごいね。乗馬ってこと?」
「そう、乗馬だ。ここから少し行ったところに乗馬ができる練習場があるんだ」
「ふーん、すごい! さすがクラリネス学園だ!」
「もしよかったら、今度見学に来てくれ。馬に乗せてやるぞ」
「うん、面白そうだね」
 白雪はゼンににっこり笑いかけた。
「じゃあ、引き続き校庭を案内しよう。あ、キハル殿がいる。キハルー!」
 ゼンは校庭の隅にある小屋に向かって手を振った。
「鳥の世話が得意なキハルだ。飼育委員をやっているんだ」
 ゼンが紹介した黒髪の少女は、腕に青い鳥を乗せて白雪のほうを見て微笑む。
「すごい! 青い羽根の鳥なんて初めて見た!」
 キハルが腕に載せている鳥を見て白雪が驚く。
「私はキハル。こっちの鳥はポポっていうの。よろしくね、白雪」
「はい! よろしくお願いします」
 白雪は元気よく赤い頭を下げる。
「じゃあ、次は体育館に行こうか」
 体育館に向かって白雪はゼンのあとをついていった。

 体育館では、主に球技の部活をやっていた。バレーにバスケ、バトミントン。
それぞれの部が練習をしていた。
「あれ、あのバスケやってる人って……」
 白雪は練習中のバスケ部でちょうどボールが渡った黒髪の男を指す。
「ああ、あれはオビだな」 
 ゼンはさらりと言う。
「さっき、陸上のトラック走ってた人だよね。何でバスケに……?」
「オビは運動神経抜群だから、陸上部とバスケ部を掛け持ちしてるんだ」
「あっ、オビのシュートが決まったぞ!」
 ミツヒデが興奮して言う。
「さすがオビだね」
 木々も軽く拍手する。白雪もつられて拍手した。
「すごい……オビさんは本当に運動神経抜群なんだね」
「白雪、オビに『さん』なんてつける必要ない。オビでいいぞ」
「え、でもまだ話したこともないのに……」
「そうだ、大丈夫だ。オビでいい」
 ミツヒデ同意する。木々も頷いていた。
「はぁ……」
 白雪は生返事をする。

 体育館の見学を終え、ゼンを先頭に4人は廊下へ出た。
 廊下へ出てすぐのところでゼンが急に立ち止まった。
 ゼンの正面には、ただならぬオーラを放つ美青年が立っていた。
「やあ、ゼンじゃないか。今日もミツヒデと木々が一緒か……
ん? なんだ? 見慣れない娘がいるな? その赤髪の娘は誰だ?」
「兄上、転校生ですよ。校内を案内しているんだ」
「ふうん……ゼンが直々に案内とは……随分お気に入りの娘のようだな…」
 イザナは白雪を上から下まで見定めるように見た。
「そんなんじゃない。友達だよ」
 ゼンは白雪をかばう様にして前に立つ。白雪は呆然とする。
「生徒会長のイザナ様。ゼンのお兄さんだよ」
 木々が白雪の耳元で囁く。
「まあ、いいけどな。じゃあな……」
 イザナは軽く手を振って去っていった。
「大丈夫か? 白雪。兄上はちょっと近寄りがたいところがあるけど、
決して悪い人ではないんだ。皆のために色々なことを考えている。尊敬する生徒会長だ」
 呆然と立ち尽くす白雪にゼンは諭すように言う。
「カヲルくん……」
 呆然と立ち尽くす白雪がポソリと呟く。
「は? 兄上はそのような名前ではないぞ」
 白雪の言葉をゼンは聞き返す。
「エヴァ……、カヲルくん……なんで? 同じ声……」
「どうしたの? 白雪?」
 木々が白雪の顔を覗き込む。
「な、なんでもないです。すみません。ちょっとぼうっとしちゃって……
私も生徒会長のことは尊敬します!」
 白雪ははっとし、やっと我に返る。
「そうか、初対面なのに尊敬されるなんて、やっぱり兄上はすごいんだな」
 ゼンは満足そうであった。
「あーるじー!」
 背後から声がした。振り向くと、先ほど校庭ではトラックを猛スピードで走っており、
バスケではみごとにシュートを決めたオビがいた。焼きそばパンを食べていた。
「なんれす? その赤髪の子ふぁ?」
 オビは焼きそばパンをほおばりながら問う。
「オビ、喋るか食べるかどっちかにしろ。転校生だよ。白雪っていうんだ」
 ゼンは焼きそばパンを食べながら喋るオビを注意する。
「てんこうせい?」
「そうだ。お前、午前中いなかったろ。今日うちのクラスに入ったんだ」
「よろしくお願いします。オビさん」
 白雪は頭を下げる。
「オビでいいよ。こちらこそよろしく」
 オビは焼きそばパンの最後の一口を食べニコリと笑う。
 オビに挨拶したところで、白雪は背後から鋭い視線を感じた。
好意的ではない恐ろしい視線であった。白雪は恐る恐る振り返ると、
木陰からじっと白雪を見つめている制服を着た男がいた。
「どうしたんだ? 白雪?」
 白雪の異変を感じ取ったゼンが、白雪の視線の先を見た。
「巳早だ!」
 ゼンは白雪の姿を隠すように言う。
「あいつは巳早といって、何か金儲けになりそうなことがないか、
いつも探っている奴なんだ。あいつには気を付けろ!」
「う、うん……」
 ただならぬ強い視線に白雪は怖くなった。
「巳早はろくでもないこと考えてるけど、俺たちと一緒にいれば大丈夫だからな」
 ミツヒデが白雪を安心させるように言う。
「はい、ありがとうございます」
 5人で廊下を歩いていると、突き当りに大きな鏡があった。
5人の姿を映し出している。白雪は鏡の前で立ち止まり、じっと自分の姿を見つめる。
「やっぱりブレザーの制服は新鮮だな」
 白雪は鏡から自身のブレザーに視線を移し制服を眺める。
「タンバルン学園はどんな制服だったんだ?」
 ゼンが尋ねる。
「セーラー服だよ。中学もセーラー服だったからブレザーの制服がすっごく新鮮」
 白雪は再び鏡の中の自分を見つめる。
「セーラー服!」
 ゼン、ミツヒデ、オビの3人が声を揃える。
「白雪、そのセーラー服の写真はないのか?」
 ゼンが顔を赤らめながら言う。
「は?」
 白雪はきょとんとする。
「い、いや。なんでもない。今のは忘れてくれ……」
「ミツヒデの旦那は木々嬢のセーラー服姿も見たいってさ!」
 オビが木々に向かって言う。
 木々は鋭い視線をミツヒデに向ける。
「言ってない、言ってない! 言ったのはオビだろう!」
 ミツヒデは首を激しく横に振る。
「ああ、制服の話題は終わりにしよう……。これで校内の案内は終了だな……。
そろそろ帰るか。オビも帰るか?」
 オビが無言で頷く。
 5人は校門へ向かって歩き出す。
「そういえば、白雪はどこに住んでるの?」
 木々が白雪に言う。
「この近くのマンションです。実は一人暮らしなんです」
「一人暮らし?!」
 白雪以外の4人は驚き、声を揃えて言う。
「母はずっと前に亡くなっていて、父は単身赴任しているんです。
私は祖父母に育てられたんだけど、祖父母も数年前に他界しちゃったんで、もう一人暮らしは長いんだ」
 白雪は驚いたみんなを更にビックリさせないよう笑顔で言った。
「じゃあ、今度白雪のマンションに遊びいいっていい?」
 木々がニコリと笑い白雪に問う。
 白雪は一瞬硬直する。
「あ…、ワンルームマンションで狭いし、結構散らかってるから掃除しないと招待はできないかな。ははは……」
 白雪は苦笑いした。
「最後に白雪。連絡先だ。メールかLINEのアカウントを教えてくれ」
 ゼンがポケットからスマートフォンを出す。
「メール、LINE……」
 白雪は一瞬呆然とする。
「どっちかはあるでしょ?」
 木々が不思議な顔をする。
「あっ、うん。ちょっと待ってね」
 白雪はみんなから数歩離れ後ろを向く。
 カバンからスマホを取り出し数十秒操作した後、笑顔で振り返る。
「はい。こっちがメールで、こっちがLINEで……」
 5人は円陣を作り連絡先を交換した。
 白雪のクラリネス学園での一日は、こうして無事に終わった。

♪続く

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