赤髪の白雪姫二次小説
白雪姫



主な配役

白雪姫 白雪 
継母お后 ガラク 
 小人 ゼン、オビ、ミツヒデ、木々、ラジ王子、サカキ、リュウ 



【前編】  【後編】


【前編】


 むかしむかしある国に、『白雪姫』と呼ばれる美しい姫がおりました。
 肌が雪のように白く、頬と唇が林檎のように赤く、髪も林檎のような赤い髪を持った珍しい娘です。
 しかし、白雪姫の継母であるお后ガラクは、自分こそが世界で一番美しいと信じていました。
 お后は不思議な鏡を持っていました。問いかけると真実を話してくれる魔法の鏡です。
 お后は自分の美しさを確認するために、毎日、鏡に問いかけます。
「鏡よ、鏡。この世で一番美しいのは誰? っていうか、なんであたしが継母役なわけ?」
 とガラクは今回の配役の疑問と一緒に鏡に問いかけます。
「お后様、あなたがこの世で一番美しい」
 鏡はそう答えました。ガラクお后は満足します。
 今回の配役に疑問を持ちながらも、ガラクはいつものように鏡に問いかけていました。
 しかし、ある日のこと。鏡からは、いつもと違う返事が返ってきました。
「お后様、あなたはとても美しい。ですが、あなたの義理の娘である赤髪の白雪姫のほうが千倍美しい」
「そうよね、白雪ちゃんのほうが若いものね……おっと、納得しちゃいけなかった! なんですってぇ~!」
 ガラク継母お后は、怒りまくります。
「八房、白雪姫を森へ行って殺してきなさい。証拠に白雪姫の肝臓と肺を持ってくるのよ……ってエグイわね……」
 ショックで怒り狂ったお后は、部下……いえ、猟師の八房に命令しました。
「はあ……ご自分でなさればよろしいのでは?」
 八房が無表情で答えます。
「ここで私が森へ行ったら話が成り立たないでしょう。行きなさい、八房。薬室長命令です」
「究極の上司からのパワハラですね……わかりました。行ってきます」
 八房は白雪姫を森へ連れてゆきました。
 薬室長命令なので、白雪姫を殺そうとしましたが、やっぱりできませんでした。ガラク薬室長本人がやればいいのに……。それが彼の本心でした。
「猟師さん、私を殺さないで! 私はこの荒れた森の奥へ行き、もう二度と家には戻りません」
「いや……殺さないけど……。白雪さん」
 八房は無表情で答えます。
「すみません、先に台詞を言っちゃいました。八房さん、全然、刀を私に向けてくれないんですもの」
「はあ、全くやる気がなくて……」
 全くやる気のない猟師八房は、白雪姫がとても美しくかわいそうだった……ということにして、白雪姫を逃がしてやることにしました。
 たとえ、今逃げられても、森の中で一人彷徨い、獣に食われて死ぬ運命は変わらないのです。
 八房は代わりにイノシシを仕留め、白雪姫の肝臓と肺だといってガラクお后に差し出しました。
 お后は肝臓と肺を塩ゆでにして残さず食べてしまいました。これでガラクお后は、世界で一番美しくなったのです。


 一方、白雪姫は森の中を彷徨い、必死で森を駆け抜けました。お后から遠く遠く離れなければなりません。
 国境を越え、七つの山を越えていきました。そうでないと、またお后の魔の手が忍び寄るかもしれません。
 森の中で疲れ切った白雪姫が歩いていると、ある小さな家を見つけました。
 ドアをノックしましたが返事がありませんでした。白雪姫はおそるおそる家の中に入りました。留守のようで、人の気配はありません。
 白雪姫は家の中を見回しました。家の中にあるものはすべてが小さかったですが、手作りの品のよいものでした。
 ダイニングにはテーブルがあり、小さな7枚の皿に野菜やパンなど食事が盛ってありました。 
 白雪姫の身体は疲労と空腹でボロボロでした。このままでは生命の危険があると感じ、7枚の皿から少しずつ食事をいただくことにしました。
 後で家の人が帰ってきて説明すればきっとわかってくれるはずです。そう思ったのです。
 空腹を満たした白雪姫は別の部屋を見て回りました。7つの部屋があり、それぞれ小さな机とベッドが置いてありました。
 ふと、白雪姫は強烈な眠気に襲われました。小さなベッドに横たわると、一瞬にして睡魔が襲ってきました。

 白雪姫にとって久しぶりの柔らかく、温かなベッドでした。


 辺りがすっかり暗くなった頃、この小さな家の主人たちが戻ってきました。
 7人の小人です。
「ただいま~、あれ?」
 最初に家に入った小人ゼンは、出かける前と家の中が違っていることに気づきました。テーブルや椅子の位置、細かな配置が少しずつ違っているのです。
「誰か家の中に入った形跡があるようね、ミツヒデ」
「そうだな、木々。ゼン、俺たちの後ろに下がって!」
「おいおい、今回はみんな小人役だからそんな気は使わなくていいぞ」
 ゼンがミツヒデと木々に言います。
「侵入者はまだ家の中にいるかもしれません。下がってください、主!」
 小人オビも目を光らせます。
 ゼンは無理やり後ろへ下がらされます。
「侵入者とは恐ろしい。サカキ、何とかしろ!」
 今回は小人役、タンバルンのラジ王子が側近のサカキの後ろに隠れます。
「はい、ラジ王子」
「侵入者ですか……、夕食も少しずつ食べられていますね」
 7人の中で一番落ち着いている小人、リュウがダイニングのテーブルを見ます。出かける前に用意しておいた食事が少しずつ食べられていたのです。
「なにっ! 飯が食われているなんて許せん!」
「ああ、許せないですね、主!」
「ただじゃおかないからな! 侵入者め! コテンパンにしてやる!」
「そうですね、主!」
 ゼンとオビがテーブルを見て怒りまくります。

 単独行動は危ないので、7人固まって一部屋ずつ確認してゆきました。
「誰もいないわね、もう逃げちゃったのかしら?」
 6つ目の部屋まで、誰もいませんでした。木々が首をかしげます。
 最後のゼンの部屋の扉を開けました。
 部屋の中を見ると、ベッドに若く美しい赤い髪の女の子が眠っているのを見つけました。
「赤い髪……」
 ベッドを占領されてしまったゼンがそうつぶやきます。
白雪姫があまりに美しく、ぐっすり眠っているので、小人たちはそのまま白雪姫を朝まで寝かせてあげることにしました。
 朝になり、白雪姫から事情をきいた小人たちは、彼女に同情しました。白雪姫をとても可哀想に思ったのです。
「それは可哀想に……。お嬢さん」
「同情するぞ、白雪」
 オビとゼンは白雪姫に慰めの言葉をかけます。
「コテンパンにするんじゃなかったの?」
 木々がポソリと呟きます。
 家の掃除や食事の準備など家事をすることを条件に、白雪姫をこの家においてあげることにしました。みんな意見が一致したのです。

 白雪姫とちょっと個性的な7人の小人の新しい生活が、これからはじまります。


♪続く

【後編】




立ち読み無料♪







【BACK】 【HOME】