赤髪の白雪姫2次小説
王子様は心配性



結婚後の話です。ゼンと白雪の子供が出てきます。王子様の嫉妬の続きとしても読めます。


1.逢魔が時 2.生存確認

1.逢魔が時

 白雪は窓の外を見た。
 今日一日、私たちを照らしてくれた太陽が、遠くに見える山の向こうに沈みかかっていた。
山の稜線がオレンジ色に輝き、その色が空一面に広がっている。
柔らかなオレンジ色の光は、白雪のいる部屋に差し込んでいた。
もうしばらく、この夕焼けは部屋を照らしてくれるであろう。日中は暑かったが、
今はオレンジ色の夕焼けと一緒に涼しい風が吹いていた。部屋には天井まで届く大きな窓が二つあり、
白雪は片方の窓を全開にした。日暮れまで、オレンジ色の夕焼けと一緒に涼しい風を部屋の中に入れておきたいと思った。
 部屋の中では、もうすぐ1歳になるゼンと白雪の子が積み木で遊んでいた。
遊んでいるといっても、まだ積み木が積めるわけではなく、白雪が積んだ積木を崩して喜んでいるか、
積み木を口にくわえているだけである。今は手に持った積み木を機嫌良さそうにブンブン上下に振り、
窓辺にいる白雪の姿を見ていた。また積み木を積んでほしいのだろう。白雪は我が子の元へ戻った。
 もうすぐゼンが帰ってくるはずだ。今日は王宮内の執務だけで、
外に出かけるようなことはないため、日暮れるまでに帰ってくると言っていた。
少し部屋を片付けようかな? と思っていると、扉の外から何人かの話し声がした。
その中にゼンの声もある。
 帰ってきたのだ。
 ゼンを迎えようと、白雪は子供を抱き上げた。
 扉の方へ向かおうとしたその時、強めの風が部屋の中に吹き付けた。
白雪は窓の方を振り返ると、豪華な刺繍が施された遮光用の紫色のカーテンが風に揺れていた。
 ――そうだ。たまにはちょっと隠れてゼンを驚かそう!
 白雪は子供を抱えたまま、開いていない窓の方へ走った。
遮光用の厚手の紫のカーテンと窓の隙間には人がちょうど一人入れるくらいの隙間がある。
白雪はその隙間へ体を滑り込ませた。動かなければ人がカーテンの裏に隠れているなど気づかれないであろう。
腕の中にいる我が子は積み木を一つ持ったまま機嫌良さそうにしている。
きっと隠れていても、子供が騒いでしまうから、すぐに見つかってしまうだろう。
 ――ちょっとだけゼンを驚かそう。
 白雪はほんのいたずら心でカーテンの裏に隠れた。

「ただいま」
 ゼンはいつものように扉を開けて部屋に入った。
「あれ?」
 ゼンは扉を開けたまま硬直する。いつもいるはずの白雪と子供の姿がない。
そのまま部屋を1周見回したが人の気配はないようだった。
「白雪? どこいった? しらゆきー!」
 ゼンは部屋の中に入り、妻と子供の名を交互に叫ぶ。
(ふふふ、ゼンってば探してる……)
 カーテンの裏に身をひそめている白雪は心の中でひっそりと笑う。
 カーテン越しに顔を出して覗かなくても、白雪の立っている場所から斜め45度の位置に鏡台があった。
その鏡でゼンの姿を確認することができた。白雪が妃になったときにゼンが揃えてくれた鏡台である。
鏡の中のゼンは必死に白雪の探している。

 ゼンは部屋の中央で呆然とした。
 どうして白雪と子供の姿がないのだろう。
 帰ってきた時、ゼン達が暮らす部屋を警備する衛兵は何も言っていなかった。
もし、白雪や子供が不在の場合は、必ず『今はどこかへ出掛けている』と声をかけてくれるはずだ。
その衛兵が何も言っていなかったということは、白雪たちは部屋の中にいるということだ。
 部屋の中央には積み木のおもちゃが崩されている状態で置いてあった。
今さっきまで遊んでいたようだ。きれい好きな白雪が、おもちゃも片付けずにどこへいったのだろう? 
 ゼンはしばらく考えていると、顔に強い風が吹き付けた。
 風の吹いてきた方を見ると、二つある窓のうち、一つの窓が全開になっていた。
 窓からオレンジ色の夕焼けが部屋に差し込んでいる。
外を見ると、遠くに見える山の向こうに太陽が沈みかかり、わずかな赤い光を残し薄暗くなっていた。
 一日が終わろうとしているのだ。
 薄暗い中に残された昼の余韻のような赤い夕焼けの光が、まるで血の色のように思えた。
その赤がなんとも不気味で、気味悪く感じたのだ。
 昼から夜へと橋渡しのようなこの時間。
 明るくも暗くもないこの時間を『逢魔が時』と呼ぶのではなかっただろうか? 
 魔物に遭遇しそうな時間である。夜の闇に潜む魔物は、まだ薄明るい夕暮れ時では活動しない。
ひっそりと、この夕暮れの中に佇んでいるという。魔物が本領を発揮するのは夜の闇だが、今、この世界にも魔物は彷徨い、佇んでいるのだ。
 『逢魔が時』とは、そんな魔物に逢ってしまうかもしれない時間だ。
 窓から強い風が、もう一度ゼンを吹き付ける。
 遮光用の紫のカーテンが天井に向かって大きく不気味に揺れた。
 ゼンは誰もいない。――そして、音のしない部屋を見渡す。
 ゾクリと寒気がした。
「た、大変だ……」
 バタリ。
 扉の閉まった音がした。
(えっ?)
 白雪はカーテンから顔を出した。ゼンは部屋から出て行ってしまった。
 そろそろゼンの前に姿を現そうかと思ったのに、どこかへ行ってしまった。
どうしたのだろう? それに、扉の外がなんだか騒がしい……。
「ミツヒデ―! 衛兵を呼べ! 白雪と子供がいないー!」
 扉の外から大きなゼンの声が聞こえた。
 白雪は子供を抱えたまま青くなる。
「うそっ!」
 白雪は慌ててカーテンの外へ出ようとした。
 だが、何かに背中を引っ張られた。振り向くと窓枠に付いているカーテンを止めるための金具が
白雪の背中の服に引っかかってしまっていたのである。
 白雪は片手で子供を抱え、金具を取ろうと背中に手を回す。
いつもと違う態勢で抱えられた我が子は面白いのか、キャッキャッと笑いながら手足をバタつかせ暴れ始めた。
その動きに白雪はバランスを崩し、背中に腕が届かなくなる。かといって子供を床へ降ろすには高すぎる位置だった。
背中に引っかかった金具をこの体勢で、片手で外すしかなかった。
 扉の外は更に騒がしくなる。大勢集まってきているようだ。「ゼンー!」と何回か叫んだが、
外の声にかき消されてしまっているようだ。声は届いていないらしい。
 白雪は暴れる我が子と背中の服と格闘する。

「ゼン! 大丈夫。ここにいるよっ!」
 数分後、白雪は慌てて扉を開け、みんなの前に姿を現した。
「し、しらゆき!」
 ゼンは大きく目を見開き、声は裏返っていた。
 白雪は扉の外の人の数に圧倒される。
 ミツヒデに木々、それにハルカ公爵まで来ていた。その周りを数十人の衛兵が取り囲む。
「うわあああーん!」
 我が子が手に持っていた積み木を床に落とした。大勢に取り囲まれ、驚いた我が子が大声で泣き始める。
「ど、どこにいたんだ? 白雪!」
 ゼンが青い顔で問い詰める。
「ちょ、ちょっとゼンを驚かそうかなーと思って、カーテンの裏に隠れたら、服が金具に引っかかって出られなくなって……」
 その場にいる全員の視線が白雪に集まる。
「あの…その……どうもすみません!」
 白雪は赤い頭を皆に向かって下げる。
 ゼンは呆然とし、ミツヒデは頭を抱え、木々は目を瞑り溜息をついていた。
ハルカ公爵は厳しい目で見つめている。衛兵たちは何も言えずその場で硬直している。
 我が子の泣き声だけが、廊下に響き渡っていた。


「本当にすみませんでした。もうかくれんぼはしません……」
 白雪はゼンに向かって赤い頭を下げる。
 部屋に戻ってきてやっと二人きりになった。
「いや、もういい。さっきハルカ公爵に、こってり絞られたばかりだし。もう謝らなくていい」
 ゼンが優しく宥める。
「でも……」
 白雪は泣きそうな顔になる。
「いや、俺が部屋の中を確認もしないで騒ぎ始めたのもいけないんだ。もういいよ」
「ううん、ゼンは悪くないよ。いつもいるはずの場所にいなかったら心配するのは当然だもの……」
 白雪は俯く。
「でも、本当に心配した。窓も全開だったし、子供のおもちゃもそのまま。
誰かに連れ去られたのかと思ってさ。ちょうど夕暮れ時だったし、『逢魔が時』って言葉もあるだろ?」
「逢魔が時?」
 聞きなれない言葉に白雪は首をかしげる。
「ああ、夕方の薄暗い時間の事をいうんだ。昼と夜が入れ替わるときで、魔物にでも逢ってしまいそうな時間の事だ」
「魔物……」
「まあ、魔物は言い伝えかも知れないが、夕方から夜にかけて体調が悪くなる人も多いって聞くぞ」
「そうだね、夕方から夜にかけて頭痛を訴える人って多いし、体調崩す人多いかもしれない」
 白雪は薬室にいた頃を思い出して納得する。
「魔物でも人でも、白雪が連れ去られなくてよかった」
 ゼンは穏やかな笑顔で白雪を見つめる。
「それに比べて、私ってば……カーテンの陰に隠れて鏡台に映るゼンを見てて笑ってたりして……ごめんなさい」
 白雪はまた赤い頭を下げる。
「鏡台?」
「うん。カーテンからちょうど鏡台が見えて、鏡に部屋全体が映るの」
「ふうん」
 ゼンは頷きながら鏡台の前へゆく。鏡台に映る自分の姿をじっと見つめていた。
 白雪も立ち上がりその隣に寄り添う。
「じゃあ、今日はこの鏡台の前で白雪を貰おうかな?」
 ゼンは隣に寄り添う白雪の腰に手を回す。
「え?」
 もう片方の手でしっかりと肩を抱き、すかさずゼンは白雪に唇を重ねる。
熱く重なった唇の隙間からゼンの舌が滑り込んできた。
口腔内を舐めまわされ、飲みきれなかった唾液が口の端を一筋伝わる。
「決めた。今日はここで白雪をいただく」
 ゼンはニヤリと笑い、白雪の服に手をかけた。


2.生存確認

「ちょ、ちょっとやめて……」
 鏡の前で白雪はどんどん服を脱がされてゆく。
あっという間に鏡の中に何も身に着けていない自分が映った。
後ろからゼンにしっかりと抱きしめられ、逃げることはできなかった。
いつのまにかゼンも服を脱いでおり、鏡に映る裸体の男女の姿は、いやらしく……
まるで自分達ではないような気がした。恥ずかしさのあまり白雪は目を伏せる。
 ゼンは首筋に顔を埋め、胸を鷲掴みする。親指を支点にして他の4本の指をゆっくりと動かす。
柔らかな心地よい感触がゼンを満足させる。白雪の腰にしっかりと腕を回し、彼女を動けない様に固定する。
胸を弄んでいた指は、桜色の頂上に達する。乳頭を親指と人差し指で軽くつまみくすぐる。
「うんんっ!」
 白雪は耐えきれず声を漏らす。
「ほら、白雪。ちゃんと前見て。二人とも裸だよ……」
 ゼンは俯く白雪の頬に手を添え、前を向かせる。
 鏡の中には重なり合う男女の姿がある。
ゼンが後ろからピタリと寄り添い抱きかかえられている自分の姿が映っている。
ミツヒデやオビと比べると小柄なゼンだが、やはり男の人だ。腕や肩が逞しい。
ゼンの腕の中に完全に収まってしまう。自分の身体がすごく小さく思えた。
「いや……恥ずかしい」
 白雪は目を閉じ赤い頭を振る。
「こんなに綺麗なのに……」
 ゼンはそう言いながら胸から腰に手を這わす。くびれたウエストを何回かなぞり、
お臍の下にそっと手を添える。そこから徐々に下へ降り、茂みに辿り着く。
「すごい、白雪も興奮してる……」
 茂みの中に手を這わすと、白雪の大事な部分は充分に潤っていた。
割れ目に沿って指を動かすと粘液が指に絡みついてきた。密壺から愛液はどんどん溢れ出ていたのだ。
「ほら、白雪見ろ。こんなになってるぞ」
 白雪の大事な部分に這わせていた指を彼女の目の前に出す。人差し指と中指の間に粘液性の銀色の糸が引いていた。
「いやっ!」
 白雪は目を逸らす。
 嫌がる白雪をよそに、ゼンは再び秘所に手を這わせた。
今度は彼女の背中に触れ、お尻のほうから秘所を辿った。
形の良いお尻を数回撫で、尾骶骨から秘所を辿ると、ヌルヌルの液体がゼンの指を歓迎する。
密壺にはたやすく指が挿入でき、中指を彼女の奥の方まで挿れた。
「ああっ!」
 白雪はガクリと膝を崩す。立っていられなくなり、床に膝をつく。
ゼンはそんな彼女の身体を起こし、背後からしっかりと腰を抱く。
もう片方の手で再び刺激を続ける。密壺からは粘液が溢れ出ており、秘所はトロトロに潤っていた。
脚の内側をさすると、密壺からあふれた粘液が内腿を辿っていた。
 ゼンは正面の鏡を見る。白雪はもはや話もできない状態で抱えられて立っているのがやっとであった。息も苦しそうであった。
「白雪、こっち向いて」
 ゼンの言葉に、白雪が肩越しにゆっくりと振り向く。彼女の頬に手を添え、唇を重ねる。
上唇と下唇をしっかりと吸い上げ、柔らかな白雪の感触を堪能する。
「そろそろ俺も我慢できなくなってきた。挿れていい?」
 白雪は目を閉じたまま無言で頷く。
 ゼンはしっかりと抱えていた白雪の身体を離し、目の前の鏡台に両手をつかせた。
「ど、どうするの?」
 白雪が心配そうに振り返る。
「今日はこのまま、後ろからする」
 ゼンは白雪の上半身を床と平行にさせ、お尻を突き出させる。
一度白雪の秘所を撫で、密壺の位置を確認し、自身の肉棒を突き立てた。
「えっ! ゼン? いやああああ!」
 抵抗する白雪をよそに、ゼンは肉棒をそのまま押し進めて行った。
密壺の中はゼンを歓迎するように粘液がまとわりつき、彼を閉めつける。
「白雪、鏡台につかまってろ。このまま動く……」
 ゼンは白雪の中を動き始めた。鏡を見ると、白雪が目を瞑り、顔を歪ませている。
その表情がなんとも色っぽく……また、獣のように白雪を後ろから犯している鏡の中の姿も、ゼンを興奮させた。
密壺の中でモノが大きくなったのを感じた。
 白雪は言われた通り、必死に鏡台につかまっている。グチュグチュと秘所のこすれ合う音が部屋に響き渡る。
挿入はそれほど深くないが、ゼンからは白雪と繋がっている部分が丸見えで更に興奮を煽る。
目の前の白雪の腰をしっかりと押さえる。欲望に任せ、彼女の最奥に肉棒を強く何回も押し付ける。
「白雪、もうすぐイクッ!」
 腰を押さえている手に思わず力が入る。大きく一回彼女を突き上げた。
「ああんっ!」
 白雪が息を切らす。ゼン自身も限界を超えて、彼女の中に自身の分身を欲望のまま放出した。
 ゼンは繋がったまま、鏡台にうつ伏せになっている白雪の手をとり、体を起こす。
彼女の顔をこちらに向かせ、唇を重ねる。
「ゼン……今日はかくれんぼしてごめんなさい」
 唇を離した白雪から出た言葉だった。
「もういい……」
 ゼンはご機嫌で、彼女の頬にもう一度軽くキスをした。


***

「喉が渇いたな……」
 ゼンは寝台から起き上がった。
外は暗い。夜明けまでには、まだ間があるようだ。
 水を飲もうと寝台から離れた。
 鏡台の前で白雪と愛しあった後、寝台へ入りお互いすぐに寝てしまった。
いつもと違う場所で激しく愛し合ってしまったせいか、白雪は疲れてぐっすり眠っている。
ゼンの方へ向かい横向きで身動き一つしなかった。
 ゼンは水を飲んだついでにトイレにも行ってきた。時計を見ると、夜明けまであと数時間ある。
もうひと眠りできそうだ。そう思いながら寝台に戻った。
 寝台を見ると、白雪はゼンが寝台を出るときと同じ格好で眠っていた。
全く動いていないと言ってもいいくらい同じ姿勢であった。
 ふと、白雪が息をしているか不安になり、試しに軽く肩を叩いてみた。……全く反応がない。身動き一つしなかった。
 ますます白雪が生きているか不安になってきた。
自分が寝ている間に、白雪が眠るように死んでしまったら後悔なんて言葉じゃ片付けられない! ゼンは青くなる。
 白雪に顔を近づけて寝息を確認する。顔を近づけても白雪は全く動かず、また息をしているかどうかも確認できなかった。
 ――まさか、白雪。息してない!?
 更に青くなる。
「おい、白雪! 息してるか? 生きてるか?」
 ゼンは必死に白雪の身体を揺さぶった。
 すると、白雪は寝返りを打った。横向きから仰向けになり、不機嫌そうな表情をする。
「もう……何? 生きてるよ……まだ眠いからやめて!」
 白雪はさらに寝返りを打ち、ゼンに背中を向けて寝てしまった。
顔はうつ伏せでゼンの方向を振り返りもしない。迷惑がっているようだ……安眠を妨害してしまったらしい。
 それでもゼンは、白雪は生きていることにホッとした。
 寝台に入り、こちらに背中を向けている白雪に近寄る。腕を彼女の身体に回し、抱きしめながら安心して眠った。

***

 白雪はゼンの腕の中で目を覚ました。
 カーテンの外は明るい。もう起きなければならない。
 ゼンの腕をそうっとほどき、ゆっくりと起き上がった。
寝台から出ようと腰を浮かせたとき、手に重みがかかった。ゼンがしっかりと手首を握っていたのだ。
「う…ん……しらゆき……」
 ゼンは寝ぼけながら白雪の腰に手を回し、顔を摺り寄せてきた。
 ――そういえば、夜中に生きてるか? と肩を揺さぶられ起こされたような気がする。
まさか……生存確認? 夜中の出来事を思い出した。
 白雪は溜息をつく。
 まったく、ただ眠っているだけで心配するなんて、この王子様はなんて心配性なのだろう。
 白雪は部屋を見回した。ゼンは王子にしては質素な生活であったが、やはりここは王宮だ。
街娘の生活とは違う。部屋も一つ一つの装飾品も街での生活とは比べ物にならない。 
まさか自分がクラリネスの王子の后になるなんて想像もしなかった。
でもそれと同じくらい、驚くというか……予想外なことがもう一つあった。
 ――こんなに自分のことを愛してくれる人と一緒にいられるなんて思ってもみなかった。
付き合い始めたり、新婚の頃だけはこんな感じかな? となんとなく予想はできたけど、
こんなに長く相手の事を想い、また想われる生活が続くなんて、白雪にとって予想外であった。
「ゼン、もう少し寝てていいよ」
 白雪は腕をほどき、ゼンの頭を軽く撫でる。安心したのか、穏やかな寝顔で眠っている。

 ――この予想外の幸せは、胸に秘めておくことにする。

 他の人に話してもただのノロケ話だと思われるだけだ。
わざわざ口に出して言うようなことではないし、特別誰かに報告する必要もない。
 でも、もしかしたら……、私のように口に出さないで、こんな幸せを噛みしめている人が他にもいるのかもしれない。
「うふふ」
 思わず顔がにやけてしまう。
 朝からこんなニケけていてはいけないと思い、白雪は自分の両頬を引っ張り真面目な顔を作ろうとした。
「……変な顔」
 白雪は固まる。
 声の方を向くと、幸せの原因が寝台に横になったまま目をぱっちりと開けていた。
「え? ゼン! いつから起きてたの?」
「さっき。白雪がニタニタしてるところから」
「声かけてくれればいいのに……そうだ。ゼン、夜中に起こされたけど、あれは何?」
「ああ、白雪が身動き一つしないで寝ているから、生きてるか不安になった。生きててよかった……」
 ゼンが白雪の方へ移動し、膝の上に頭を乗せて甘えてくる。
「ああ、そう……」
 心の中でやっぱりと思うと同時に、今後、冗談でも死んだふりをするのをやめようと心に誓う白雪であった。


♪おわり


タイトルを「かくれんぼ」にしようと思ったのですが、同じタイトルの作品があったことに気づき却下(笑)。
この前編を更新した夕方、なんだか腹が痛くなってきた……。逢魔が時なんて書いたせいか~?
そういえば、夕方頭痛がすることって多い気がする。パソコンとか、私の場合は仕事上、
顕微鏡の見過ぎかと思っていたけど、夕方の逢魔が時な時間って、交感神経優位から副交感神経優位に切り替わる時間だから
本当に体調崩す人が多いんですって。これからは逢魔が時なせいにして早く仕事から帰ろう!いつも更新するために早く帰ってますけどね!(笑)

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