***ヘンゼルとグレーテル編***



 「近衛課長、今月も赤字です。我が閻魔丁召喚課の財政は火の車です。
このままでは 食べるものさえ 危ないです。」
「そうか、巽・・・。仕事があっても 破壊魔都筑のおかげでマイナスだからな。
どうしたらいいかな。」
「課長、いっそのことあの二人を・・・。ヘンゼル都筑とグレーテル密を
森へ捨ててきては・・・。」
「う〜む、やはりそれしかないかな。」
 大変だ。俺達は捨てられてしまう!こっそり会話を聞いていたヘンゼル都筑は
グレーテル密に相談した。役柄、グレーテルは妹なので フリフリのエプロンのついた
ワンピースを身に着けていた。
「大丈夫だ。ヘンゼル都筑。俺にいい考えがある。」
密はみんなが寝静まった夜 こっそり外へ出て小石を拾い集めた。

 あくる日 巽は ヘンゼル都筑とグレーテル密にこう言った。
「さあ、今日は暖房費節約のために 森へ薪を拾いに行きます。2人とも用意はいいですか?」
森へ行くのに グレーテル密は 巽に気づかれないように そっと小石を落として行った。
「さあ、2人ともいっぱい薪を集めてきておくれ。私は 木を切ってくるから。」
巽はそう言い 森の茂みに消えて行った。
 辺りが暗くなり コウモリが茜色の空を 円を描くように飛ぶ時間になっても
巽は戻ってはこなかった。
「密ぁ〜、どうしよう。もう暗くなって来ちゃったよぉ。お腹も空いたよぉ。」
「泣くな!ヘンゼル都筑。兄貴役なんだからしっかりしろ!!!
大丈夫だ。来るときに小石を落としてきた。それを辿って帰ればいいさ。」
2人は 密の落とした小石を辿って無事 閻魔丁召喚課へ帰ることができた。

 それから何日かたった夜、また近衛課長と巽の話し声が 聞こえてきた。
「近衛課長、もうパンがありません。今度は森のもっと奥へ
あの2人を捨ててきましょう。」
「う〜ん、良心が痛むがそれしかないか・・・。」
大変だ!また捨てられる!!!話をこっそり聞いていた2人は顔を見合わせた。
すぐに外へ出て 庭の小石を拾おうとドアに向かったが・・・
鍵がかかっていて外に出る事は出来なかった。

「さあ、今日は食費節約のために 森へ木の実を拾いに行きましょう。」
巽はそう言い 2人を森へ連れ出した。
「ヘンゼル都筑とグレーテル密は ここで木の実を拾っていなさい。
私は 森の奥で薬草を探してくるから。」
巽は ヘンゼル都筑とグレーテル密に背中を向け 森の闇の中へ消えて行った。
 勿論のこと 空に浮かぶ雲が赤みががる時間になっても 森の木々が
光合成を止める時間になっても 巽は迎えに来なかった。
「どうしよう 密。こわいよぉ。」
「てめーはホントに兄貴か?大丈夫だ。行きに 朝食のパンをちぎって
少しづつ落としてきた。それを辿って帰ればいいさ。」
「え・・・パン・・・?」
都筑は はっとした顔をした。なんと都筑は 密の落としたパンを
後ろから全部食べてしまっていたのだった。
「食い意地がはるのもいいかげんにしろ!どうするんだ!!!!!」
密は 都筑に向かって怒鳴りつけた。森は 同じような木々が生い茂っており
それも辺りは暗くなって来てしまった。北も南も分からぬまま
とにかく2人は森の中を 出口を求めてさまよい歩いた。
「おなかがすいたよぉ。密ぁ〜。」
都筑はあまりの空腹に泣き出した。
「泣くな!元はと言えばお前が悪いんだ。しっかりしやがれ!」
「ううっ。」
都筑は 泣きながらその場にしゃがみこんでしまった。
密のフリフリのエプロンのついたワンピースもすそが泥だらけ。歩きつかれた密も
一緒に座り込んだ。
 しばらくたつとガバッと都筑が顔を上げた。
「甘いものの匂いがする・・・。」
都筑は立ち上がり急に歩き出した。
「おい、都筑どうしたんだよ。」
密は 都筑のあとを追った。
 しばらく歩くと お菓子で出来たかわいらしいお家があった。
お腹を空かせ 甘いものの好物な都筑は お菓子の家へかぶりついた。
「食意地もこんな所で役に立ったか・・・。」
密もあまりの空腹と疲れに 一緒お菓子を食べた。
するとお菓子の家のドアが『ギギッ〜』と開き 中から薔薇を持った白髪の男が出てきた。
「おお、これは私のお菓子の家を食べて どうしたというのだ?」
「すみません。俺達は どうも森へ捨てられたらしいのです。森をさまよっていると
このお菓子の家が・・・。お腹が空いてどうしても我慢できなくなってたべてしまいました。
どうかお許し下さい。」
密は 礼儀正しく申し訳なさそうに言った。
「おお、それはかわいそうに。どうぞ中にお入り下さい。私の名は邑輝。
行く宛が見つかるまで どうぞここにいて下さって結構です。フフフ。」
都筑と密は 邑輝の言葉に甘えてしばらく お菓子の家にいることに決めた。
 次の朝 目が覚めると な、なんと都筑と密は檻の中にいた。
「フフフ。引っ掛かりましたね。都筑さんに 密さん。ここは『お菓子の家』ではなく
『犯しの家』。これからよーく料理して私が食べてあげましょう。
特に都筑さんには たっぷり太って頂きます。やせてきしゃな都筑さんも
いいのですが 今回はたっぷりと太っていただきます。」
「ひいいいいいい。」
2人は悲鳴を上げた。
 都筑にも密にも 毎日十分な食事が与えられた。
数日たったある日 都筑は檻から出るように邑輝から命じられた。
殺されるわけではない 抵抗することが無駄だと分かった都筑は 邑輝のなすがままになろうと 
あきらめた。邑輝の手が 都筑の伸びようとしたその瞬間、
『バンッ!!!』
と勢いよく犯しの家のドアが開いた。
「都筑さんに密さん。大変です。十王丁からあなたたちご指名の仕事が入りました。
大至急召喚課に戻ってください。お願いします。」
「巽ィ〜〜〜〜。」
都筑は 泣きながら巽に飛びついた、密もほっとした表情だ。
「その2人は 私の捕まえた獲物。そうそう簡単に奪われてたまるか!」
邑輝は怒って 巽に言った。
「それは困ります。都筑と密は 閻魔丁召喚課の大事な職員。召喚課といえば
国境を越えて 死者の魂を収集する国際公務員のようなもの。公務員の勝手なアルバイトは禁止です。
どうみてもこれは 無理矢理。もし私が裁判にかけて負けるのは そちらでしょう。
お諦め下さい。邑輝さん。」
巽は 淡々と言った。悔しそうな顔をする邑輝。注文の多い料理店に続き
またもや 都筑を巽に奪われてしまった。
「次回は必ず 都筑さんを我が物に!!!!!」
邑輝は 身につけていたマントを翻し 薔薇の花びらを撒き散らして天高く消えて行った。
(いつから 邑輝は薔薇男に・・・・)どうやらまだまだ 邑輝の陰謀は続くようである。


今回も巽に助けられた 都筑。やっぱり都筑には巽が必要なのね♪

                                       〜おわり〜