2018年sho-comi 22号
創刊50周年記念 新作読み切り


天は赤い河のほとり~宿敵~
感想&続きパロ




宿敵……こんな感じ?
(昔のイラスト引っ張り出してきました。元のページはこちら



【あらすじ&感想】
  【続きパロ】


【あらすじ&感想】

あらすじ……というかどこの場面かですね。
本編の「偽イシュタルはFカップ事件」の裏話です。
え? 説明がねね’Sわーるど風すぎてわからないって?(笑)
もう少し詳しく説明すると、
ウルスラがウルヒにそそのかされて偽イシュタルを騙り、
七日熱でカパタの街はた~いへん! っていう場面です。
実家にコミックス置いてきてしまって手元にないんだけど、
偽イシュタルのことを教えたのってラムセスですよね。


イラスト:さおり
1999年オフ会ペーパーより

↑このシーンの次で偽イシュタルのことをユーリが知って王宮を飛び出したはず。
いやぁ~しかし20年前ですねぇ~。
歴史を感じますね。貞子ってわかります?
「君に届け」でも出てきたのでわかりますよね。

次は続きパロになります。
こんなに長い間、続きパロを書ける幸運に感謝です。
篠原先生、編集部様、小学館様、友人たち、
そしてなにより、いつも見に来てくださっているアナタ!に感謝です。
ありがとうございます。



【続きパロ】


 今、ムルシリのほうがユーリのことを理解しているのは
 あの男のほうがユーリと知り合って長いからだ

 そう納得したラムセス。
 まだ自分はムリシリに比べれば、ほんのわずかな期間しかユーリと過ごしていない。
 そのせいでユーリのことをまだ理解できないのだ、
 そう心に言い聞かせるラムセスであった。

「ハックション!」

 ハットゥサの冷たい空気にくしゃみをしたラムセス。
 側近のワセトから、エジプトとは気候が違うのだから何か着るようにと勧められる。
 ワセトにいらないと言いつつ考える。。
 
 ――ユーリのことを理解するにはどうしたらいいか。

 先に出会ったムルシリより、彼女と多くの時間を過ごすことは難しい。
 ユーリは側室としてムルシリと同じ屋敷で過ごしているのだ。
 ヒッタイトと講和が結ばれたとはいえ、エジプトは敵国。
 今、この状態でムリシリ以上にユーリのことを知ってゆくのは至難の業なのかもしれない。
「ハックション!」
 ラムセスはもう一つくしゃみをした。
「ラムセス様、せめてもう一枚羽織りましょう。このハットゥサで上半身裸の人なんていませんよ……」
 ワセトがおそるおそる上着を差し出す。
「いらないと言っているだろう!」
 ラムセスはワセトが差し出した上着を突き返す。
 ふと、自分の腕を見た。
 蜂蜜色の肌に、固く締まった逞しい筋肉がついている。
 続いて上半身を見つめると、鍛え抜かれた体は、胸筋も腹筋も美しい。
 ラムセスはあたりを見渡す。
 自分のように上半身裸の者はいないが、まだ雪の季節ではないので薄着の者も多い。
ムリシリも軽く一枚羽織っている程度である。
 ラムセスはムルシリの腕を見た。自分と同じくらいの引き締まった見事な筋肉がついている。
側近たちを見ても皆、鍛え上げられた逞しい体の者ばかりだ。
 ――ユーリを振り向かせて……この俺に惚れさせれば良いのだ。
そうすれば、彼女とずっと一緒にいることができる!
「よし!」
 ラムセスはこぶしを握りガッツポーズを作る。
「どうしたんですか? ラムセス様?」
 ワセトが不思議そうに首をかしげる。
「ワセト! これから特訓だ!」
「は?」
「ユーリを振り向かせるため、強い男になるんだ。
特訓だ! これから筋トレをして逞しい肉体を手に入れなければならない」
「ど、どうしたんですか? ラムセス様。今でも十分に逞しいですよ」
 突然、特訓だと言い出した上司にワセトは困惑する。
「いや、ユーリを振り向かせるためには、もっともっと強靭な肉体を手に入れなければならない。
これから毎日筋トレ、腹筋、腕立てだ! 筋肉をより美しく見せるために日焼けサロンにも通うぞ!」
「日焼けサロン……」
「そうだ、ワセト。ハットゥサにある日焼けサロンを予約しろ。
エジプトと違ってヒッタイトの太陽の光は弱いからな!」
「日焼けサロン……ハットゥサにありますかね……」
 困った上司に振り回されることは、いつの時代も一緒のようである……。



***

 ラムセスが筋トレと日焼けサロン通いを始めて3か月がたった。
 体にオイルも塗ってボディビルダーのような体系になっていた。
 ハットゥサはもうすぐ雪の季節。
 ラムセスのオイルをたっぷり塗ったムキムキの筋肉はヒッタイトの天の下、異常な輝きを放っていた。
 通り過ぎる者、誰もがラムセスを振り返った。
 強靭な肉体と、こんがり焼けた肌を手に入れたラムセスであったが、ユーリが振り向いてくれることはなかった。
「おかしい、俺には何が足りないのだろう……」
 ラムセスは天河のコミックスを読み直す。
(どうしてコミックスがあるのかツッコミ禁止)


「わかったぞ……俺に足りないものが……」
「どうしたんですか? ラムセス様?」
 傍に控えていたワセトが不思議そうにたずねる。
「花だ。俺には花が足りないのだ。ほらみろ! ムリシリは大事な時にはいつもユーリにかけて
百合の花を背負っているではないか!」
 ラムセスはコミックス27巻をワセトに見せる。


天は赤い河のほとり(27) (フラワーコミックス)より

「はぁ……」
 上司に理解を示せないワセトは生返事を返す。
「ほら見ろ、ここにもユーリ(百合)を背負っているではないか!」



天は赤い河のほとり サウンドシアター(4)より

「俺には華が足りないのだ。花が! ムリシリが百合を背負うなら、俺はもっと豪華な花を背負うぞ!
薔薇だ。ワセト、薔薇を持ってこい。俺はいつも薔薇を背負ってやる!」
「えええっ!」
「ユーリをはじめヒッタイトの奴らの前に現れるときには必ず背中に薔薇を背負うんだ。
ワセト、俺の後ろでいつも薔薇を持ってろ! 命令だ!」
「そ、そんなぁ~」
 破天荒な上司、ラムセスに振り回され、ワセトは今後いつも彼の後ろで薔薇を背負うことになったのである。
 薔薇男ラムセスの誕生となったのです。


~おまけ~

 薔薇を背負い数日たった寒い冬の日のこと――。
 ワセトはいつものように花屋で大量の薔薇の花を購入し、ラムセスの後ろで控えていた。
 上司の命令とはいえ、毎日のように彼の背後で薔薇の花を持ち続けているのは大変なことであった。
本来の業務に差し支えが出始めていた。
 今日は朝から雪がちらつき、さすがのラムセスも上半身裸ではなく、一枚薄手の上着を羽織っていた。
 ワセトは上司の背中を見てあることを思いつく。薔薇を手にそっとラムセスの背中に近づいた。
「ん? 何をしているんだ? ワセト」
 ラムセスは背中に何か変な感覚を覚えた。
 羽織っている上着の背中に何かペタペタと張り付けられているようだった。
 徐々に背中が重たくなってゆく。
「今日はこれから別の仕事がありまして……ラムセス様の背中で薔薇の花をお持ちすることができないのです。
だから、今日はこうしてガムテープで薔薇の花を背中にお貼りしようかと思いまして……」
 ワセトはガムテープでラムセスの背中に薔薇の花を次々に貼り続ける。
 前から見れば薔薇を背負っているように見える。背中はガムテープでベタベタであったが……。
「そうか、いつもワセトには世話をかけたな。ワセトも忙しいからな。今日はこれで行くよ」
 ガムテープで貼りつけた薔薇でも、上司ラムセスは納得してくれたらしい。
「いってらっしゃいませ。ラムセス様」
「おう!」
 ラムセスは上機嫌に片手を挙げて返事をした。
 ワセトはしばらくラムセスの背中を見送る。
 ガムテープで貼った薔薇の花がぽとりと一輪地面に落ちた。
「あ……薔薇の花が……」
 ワセトはラムセスの背中から落ちた一輪の薔薇の花を拾う。
 茎にはガムテープがついていた。少しベトベトする……。
 薔薇の花が落ちたことも知らず、今日もウキウキとユーリの元へ通うラムセスであった。



♪おわり


【最後に感想】
表紙のカラーラムセスが美しいですね。
デジタルなカラーもいいですけれど、私は篠原先生のアナログなカラー表紙が大好きです。
本当に、心が落ち着きます。
天河宝塚を観に行って以来、まだまだ宝塚モードなねねですが、
この偽イシュタル編を、是非宝塚で上演して欲しいですね。
あと、ザナンザ皇子のエジプト婿入りのシーンも!
二つとも大好きなお話です。
それでは、お読みいただきありがとうございます。




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