***20号続き***


どこの国にも侵されず、また侵さず、戦いのないオリエントを築くのことがカイルの理想の治世。
そのカイルの理想を共に築くと誓ったユーリ。信じ合える人がいる。助け合い、共に愛し合える人がいる。
険しい道のりも、共に歩めるなら、それは困難ではない。同じものを見つめて、
一緒に歩いて行けるなら、それだけで十分に幸せなのだ。
 その険しい道の障害には、ナキア皇太后がいた。ナキア失格の確実な物件証拠となる書簡。
 ―――その書簡を、ウルヒがねらっているのである。ナキア皇太后という障害物を越える前に、
ウルヒという落とし穴が、カイルとユーリには待ちうけているのであった。
 ウルヒは女官の一人を操り、宮廷を探らせることにした。女官はウルヒの命令どうり、
エジプトから、ナキア皇太后の情報が漏れていないかこっそり探っていた。
「ウルヒ様、ご報告です。イシュタル様は、エジプトから書簡を持って帰ってきたようです。
ナキア皇太后様の印章入りの書簡を……」
 生気のないガラス玉のような目をした女官は、ロボットのように喋った。
「やはり、ナキア様の書簡を持ちかえっていたか…。おい! その書簡のある場所に案内しろ!
私が直接奪いに行く。案内するんだ」
「はい、ウルヒ様」
 女官はみんなが寝静まると、ウルヒを書簡のある場所まで案内した。
「あの箱の中です」
「そうか、よし! いただきだ!」
 ウルヒはそうっと部屋の中に入り、箱を手に取った。
(やった! これでナキア様は安泰だ!)
 そう思うや否や、
 ―――ガッシャ―ン!
 急に天上から柵が降りてきて、ウルヒは鉄格子に囲まれた。ハッティお手製の固い鉄格子である。
「な、何だこれは!」
 書簡の入った箱を持って呆然とする。
「やったぁ! 引っかかったぁ!」
 明かりがパッとつき、ユーリが飛び跳ねながら出てきた。
「やったぞ! ウルヒを仕留めたぞ!」
 カイルも側転しながら(←なぜ側転?笑)部屋に入ってきた。
「ど、どうして……」
 ウルヒは鉄の柵を押したり引っ張ったりしたが、ビクともしなかった。
「よくやったわ! 女官さん。あなたのおかげよ」
 ユーリはウルヒのいいなりになった女官を抱きしめた。
「いいえ。お役に立てて嬉しいですわ! これもユーリ様とワクチンのおかげです」
「じょ、女官よ! なんでお前はイシュタルの言うことなんて聞いているんだ!
私のいいなりではなかったのか?」
 ウルヒは魔力で自分のいいなりにしたはずの女官が、ユーリのいうことを聞いていたのでビックリしたのだ。
「残念でした。もう、ナキア皇太后やウルヒの魔力には引っかかりませんよ−。
なんと! イル=バーニがハットッサ医科学研究所でナキア皇太后の魔法の水に対するワクチンを
発明してね、それが効くか効かないかは半信半疑だったけど、宮廷の側近は、
みんなこの予防接種を受けてるのー!」
 ユーリは嬉しそうに言った。
(すごいぞイル! 文系(書記)だけでなく理系もできるのか!)
「そうですわ! みんなワクチンのおかげです!」
 女官はウルヒに操られたふりをしていたのである。ガラス玉の瞳も、実を言うとコンタクト。
ウルヒを陥れるための縁起だったのである。
「うぬぬ。悔しいがナキア様の書簡さえなくなればどうでもいいのだ! 今すぐ破壊だー!」
 ウルヒは箱を開け、ナキアの書簡を取りだし床に叩きつけようとしたそのとき……。
「ごめんねー。中の書簡も偽者なの。でもね、その書簡はある意味、特殊な書簡なんだ」
 ウルヒの手が止まる。
「特殊……?」
「そう! その書簡の字、読んでみて」
 ウルヒは小さな書簡も文字を声をだして読み上げた。

『これは不幸の書簡です。この書簡を一週間以内に十人の人に送らないとあなたは不幸になります』

「ひいいいい、これ以上不幸になってたまるかー! 誰に書簡を送ろうか……。
うーん、ナキア皇太后とジュダ殿下とアラスカのお父さん、お母さん、ばあちゃん。
(↑いいのか? 不幸になって…笑)
それとえーっと、他に友達はいない! どうしよう!」
 神官であるゆえ、ある意味ウルヒは迷信深いのだ。こういった不幸の手紙の類はすぐに信じてしまう。
ウルヒはパニックであった。
「さてさて、ウルヒの処分はどうしようか……。とりあえずこのまま閉じこめておくかな。
何か適当な処分はないか?」
 カイルは側にいたキックリや三隊長に相談した。
「皇帝陛下、丸坊主の刑というのはどうでしょう? 坊主にしたあとのウルヒの髪は私が……」
 ミッタンナムワがおずおずと提案した。
「おお、丸坊主のウルヒ! 想像できなくて面白いな! もちろん髪はミッタンナムワ、お前にやろう!」
「ありがとうございます。皇帝陛下!」
 ミッタンナムワの頬にはえくぼがくぼみ、とっても嬉しそうであった。

 ―――次号、ウルヒ坊主頭披露。乞うご期待!(爆)

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き、キックリが二股…、そんなのイヤー。
なんだかキックリらしくないって思うのは私だけ?
第一いいのか双子たち……。皇帝陛下は一人を愛するって言ってるのにー!
とうとう、天河本編にもマジな? パロが……。ひぃ〜!
緊張するとカイルの指が冷たくなる。あのシーン良かったですね。
「おお! これでこそ、天河愛! と思ってしまいました」
(天河愛=新種の単語です♪)

エジプト戦では、ラムセス再登場を願っています!