***番外編1(キックリの1日)続き?***





 あははははー、久しぶりですね。続きパロ。番外編なんだから、
続きも何もないと思うんですけれど、読んで下さる方が一人でも
いらっしゃる限り、ねねはやりますよっ(^o^)ノ
 今まで続きパロの書き出しは、その号のあらすじを数行で書いて
いたんですけれど、実はこの「あらすじ」ねねに読解力と文章力が
ないのか非常に時間をかけて書いていました。
あらすじ5、6行に30、40分かかることしばしば。続きパロの内容は
華厳の滝を水が流れるようにドォーッと書けるんですけれど
毎回毎回あらすじに悩まされました(@_@)。
さあ……今日も悩むぞ(笑)。



***
番外編1「キックリの1日」。
主要天河キャラたちみんな出演していますね(文字のみもいるけど)。
まずは今回主役のキックリ、妻たちより早く起きて馬たちの調教。
お局と化した女官長ハディは、ユーリ宛ての書簡の整理。その中に
ラムセスからのエジプトの招待状も含まれているが論外。
カッシュとミッタンも健在だけどルサファがやはりいないのはちと寂しい。
カイルとユーリの長男デイルとキックリの双子の息子は、いちゃつく皇帝と
皇妃を覗き見。さらにそれを覗き見しているイル=バーニ、いとおかし(笑)。
と、まあこんなところでしょうか。久々に続きパロを書くために
注目したところは……

もちろん、ラムセスからの書簡!
(あんまり時間かかんなかったな・笑)

***

「こんなもの捨ててしまいなさい!」
 お局ハディはユーリの目に触れさせることなく、ラムセスからの書簡を、
厨房のゴミ箱の中に処分してしまった。
 ――その夜、草木も眠る丑三つ時。
 ゴミ箱から異様な赤ピンクの光がこぼれていた。ゴミ箱の中でラムセスの書簡である。
ピンク色の光を発し、妖しい輝きを放っていたのだ。
 これは何度書簡で取り次いでも、返事をくれないヒッタイト王宮への
ラムセスの最後の手段であった。粘土板に魔法をかけておいたのだ。
 ピンク色の光を放つ粘土板はゴミ箱から幽霊のように浮き上がり、ちいさな金属音を
たててバリンと割れた。砕けた破片は生命は宿ったようにうようよと動き、集まり、
とある形を作った。薔薇の花の形である。薔薇は砕ける前の粘土板と同じく
ピンク色の妖しい光を発し、暗闇の台所でぼうっ光っていたのだった。
 そこへパターン、パターンとスリッパの音が鳴り響いた。
誰かが厨房へ近づいてきたのだ。
「お腹空いたなぁ、眠れないや。ヨーグルトかなんか食べたいなぁ」
 厨房に入ってきたのは、ヒッタイト帝国の皇妃ユーリであった。
4人の子持ちの母でありカイルの妻であり皇妃であるユーリは、熱エネルギーの
放出が高く、夜中に厨房の冷蔵庫をあさることがしばしばあったのだ。
「あら、何これ光ってる……」
 ユーリはピンク色に光る粘土板のなれはてに気づき拾ってみた。
「これは……薔薇?……うっ!」
 光を発しているものが薔薇だと認識するや否や、ユーリは厨房の床にバタリと
倒れてしまった。薔薇のトゲにはある魔法がかかっていたのだ。
 刺された者は3000年の眠りにつくというラムセスの魔法である。

 次の朝――
「きゃあああ、イシュタルさまがっ!」
 メシ炊き女官Aの悲鳴が王宮に響き渡った。
薔薇の花を手に持ったまま倒れたユーリを発見したのだ。緊急に医師や薬師が
呼び集められ、ユーリの処置を施した。しかしユーリにはなんの外傷も見当たらず
ちゃんと呼吸もしており心臓も動いていた。医師たちはただ眠っているだけだと
答えを出した。
「ユーリは夢遊病の気があったか? 皇妃が台所で寝るなんて
ヒッタイト歴史上はじまって以来だな、きっと」
「ユーリさまは大物でいらっしゃるから……」
 カイルとイル=バーニは大きく笑った。
 きっと昼には目覚めるだろうと思い、ユーリは寝室に運ばれた。
だが、夜になっても次の日の朝になってもユーリは目覚めないなかった。かといって
呼吸もしてるし、心臓も正常に動いている。眠り続けるユーリに、カイルをはじめ
国中は大騒ぎ。なんとかしてイシュタルさまを目覚めさせようと、医師たちは
最善をつくしたが、彼女が瞼を開けることは決してなかった。
「ふふふ、ダメだぜ。俺が魔法をかけたんだからな!」
 天から聞き覚えのある懐かしい声が降ってきた。ヒッタイトの民たちは空を
見上げると青空に蜂蜜色の顔が浮かんだ。瞳はオッドアイである。
名を言うまでもない、エジプト将軍のラムセスであった。
「ユーリはずっと眠り続けたままさ。魔法を解く方法はひとつだけある。
王子様のキッス。俺がキスすればユーリは目覚めるのさ!」
 ラムセスは高笑いしながらカイルに言った。
「ユーリの唇を今更お前などに渡すものか! カッシュ、ミッタンナムワ!
王宮の警備を厳重にするのだっ!」
「ふん、そうくると思ったぜ。こちらにも考えがある。ユーリの唇を渡さなければ、
ヒッタイト王宮を薔薇のいばらで覆ってやる! はーははは!」
 悪の帝王ラムセスの笑いがヒッタイト中に響くと、彼の顔を空から消えていった。
 さて、ラムセスも言ったとおり王宮はどんどんいばらに覆われていった。
ほどほどの所でラムセスはユーリを迎えに行こうと思ったが、なにせ10人の側室と
16人の子供がいる大家族。一家の大黒柱を失うわけにはいかないと、妻たちは
ラムセスを家に閉じ込めた。哀れラムセスは一生エジプトから出ることが
できなくなってしまっていたのだ。魔法は効力を発揮しているが、ユーリのところへ
行けないとあっては何にもならない……。
 いばらに覆われたヒッタイト王宮は、日に日に権力が衰え、ユーリと一緒に
深い眠りについた。ヒッタイトという国は姿を消し、いばらに覆われた王宮だけが
静かに年月を刻んでいった。

 ――21世紀初頭。
 トルコ中央部で重大な遺跡がみつかった。
 いばらにつつまれた王宮である。学者たちは伝説のヒッタイト王宮だと推測したが、
厚いいばらに囲まれ、発掘が思うようにいかなかった。発掘どころか、無理に
いばらを撤去しようとすると必ず何か災いが降りかかるため、呪いの王宮とも
言われていたのだ。
 呪いの王宮には一つの伝説があった。王宮の中には財宝と一緒に美しい姫が
眠っていると……、その姫は王子様のキッスを待っていると……。
 その噂を聞き、世界中の若者がいばらに包まれた王宮に集まった。だが、誰も
厚いいばらの壁をやぶることはできず、王宮はそのままであったのだ。
 2002年、日本。
 天河本編でもすっかり忘却の彼方にある氷室聡志くん20歳。
ユーリの神隠し冤罪から彼の女運は悪く、彼女はさっぱりいなかった。
王宮の姫の噂を耳にした氷室くん。どんな虫が騒いだのかわからないが、
彼女欲しさにトルコのいばらの王宮まで行く決心をした。
 飛行機に20時間揺られて着いたトルコ、ボアズカレ。
 氷室くんがいばらの王宮の前に立つと、あらら? いばらはすべてなくなった
ではありませんか!
 氷室くんは不思議に思いながら王宮に進んでいく。
 王宮の奥深く、身分の高そうな者がいたと思われる寝室の前まできた。
 氷室くん、ドキドキしたがそうっとドアを開けてみると、部屋の中央には
噂の姫が眠っていた。黒髪の姫である。
「これが噂の眠り姫か……」
 氷室くんは眠り姫に近づく。
「ん? 夕梨、夕梨じゃないか?!」
 姫の顔は見覚えのあるものだった。数年前、神隠しにあった夕梨であったのだ。
 ――パチリ。ユーリは3000年の眠り魔法が解け瞼を開けた。
「ん……? 氷室?」
 3000年ぶりに目覚めたユーリは懐かしい名前を声に出す。
「やっぱり夕梨、何してるんだこんなところで?」
「何って……」
 ユーリは軽く下をうつむいて今までのことを思い出した。
 ナキア皇太后に古代に連れて行かれて、カイルに会って、タワナアンナになって
夜中にお腹が空いて台所に行ったら薔薇の花が落ちていてそれで……。
「何でもないわ。ああ、よく寝た。寝すぎて背中が痛い……」
 ユーリは大きく背伸びをして腰をまわしてボキボキ骨を鳴らした。
「お腹もすいたな、ねえ氷室、モスに連れてってよ!」
 ユーリはすべて思い出したが、すべて心の中に封印することに決めた。
 まだ自分は若い。未来があるのだ!
「よし! 約束したっけな! 連れてってやるぞ!」
 氷室は彼女が戻ってきてくれて?たいそう嬉しいようであった。
「わーい!モスのテリヤキチキンバーガーとポテトとコーラが飲みたいな!」
 ユーリは黒い瞳を輝かせて嬉しそうに言った。
「お安い御用さ!」
 氷室と夕梨は手を取り合って、モスを目指し王宮をあとにしましたとさ。


HAPPY END♪

***
 ははは、長くなりすぎちゃった。
続きパロだけど童話シリーズ「眠りの森の美女編」にもできますね。
久々だから疲れたー。次の番外編も楽しみにしています。



[BACK]