***天国からこんにちは〜ウルスラ編〜***



 ユーリ様の 無実が晴れるように・・・そう思い ウルスラは 非業の死を遂げた。
ウルスラは アルヌワンダ1世暗殺の冤罪を被った。自分の死を引き換えにナキア皇太后の失脚を願い
自ら命を絶ったのだった。
 ユーリの無実は晴れたが、ナキア皇太后は・・・。
 残念な事にナキア皇太后の地位はそのままであった。ナキアは 自分の侵した罪をすべて
側近であるウルヒに着せ 保身を図ったのだ。
「く、悔しいわ。どうして!どうして あんな女が まだカイル様の治めるヒッタイト帝国の
タワナアンナなの?ユーリ様のアルヌワンダ2世暗殺の疑いは晴れたけど
元凶である ナキアがそのままでは何にも解決してない!
私の死は 一体何だったの?!」
 ウルスラは 自分の死により ナキア皇太后を失脚に追い遣ることができれば
命など 惜しくはなかった。ナキアが失脚し ユーリ様がタワナアンナに
なられたヒッタイト帝国は きっとすばらしい国になるだろう。
何処の国にも侵されず また何処の国も侵さず、農民も 商人も 職人も 誰もが安心して暮らせる 
理想の国をお二人は築かれるに違いない。ウルスラはそう思い 命を捨てる覚悟をした。
「ナキア皇太后を失脚に追い遣れなかったのは 死ぬほど悔しいけど
(もう 死んでいるが・・・。)天国に来てしまっては どうにもならない。
あとは ユーリ様やカイル様 そして私の愛しいカッシュが なんとかしてくれるはずだわ。
それよりも!もう一つ 私のやり残したことが!!!」
 ウルスラは 天国から下界を見下ろした。
「ユーリ様が 日本という国にお帰りになる前に ユーリ様とカイル様を 結ばせなくては!」
 辺境の貧しい村の娘であるウルスラは 古代の花形職業と言われる 宮廷女官になることができた。
古代の3Kと言われる 「きれい カッコイイ 高収入」のおいしい職だ。
イル=バーニ様からも 仰せつかわったように なんとしてでも カイル様とユーリ様を 
身も心も一つになってもらわなくては!これは 私の使命よ。そんなことも出来ないようじゃ
辺境の貧しい村のミスコン女王「ウルスラ」の名に恥じるわ!
(そんな女王であることのほうが恥ずかしいような気がするが・・・)
 ウルスラの もう一つの大事な心残りは ユーリとカイルをHさせることであった。

「さて、どうしたらカイル様とユーリ様を 結ばせることが出きるかしら?
お二人とも 愛し合っているのに・・・。ずっと前の お風呂でGO!は
失敗に終わったわ。こうなったら ナキア皇太后の薔薇色の水でも
盗んでくるしかないかしら?あっ でもカイル様は 神官だから
皇太后の魔力なんて 効かないわよね。どうしよう。」
 ウルスラは 三途の川のほとりにしゃがみ込み 考えた。
 ふと下界を見た。下界のオリエントでは 我が国ヒッタイト帝国を 西のアルザワと東のウガリットが
挟み撃ちにしていた。ユーリはアルザワ戦に カイルはウガリット戦の兵を率いている所だった
 またもや ナキアの悪巧みが 2人が王宮を 離れているときに企てられていた。
ユーリの現れた泉を 埋めてしまおうとしているのである。ユーリは 日本へ還れなくなると
分かると 愛馬であるアスランを ヒッタイトへ走らせた。
「た、大変!ユーリ様が 日本へお帰りになっちゃうわ!せめて カイル様と結ばれてから
日本に帰って頂かないと 私は死んでも死にきれませんわ!ユーリ様ぁ〜〜〜〜〜。
お帰りになっては行けません!!!!!」
 ウルスラは 必死で 天国から叫んだ。黄泉の国の声が ユーリやカイルには
聞こえるわけはない。それに 死んでしまっては 生を受けている者に
手だしはできないのだ。
「どうしよう・・・。なんかいい方法、なんかいい知恵・・・・。あーーーーダメ!
辺境の貧しい村の娘の頭では 何にも思いつかないわ!」
ウルスラは 険しい顔をした。難しい顔をしても 美人は美人であった。
ふと ユーリのいるアルザワとは反対の ウガリットの方を見た。すると 皇帝陛下が
ラムセスから狙われているではないか!ラムセスの弓が カイルに向けられている!
「ど、どうしよう・・・。何にもできないわ。」
ウルスラは 三途の川のほとりで右往左往していた。アルザワの方を見ると
ユーリ達は ハットゥッサに向かい 赤い河を渡ろうとしている。
「ユーリ様!日本になんてお帰りになっている場合じゃありません。
皇帝陛下が・・・皇帝陛下が危ないです!!!!!」
ウルスラは ユーリ達に向かって叫んだ。自分の声は聞こえないと分かっていたが 
ユーリに向けて自分の言葉が届くように じっと祈りを捧げた。すると・・・
『パリン』
 ユーリの皇帝陛下が別れるときに渡した 額飾りが割れた。
ウルスラの思いが 念派となってユーリの元に届いたのである。
 皇帝陛下のくれた額飾りが 急に割れた・・・。ユーリは カイルの身に不安を覚えた。
少し考えたユーリは アスランをハットゥッサではなく ウガリットへ向けて走らせた。

「や、やった!私の願いが通じたのね。これでユーリ様は 我が国にずっとお残りになるわ!
ユーリ様のご家族に会えないのは おかわいそうですけれど きっと皇帝陛下が
幸せにしてくれるはず!」
 ウルスラは 願いが通じて嬉しかった。この国に残るとなれば・・・・・。
ナキア皇太后、エジプト戦・・・沢山試練はあるけど とりあえずは・・・よね。
 ウルスラは嬉しさのあまり 三途の川に飛びこんでしまおうかと思った。

下界を見ると ユーリ様とカイル様が ハレブの町でとうとう!
「まあああああ!!!!」
ウルスラは 天国から身を乗り出して 下界を見た。
すると後ろから
「ウルスラ、覗きなんていけないよ。」
ザナンザ皇子の声であった。ザナンザは 後ろから猫づかみのようにウルスラのくびを
つかみ ずるずると引きづり下界の見えない場所に ウルスラを引張って行った。
兄思いのやさしいザナンザ皇子は カイルとユーリを二人っきりにしてあげましたとさ。