***シャラのお見合い***


 ヒッタイト正妃付き宮廷女官、シャラ26歳。双子のリュイは早々とキックリとくっつき、
今だシャラは独り身であった…。古代にて、この年齢で独り身とはかなりの特殊なこと。
寿命も短いため早々結婚し、早くに子供をもうけているの普通だった。
 シャラ自信にも多少の焦る気持ちはあったが、焦っても仕方ないこと。自分に見合った人が
早くに現れるか、遅くに現れるかの問題で、決して妥協はしたくない。そうは思っていても、
まわりは黙ってシャラを見守っていてはくれない。
 父タロスは「カイル陛下とユーリ様が即位なさったおかげでヒッタイト帝国は安泰なのだから、
今度は、シャラ、お前が安泰する番だ」と結婚を急かす。カイルやユーリもやたらと
お見合いの話を持ってくる。「シャラにも幸せになって欲しいから…」と2人口を揃えて言う。
リュイのうんだ双子の兄弟たちなんて、私のこと「シャラおばさん」と言う。
まあ、しょうがないことなんだけど、同じ顏して同じこといわれるとなんだかむかつくのよね。
それもリュイの子は髪型を抜かせばキックリにうりふたつだから、キックリに
言われているような気もするのよね! 
 『全く! 私は今のままでも十分に幸せよっ!余計なおせっかいよ!』
……と言いたいところだけど、みんな、私のこと心配して
言ってくれているんだから、そんなこと言えない……。
 だからと言って、妥協なんてしたくない。身の回りには独身3隊長がいるが、
3隊長はちょっと勘弁!
 ミッタンナムワ…。私はハゲは嫌いだわ。子供にハゲの遺伝子が移ってしまう。
(ハゲの方々ゴメンナサイ)
 カッシュ…、未だにウルスラのことを忘れられないよう。ウルスラの髪のバンダナを
まだ額に巻いている。それにカッシュは女姉妹が多いと言う…。小姑がいっぱいいる家に
嫁ぐなんてまっぴらゴメンだわ! 
 最後にルサファ、これも問題外。ユーリ様への愛はまだ覚めぬよう。
なんだかかわいそうになっちゃうくらい。私の入る隙間なんて1nmもないでしょ!
(nmは10のマイナス6乗)
 周りからの焦りと自分の中からの多少の焦りで、シャラもいい人がいたら早くに
落ち着きたいと思っている今日この頃であった。

 ある日、カイル陛下にシャラは呼ばれた。「なんでしょう?」とかけつけると、
またもやお見合いの話だ。「ゲッ!」と心の中で思ったが、相手がカイル陛下では断るわけにも
いくまい。素直に見合いの話を受けることにした。カイル陛下は今度はいい人だからと言う。
なんでもカイルの遠縁にあたる親戚の友達の息子とか…。結局私から見れば他人なんだけどね。
今度、王宮の警備官としてハットッサに来るという。先方も、もちろん独身で、王宮勤めの
信頼ある女性との結婚を望んでいるとのこと。カイル陛下は「絶対にいい人だから」と
念を押すが、シャラの心の中では「どうやって断ろう」とそればかり考えていた。
 だいたいシャラは見合いは好きではない。自然に出会って、自然に恋愛して、自然に結婚と
いうのがシャラの夢らしい。見合いのことを考えるとシャラは憂鬱であった。

 そうこうしているうちに見合いの日が来てしまった。
 (ヤダヤダヤダ、リュイに身代わりに行ってもらおうか? どうせ双子だわかりゃしない)
 と思ったが、リュイがOKしてくれるわけない。ユーリ様もこのお見合いにははりきっていて、
ユーリ様ご自身の衣装を着せられて、見合いの場である王宮来賓室に連れこまれた。
 王宮来賓室のふすまを開けたその先には…(何故ヒッタイト王宮にふすまが…)
 ―――なんと! シャラ好みの美男子が立っていたのであった。
カイル陛下には劣るが、整った目鼻立ち、逞しい肉体、清潔感もあり、これは上物!
シャラは心の中で拍手をした。
 彼の名前はウィン。お見合いの場には、彼の幼馴染というマックという、
これまた美男子が付き添っていた。
 お見合い会場で少し話もしたが、話からは今までしたお見合いの中では一番良さそうな人だった。
趣味はパソコンと乗馬。今度遠乗りでも行きましょうと誘われた。
 もはやシャラの目はハートマーク。遠乗りでも天国でもどこへでもついていきますわ!
状態だった。性格的にもシャラと合い、順調な交際を進めていった。
 (ミッタンナムワのようにハゲてないし、カッシュのように小姑がいっぱいいるわけでもない、
ルサファのように、他の女に気を取られているわけでもないし、これはかなりのヒットかもっ!
ウィンのほうも私を気に入ってくれているようだし…。このままいけば私もやっと幸せになれるわ!)
 シャラはそう思うとルンルンであった。紹介してくださったカイル陛下にもお礼を言わなければ!
妥協しなかったかいがあったわ♪
 今日も仕事が終わったらウィンとデート♪ そう思うと仕事も辛くはなかった。ご飯のしたくも
お掃除ルンルン♪ モップを持って軽やかにダンスを踊りながら掃除をしていた。
 ウィンも今日は6時には仕事が終わると言う。そうだっ! 王宮警備官の控え室の掃除でも
しておこう! どうせ今日は暇だし……。
 シャラは、モップとほうきを持って踊りながら王宮警備官の控え室まで行った。
 控え室には勤務中のせいか誰もいなかった。
 「今のうちにきれいにお掃除〜♪」
 持ってきたモップでゴシゴシ床掃除をしていたそのとき……、
 『ゴトン!』
 物音がした。音がする方をみると……、
 隅にある、ちょうど人が2人ぐらい入ることのできるロッカーがあった。
どうやら、音はそこからしたようだ……。
 シャラはロッカーの前まで行ってみた。なんだかロッカーの中から気配がする……、
なんだろう? と思い、ドキドキしたが、シャラはロッカーの取っ手に手をかけた!
 ―――ぎぃぃぃぃ。
 ロッカーの扉を開けると…、
 ―――狭いロッカー中には、ウィンとその幼馴染のマックがいた。
 どういう状況でいたかは、もはやシャラの口からは言えない。

 
 その後、王宮では同性愛は禁止なので、ウィンとマックは首となり、故郷に仲良く帰って行った。

 ―――シャラはショックだった。
 せっかくいい人が見つかったと思ったのに…。○モだったなんて…。
そういえばいい男は○モの毛があるって言うわ! これからはいい男にも気をつけなくっちゃ!
 私はタバルナ、タワナアンナの側近女官のエリート。妥協は絶対にイヤ!
人を見る目は充分にある。ただ運命の人が現れないだけ……! まだまだ女はこれからよっ! 
と現代女性の鏡のようなシャラの戦いは、まだまだ続くようであった……。


♪おわり