***外で遊ぼう!***


「たまには童心に返って、昔の遊びでもしよう!」
 と、ある日の元老院会議での鶴の一声。議長を始め、会議に参加していたメンバーが
キョトンとしているのも無理はない。
「この頃の若い者は、プレステ2だのインターネットだの家の中に閉じこもる遊びばかり
しているではないか! ここは皇帝である自分達がお手本となって昔ながらの外で健康的に、
遊ぶことを教えてやろうではないか!」
「そうね、カイル。今はお受験の為に塾通いしている子がいっぱいいる時代だもんね。
たまには外の空気を思いっきり吸って、泥んこになって遊びまわるのもいいかもしれないね」
 ユーリを始め、3姉妹やキックリも賛成のようだ。しかし、昔から外で遊ぶよりも
読書しているほうが好きだったイル=バーニだけは気の進まなそうな顔をしていた。
「そうと決まったら、王宮の中庭に集合だ! 早速『だるまさんが転んだ』をやるぞっ!」
「おー!」
 そう叫ぶ声の中には勿論ラムセスも混じっていた。
 滅茶苦茶、張りきっているカイルはBダッシュ(スーパーマリオ参照・笑)で
中庭までかけて行った。

 だるまさんが転んだをするメンバーは、カイル、ユーリ、3姉妹、キックリ、イル、ラムセスの8人。
カイルは永遠のライバルであるラムセスがその場にいたことに、大変腹を立てていた。
「何でお前がここにいるんだ! ここはヒッタイトの王宮だぞ! エジプトに帰れっ!」
「何をおっしゃる! 壁に耳あり、障子に目あり、お祭り騒ぎにゃこのラムセス様を欠かしてもらっちゃ
困る! 仲間に入れてもらおうと思ってエジプトから飛んできたんだ!」
「お前なんか仲間に入れん! さっさと出て行け!」
「だめよ、カイル! 仲間はずれにするなんてダメ! 除け者にするなんてお手本となって
遊ぼうと言うのに、そんなことしちゃダメよ!」
 最もであるユーリに一声にカイルは逆らえず、しぶしぶラムセスも仲間に入れることにした。
「さあ、鬼はどうやって決めます?」
 ハディはみんなに鬼をどうやって決めるか聞いた。
「ここはオーソドックスにじゃんけんでいいんじゃないか? 意義のあるものはいないな。
ではじゃーんけーんポンっ!」
 8人は一斉に手を出した。みんな相談したかのようにカイルの他はみんなパー。
一人だけグーを出したカイルは最初の鬼をやることになってしまった。
 じゃんけんをしようと言い出した者が負けるということはよくあることである。
「だるまさんが転んだ!」
 カイルは木の影からパッと顔を出した。
 ピタっ! みんな人形のように固まっていた。
「だるまさんが転んだ!」
 再び振り向く。カイルは少しラムセスの右腕が動いたように感じた。
「ラムセス! お前、今少し動いた!」
「なんだとっ! 動いてなんかない! よく見てろ! 自分で震えてたんじゃないか?」
「そんなことはない! 今、少し動いたぞ! 大人しく私のところに来て手をつなぐんだ!」
「俺なんかよりもキックリの頭のほうが、大きく動いてたぞ! 贔屓だ! 日頃の恨みだろう」
「そ…そんな…。私は動いていません」
 ビクビク言うキックリ。
「往生際が悪いぞ! ラムセス。人を巻き添えにするなんて!」
「何を! 俺様のルックスに嫉妬してわざと俺を捕まえようとしているんだろう!
お前こそ根性悪いぞ!」
 2人は睨み合ったまま一向に譲らない。これではどうしようもない。
「もー、二人とも! だるまさん転んだはやめやめっ! 他の遊びしましょう」
 ユーリは2人が喧嘩になる前に止め、今度は女の子の遊びの代表である、
花いちもんめをやろうと提案した。

 グーパーで2組に分かれた。
カイル、ユーリ、シャラ、キックリグループラムセス、イル、ハディ、リュイグループである。
「じゃあまず私達からね」
 ユーリ達のグループから先に歌い出すことになった。

「かーって嬉しい花いちもんめ♪」
「まけーてくやしい花いちもんめ♪」
「となりのおばさんちょっと来ておくれ!」
 ハディの眉がピクッとした。
「お、おばさんですってぇ〜!」
「姉さん! 別に姉さんのことおばさんって言ってるわけじゃないわよ。落ち着いて!」
 同じグループのリュイは、ハディを沈めようと必死だった。
「そ、それもそうね…ごめんなさい」
 一時中断したが、そのまま続けられた。
「おにーがイルから行かれない!」
「えっ! 鬼ってイルだったの?」
 幼少の頃歌っていた花いちもんめにイルが登場していたとは、誰も考えてもいなかっただろう。
「ユーリ様! くだらない発見しないで下さい。遊びが中断します」
「そ、そうね。続けましょ」
「お布団がぶってちょっと来ておくれ!」
「お布団ボロボロ行かれないっ!」
 ラムセスが人一倍大きな声で言った。
「そうか…、エジプト財政は布団もボロボロなほど赤字なのか…」
 遊んでいるときにもやはり政治は忘れられないカイルのようだ。
「なんだと! 大きなお世話だ!」
 またもや喧嘩がはじまりそうな所を止めたのはユーリだった。
「おかーまかぶってちょっと来ておくれ!」
「おかーま底抜けいかれないっ!」
「ええっ! おかまかぶってって、もしかしてオカマぶって来るってこと?そんなのイヤー!」
 またもやどうしようもない発見をしているのはユーリであった。
「鉄砲かついでちょっと来ておくれ!」
「鉄砲たまなし行かれないっ!」
「ユーリ様、鉄砲伝来は西暦何年ですか?」
「うっ…」
 外で遊ぶことよりも勉強の方が好きなイルの質問にユーリは絶句していた。
「あのこが欲しい」
「あの子じゃわからん」
「この子がほしい」
「この子じゃわからん」
「相談しよう」
「そうしよう」

ゴソゴソゴソ。両グループとも相談した。
「きーまったっ!」
「イル=バーニが欲しい」
「ユーリが欲しい」
 カイルグループはヒッタイトの頭脳であるイル、ラムセスグループはラムセスの独断で
ユーリが欲しいと言った。
 一方、イル=バーニとユーリは…。
 ユーリは勿論、ラムセスのところになんか行きたくない。ここはじゃんけんで絶対勝たなくては…。
イル=バーニは、カイルに使える忠臣。なんとかラムセスグループから脱出したいのは言うまでもない。
じゃんけんで負けなくては…。両者の利害は一致しているようだ。
 じゃんけんの結果、ユーリが勝ちイル=バーニが負けた。そのまま続けて花いちもんめを
やりつづけたが、かわいそうに…ラムセス…。せっかく仲間に入れてもらったのに最後に残されてしまったのである。

♪おわり