ラムセス(しんのすけ) 美人でナイスバディのおねーさんと薔薇の大好きな幼稚園児
ユーリ(みさえ) ラムセスの母。ラムセスには手を焼いている
ネフェルト(ひまわり) ラムセスの妹。カッコイイお兄さんが大好き
カイル(風間君) ラムセスの友達、お金持ちでプライドが高く賢い
ねね・笑(ネネちゃん) ラムセスの友達、キレるとパロディを書いたりHPを作る
ミッタンナムワ(マサオくん) ラムセスの友達、デカイ体の割には泣き虫で気が弱い
ルサファ(ぼーちゃん) ラムセスの友達、いつもボーっとしているが結構役に立つ
ナキア ラムセスの幼稚園、薔薇組の担任の先生
ネフェルティティ ラムセスの幼稚園の先生、ナキアとライバル



寝起き

「ラムちゃーん、早く起きなさーい! 幼稚園遅刻しちゃうわよ」
 今回はラムセスの母親役ユーリが大きな声をあげながら起こしに行く。
「ラムちゃん! 起きなさい。起きなさいってば!」
 何の返事もなく蒲団にをかぶって丸くなってるラムセスにしびれをきかせる。
ユーリはバサッと掛け蒲団を取った。
「……あら?」
 ユーリは目を丸くした。ラムセスが蒲団にいなかったのだ。
 次にはぎ取った掛け蒲団を見た。裏側に蜂蜜色の物体が
大の字になって貼りついていた。
「ラムセス、起きなさいってば! うぎぎ」
 ユーリは貼りついているラムセスを無理やりはがした。
「やだよかーちゃん、まだ眠いよぉ寒いよぉ」
「何言ってるの、もう朝よ。暖かい太陽がでてんのよ!」
 ユーリはカーテンを開けて朝日を部屋の中に入れた。
「こんな太陽、エジプトの灼熱の太陽と比べたらまだまだ寒いやい!
俺はまだ冬眠するぞ!」
「おバカ! 早く起きて着替えなさい!」
 ユーリはゴツンとラムセスの頭にゲンコツを落とした。
「かーちゃんの鬼、悪魔、皇太后。そんなんじゃ将来立派なタワナアンナには
なれねーぞ!」
 ラムセスの言葉にユーリはピクっと反応し、黒い瞳で睨みをきかせた。
「あんまり生意気言うとアンタの大切に育てた薔薇の花、全部折るわよ」
「うわああああ、ごめんよ、美人でナイスバディで賢いかーちゃん。
オラが悪かったよぉ。薔薇だけは折らないでくれよぉ!」
 ラムセスは母の言うとおり、仕方なく起きて着替えることにした。

「ラムちゃぁ〜ん、お着換えすんだ?」
 そろそろ着替えも終わった頃だろうと、ユーリはラムセスを覗いた。
「ん?」
 ユーリの言葉にラムセスは振り返った。
 ラムセスの姿を見たユーリは貧血で倒れそうになった。
「おーばーかー! おパンツかぶるんじゃありませーん!」
 ばっちーん! ラムセスの蜂蜜色の頬にもみじの手形がついた。
 ラムセスはユーリのパンツを頭からかぶっていたのである。
「ごめんよかーちゃん。間違えたよ」
「わかればいいのよ。わかれば」
 ユーリはため息をついてラムセスに一度背を向ける。
「これでどうだ? かーちゃん?」
 ユーリは振り向いた。今度は貧血ではなく、多血で倒れそうになる。
 今度は、マスクをかけるように、ユーリのぱんつのゴム部分を耳にかけていたのだ。
「こ、この変態幼稚園児! ささと幼稚園にいかんかーい!」
 ユーリはぱんつをはぎ取り、外に迎えにきている幼稚園バスに向かってラムセスを投げた。
「かーちゃん、薔薇をバッグにつけてないよぉ。俺のトレードマーク、薔薇を一輪取ってくれよぉ!」
 ラムセスは泣きながら玄関のドアにすがる。
 ポンと一輪、真っ赤な薔薇の花が放り出された。
「おっ、よかった。これで安心して幼稚園に行けるぞ!」
 ニコニコしながらお迎えの幼稚園バスに乗った。

「いつも騒々しい家じゃのう、この家は……」
 ラムセスの幼稚園の担任、ナキアが怪訝そうに言った。



幼稚園バス

「おはよう、厚塗りナキア先生」
「お、おはよう。ラムちゃん殿……」
「うぐぐ、いてーよ。おばさん。はなせよ」
「誰が厚塗りじゃい、誰がおばさんじゃい! タワナアンナ先生とお呼び!」
 きりんの模様の入った黄色いエプロンをつけたナキアはラムセスの頭に
ぐりぐりとゲンコツを押し付けていた。
「ラムちゃん、ラムちゃん。だめよ、先生にそんなこと言っちゃ。
レディーに対して失礼よ」
「おー、ネット好きのねねちゃーん。おはよー」
 ラムセスの腕を引っ張って止めたのは、同じオリエント幼稚園の薔薇組の
友達ねねちゃんであった。実はこのねねちゃん。HPを運営するスーパーハイテク幼稚園児で、
パロディを書かせたらオリエント幼稚園一! 薔薇組で『キーボードのおねね』と
言えばちょっと有名な存在であった(爆)。
「ラムちゃん、ナキア先生怒らすと怖いわよ。給食に黒い水とか白い水とか
入れられるって噂があるんだから!」
 心やさしいねねはこそっとラムセスに耳打ちする。
「おー、さすがは皇太后!」
 ラムセスは納得し、素直に席に座った。
「おはよう。ラムセス」
 幼稚園児の割にははきはきと喋る風間くんカイルがラムセスに声をかけた。
こちらもスーパー幼稚園児。皇族の血を引くためかプライドが高く、
この年で自分のことを『わたし』と言う自他共に認めるエリートであった。
「おお、カイルくんおはよう」
「朝からナキア先生怒らせてお前も相変わらずだな」
「そんな、愛してるなんてオラ照れちゃうぜ……」
 ラムセスは体をくねらせ頬を赤くする。
「誰が愛してるだ! わたしは『相変わらず』と言ったんだ!」
「愛変わらずなんて……、こんな公衆の面前でオラ恥ずかしい……」
 恥ずかしいといいつつカイルに投げキッスをする。
「だー! 気色悪い。やめろー!」
 カイルはぶんぶんと首を横に振る。
「きゃああああ、HPのパロディネタよぉ〜!」
 ハイテク幼稚園児ねねがいつも持ち歩いているノートパソコンを出し、パタパタと
キーボードを打ちはじめた。
「やばいぞカイルくん、オラたちの恋路がネタにされてしまう! ここはひとまず冷静にしよう」
「だからわたしには始めからそんな気はない!」
「んっ、もう! カイルくんたら照れちゃって!」
 ラムセスは蜂蜜色の人差し指でツンとカイルの肩を叩いた。
 するとラムセスの後ろから一輪の花が差し出された。
「これ……、あげる」
 今回はぼーちゃん役なのであまり喋ることはできないルサファが花を片手に
シャギーを揺らしていた。
「おお、梅雨の季節にはぴったりのあざらしの花! ありがとう!」
「バカー! あじさいの花だろーが!」
 知識人カイルが即座に間違いを訂正。
「そうとも言う〜。ぼーちゃんルサファ、あじさいの花のお礼にこれをみせてあげよう。
ぞ〜さん、ぞ〜さん〜♪」
 くれよんラムちゃんお得意の『そーざん』が始った(笑)。
「ラムセス! お前は何てことするんだ! やめろ!」
「うぅ〜ん、そんなこと言わずにカイルくんもぉ〜一緒にィ〜。裸を見せ合った仲じゃないィ〜♪」
「誰がやるか! そんなものー!」
「きゃあああああ! ネタよネタよぉ!!!!!!」
 ねねがしまいかけたノートパソコンを開き、再びキーボードを並ならぬ速さで打ち始めた。

 朝からラムセスに振り回されているオリエント幼稚園薔薇組であった。


遊び


 バスが幼稚園に着いた。わらわらと小さな足がバスから次から次へと出てくる。
「おー、やっと幼稚園についたぞー」
 ラムセスもみんなに続いてバスから降りて教室へ入った。
 ハイテク幼稚園児ねねは教室に入るとすぐさま隅にあるコンセントへ
かけてゆき、ノートパソコンを充電した。
 朝の挨拶を済ませ、お昼までの自由時間。ラムセスとカイルとねねちゃんと
ルサファぼーちゃんとミッタンは、仲良く外で遊ぶことにした。
「おままごとして遊ぼう!」
 5人の中で体の一番大きいミッタンナムワが言った。
「えー、おままごとよりかくれんぼのほうがいいなぁ」
「うん、それがいいよ。カイルくん」
「私もラムちゃんの言うとおりかくれんぼがいいな」
「ぼくも……」
 結局多数決で5人でかくれんぼをすることになった。
ミッタンがしょんぼりしているが民主主義なのだから仕方がない(笑)。
「じゃあ、ジャンケンで鬼を決めよう。ジャンケン、ポン!」
 ラムセスの掛け声でみんな右手を差し出す。
 グー、グー、パー、グー、グー。
「カイルくんパー。だから鬼!」
「本当だ。カイルくんパーだ」
「カイルくんパーだわ」
「カイルくんパー」
「ええい! みんなしてわたしのことをパーパーと言うんじゃない!
わたしが本当にパーのように聞こえるではないか!」
 カイルが息を切らせて4人に怒りをぶつける。
「パーでもアホでもなんでもいいよ。とにかくカイルくんが鬼ね。
100かぞえてねー。じゃあはじめー!」
 ラムセスの声でみんな一斉に散った。
 仕方なくカイルはその場にしゃがみ込み目をつぶって1から数を数え始めた。
「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーく…………じゅうしち、じゅうはち」
「そこのお兄さん、今日は何月何日だい?」
「6月18日だよ。うるさいぞラムセス! そんなことで紛らわされないぞ。
じゅうく、にーじゅ」
「…………」
 ラムセスは数を数えるカイルの横でしばらく黙る。
その間にも順調に数を刻んでいる。
「ろくじゅう、ろくじゅういち、ろくじゅうに、ろくじゅうさん」
「そこのお兄さん、ユーリのスリーサイズは?」
「えっと、上から80、56……」
 カイルははっと我に返った。ラムセスはニヤリと笑う。
「何言わせるんだ! ラムセスー!」
「フフフフフ、引っかかったな。ところでカイルくんいくつまで数えたの?」
「……………………」
 ユーリのスリーサイズを聞かれてすっかり頭が白紙になってしまったカイル。
「はい、だめー。もう一回最初から数えなおしー!」
「くそう! いーち、にーい、さーん、しーい……」
 カイルは地団駄を踏んで1から再び数え始めた。
 ラムセスはカイルをからかうのをやめて、本格的に隠れることにした。
隠れる場所を探していると、ノートパソコンを広げているねねちゃんに会った。
「ねねちゃん、何やってるの?」
「あ、ラムちゃん。これでね、鬼のカイルくんの位置をチェックしてるのよ。
さっきカイルくんにセンサーをそっとつけておいたのよ。
このパソコンに組み込まれているナビでカイルくんの位置がわかるのよ」
「おお! さすがオタッキーねね。すごいぞー!」
「これならみつからないでしょ!」
 その後、ルサファとミッタンも合流して、ねねのパソコンを元にカイルくんから逃げた。
「みんなぁ、どこにいるのぉ〜」
 鬼のいる位置がわかるのだから、つかまるわけがない。
 狭い幼稚園のはずなのに誰も見つけることができないカイルは泣きべそをかいていた。
「フフフ」
 小さく笑うラムセスとねねとルサファとミッタン。
ある種のいじめだということを、この4人は気づいていないのであった。

 結局、カイルは誰も見つけることができなかった。自由時間が終わり、
お昼の時間となった。鬼のまま終わるというのはなんとも嫌な気分である。
 カイルは嫌な気持ちで弁当を机の上に出した。
みんなも「お昼だお昼だ!」と嬉しそうにお弁当を広げていた。
 すると大きな「わーん」という泣き声が教室に響いた。
「わーん、お弁当忘れちゃったよー! せっかくミッタンハニワママが作ってくれたのにー!」
 ミッタンナムワが大きな声で泣いていた。
「でかい図体してメソメソすんなよ。うるせーぞ! 
一食くらい抜いたってお前にはいいダイエットだよ」
「わーん! ひどいよラムちゃん、他人事だと思って! わあああああん!」
 大粒の涙を流しているミッタンの前にスッと弁当箱が差し出された。ルサファぼーちゃんが
表情を変えずにミッタンをじっと見つめていたのだ。
「ぼくの……、少し……分けて……あげる……」
「本当にいいの? ルサボーちゃん!」
 ミッタンナムワの顔がパッと明るくなった。
「身分の高い者としてわたしの弁当も平民であるお主に分けてやろう」
 皇族出身のカイルもミッタンに弁当を分けてあげることにした。
「あっ、私も嫌いなニンジンならあげるわ。はい!」
 パソコンオタクのねねちゃんもニンジンのグラッセを無理やりミッタンに押し付けた。
「おお、そういう手があったか! ねねちゃん賢いぞ! 
ミッタン、オラのピーマンの肉詰めもやろう。ほいっ!」
 ラムセスがピーマンの肉詰めを箸で放ったところ、見事にミッタンは
大きな口でナイスキャッチ!
 そのまま食道を通り、胃の中の消化酵素であるペプシンで消化された。
「ラムセス、ずるいぞ! 好き嫌いは良くないぞ!」
「うぅ〜ん、カイルくん。いけずぅ。固いこと言わないで! 
本当はオラがミッタンにお弁当あげたこと嫉妬してるくせにィ〜」
「誰がお前のような庶民の弁当に嫉妬するって言うんだ!」
「カ・イ・ル・く・ん! オラが口移しでエビフライあ・げ・る!」
 ラムセスはエビフライを口にくわえ、目を閉じてカイルに近づく。
「うわあああああ! やめろー!」
 カイルは顔を真っ青にして大声で叫んだ。
「うるさいぞ! このガキども! 静かにせんかーい!」
 薔薇組の担任、ナキアの雷がカイルとラムセスに落ちた。
 少し太り気味のナキア、ダイエットのため昼食を抜いていたのだ。
食べられなくてイライラしているところに、ラムセス達に騒がれたのでは
堪忍袋の緒が切れるのも無理はないであろう。


ラムちゃんち

「では皆の者、帰るがよい」
 薔薇組の担任ナキアは、教室から園児を燃えないごみのごとく(笑)つまみ出した。
 一日は終わりもう夕方、園児の保護者たちが迎えに来る時間である。
「ナキア先生、ネフェルティティ先生さよーならー。今日もシワ取りパック忘れないでねー」
「うるさいぞラムセス。さっさと帰れー!」
 ナキアとネフェルティティはスリッパを脱ぎラムセスの金髪を目掛けて投げた。
コンコンとスリッパはラムセスの頭にコントロールよく当たった。
「おおっ! さすがは元ヒッタイトとエジプトの皇太后。おそろしー。ちなみにスリッパ臭いぞ!」
 頭に命中したスリッパを拾ったラムセスはスリッパの臭いを嗅いだ。
「この変態幼稚園児! さっさと帰らんかーい!」
 ナキアとネフェルティティのシワは今日もまた1本増えたようである。
 
「ねー、ラムちゃん。私、ラムちゃんの家行きたいな」
 ノートパソコンを片手にお迎えを待つねねが言った。
「ぼくも……、いきたい…なぁ。ラムちゃんの家。久しぶりにユーリさんに会いたい……」
「いいぞ、ねねちゃん、ルサファ。明日の日曜日、俺んち来いよ」
「じゃあ僕も連れてって、ケーキとジュースくらい出るよね」
 お弁当を分けてもらっただけではまだ足りないミッタンナムワが言った。
「私も庶民の家というものを一度見学してみようかなぁ」
 皇族出身のカイルもラムセスの家に行くことになった。

 ――日曜日。ラムセスの家。
「こんにちはー」
 ねねちゃんのソプラノ声がラムセスの家の玄関から聞こえた。
「おー、みんな来たかー」
 ねねちゃんにルサファぼーちゃんにミッタンナムワにカイルくん。
4人揃ってのラムセス家への訪問である。
「まあ、皆さんいらっしゃい。狭いところだけどどうぞあがってね」
 ユーリはやさしく4人を迎える。
「本当にお片づけの嫌いなユーリですまないな。みんな上がれ」
「お片づけが嫌いなのはお前だろーが!」
 ガツン! ユーリのゲンコツが金髪の頭に落ちた。
「これ、つまらないものですが、スケルトンのフロッピー10枚セットです。
どうぞ使ってください」
 パソコンオタクねねが○葉原の電気街で買ったフロッピーをユーリに差し出す。
「まあ、あなたが『キーボードのおねね』ことねねちゃんね。いつもラムセスが
お世話になっておりますゥ」
「いいえ、こちらこそ薔薇ムセスさまにはさんっざんお世話になってますゥ」
 ねねはノートパソコンを手に深々とお辞儀をした。
「ユーリ……さん。これ……僕の……気持ちです……」
 ルサファぼーちゃんが顔を真っ赤にしながらピンク色のチューリップの花をユーリに差し出した。
「まあ、ピンクのチューリップ! ルサファぼーちゃんありがとう!
うちのラムセスは真紅の薔薇の花ばかり育ててるから、チューリップがとっても新鮮で嬉しいわ」
 黒い瞳はルサファに笑いかけた。ユーリの微笑みを受け取ったルサファは
ますます顔を赤くする。
「はじめまして。わたくし、ラムセス君と同じ薔薇組のカイルと申します。
いつもラムセス君にはお世話になっております……と社交辞令で言ってきましょう。
これはつまらないものですが、ユーリさんにプレゼントです。ひまわりの花です。
まあ、あなたの笑顔に比べたらこのひまわりの明るさもみずみずしさも
かすれてしまうと思いますが……」
 カイルはユーリに向かってひざまずき、ひまわりの花をかざした。
「まあああああ! なんと礼儀正しい! なんて利発そうな子なのかしら!」
 ユーリはカイルを一目見て気に入ってしまった。
「ユーリおばさん、空のお弁当箱持ってきました。これにご馳走つめてください」
 ユーリに弁当箱をさしだしたのは薔薇組の食いしん坊バンザイ、ミッタンナムワであった。
「だぁー」
 ペタペタペタ。はいはいをしながらみんなの元に、ラムセスの妹ネフェルトが姿を現した。
「あら、ネフェルトちゃん、起きたのねー。今日は寝起きが良くてママ嬉しいわ」
 ユーリはネフェルトを笑顔で抱き上げる。
 ネフェルトはユーリに抱かれながら、来客の顔をじっと見つめていた。
 ルサファを見てニコリ、ミッタンを見て膨れっ面、カイルを見てよだれを垂らしていた。
赤ん坊でありながら相当の面食いのようである。
「あっ、ネフェルトちゃんの着ているベビー服、もしかして胸だし服ね。さすがはエジプト人!」
 ねねはネフェルトの着ている胸部が空いている服を見て言った。
「そうなの。この子、胸だし服以外は着ないのよ。先が思いやられるわー」
 ユーリは眉をしかめて心配そうに言う。
「かーちゃんも胸だし服が着れるようにグラマーになったほうがいいぞ!」
 ラムセスは小さな手でポンっとユーリの胸を叩いた。
「どさくさに紛れて触るんじゃない!」
 バチンとラムセスの頬にユーリの手形がついた。
「ねえねえ、ちょっとねねは不思議に思ったんだけど、ラムちゃんとネフェルトちゃんと
ユーリおばさんは肌の色が全然違うわよね。お父さんは誰?」
「えっ? それはえっと……」
 ユーリはしばし考える。
「きっと蜂蜜色の肌のお父さんよね。ラムちゃんを抜かすと、天河の中で他には箸蜜色の肌の
キャラは……」
 ねねはその場で考え込む。その他のラムセスやルサファ、カイルも一緒に考えこんでいた。
 しばらくして、
「わかったぞ!」
 大食いミッタンが大きな声をあげた。
「蜂蜜色の肌! ラムちゃんのお父さんはホレムヘブ将軍だ!」
「ひいいいい! 私とホレムヘブ将軍が夫婦だなんてやめてぇ!」
「おい、何で俺がホレムヘブの子になんかならなきゃいけないんだよ!」
「うぎゃー!」
 赤ん坊のネフェルトもホレムヘブという固有名詞を聞いて泣き出した。
「でも確かにラムセスを抜かしたら天河に蜂蜜色のキャラってワセトくらいしか
いないわよね。だいたい誰よ。私がラムセスの母親なんて設定組んだ奴!
どうしてこんな薔薇好きな幼稚園児の母親にならなきゃいえけないのよ!」
「言ったなユーリ。俺だってお前みたいな洗濯板の胸のかーちゃんなんて
持ちたくないよ。冗談じゃないぜ! この設定考えた奴は……ねねお前じゃないか!」
「きゃあああ、とうとう天河キャラに怒られた〜。パソコン持ってだっしゅーつ!」
 ねねは玄関を逃げ出ると、ポケットから電話線を取り出して近くの電柱に向かって投げた。
電話線はくるくると電柱にひっかかりねねはターザンのように電話線を伝ってはるか彼方に
逃げていった。
 まだまだ、これからも天河パロは……ねね'S わーるどは不滅のようである(笑)。


♪おわり