***ヒンティ殺人計画***

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ある夜…(いや早朝か…)のチャットでのこと…

ねね:そろそろ天河も終盤かしら?
さおり:そーだねぇ、でもまだ解決していない問題いっぱいあるよ。
ねね:ウルヒの背中の傷とか?
さおり:うんうん、ナッキーのヒンティさん殺しも
ねね:ヒンティさんはどうやって殺されたんだろう?

……それは、
(以後、チャットでのアホ話をまとめました)

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 遥々バビロニアからお輿入れしたナキア。しかし今のヒッタイト皇帝には正妃もいたし、
その他に側室もわんさかいた。このまま側室の一人になるなど、気が収まらない。
私は、ヒッタイトの皇統にバビロニアの血を残すために来たんだから…。
 とりあえず邪魔なのは、正妃であるヒンティ。容姿端麗、才色兼備、温厚篤実。
皇家出身の民衆からも熱い支持を受けるヒンティ。これじゃあ、蹴落としようがない。
じゃあどうすればよいか……、簡単である。殺せばいいのである。
お得意の魔法の水で……。と、行きたいところだったが、さすがは賢帝カイルを生んだ母。
自分がナキアを始めとするその他の側室から、恨み妬みを買っていると十二分に分かっていた。
魔法の水を近づけるスキもない……。こうなったら…あの方法しかない!

 ナキアは水盤に近づき、水面を見た。
『ポチャリ……』
 瓶から一滴、七色に輝く水を落とした。
 水面は弧を描き、見る見る何かを映し出していた。
 町並みが見える。古代の町並みではない。20世紀の…現代の町並みである。
「ウルヒ。私はこれから買い物に行って来る」
「はあ、さようで、何処まで?」
「よくわからん。半紙の売ってる所じゃ!」
「半紙? 半紙って書道のときに使う紙ですか? そりゃまた何でそんなものを・・・」
「ふふふ、ヒンティを殺めるためさ! 濡れ半紙をピトッとやればイチコロさ!」
「こりゃまた古風な…。いまどき濡れ半紙なんて…。あっ、古代だからいいのか!」
「じゃ、行って来るからな! 留守を頼むぞ!」
 スクール水着に着替えたナキア(もちろん、アクセサリーはそのまま)は、
ドッボーンと水盤の中に入っていってしまった。
「あーあ、行ちゃった…。ナキア様…、忘れ物はないかしら?
―――あっ! ナキア様…パンツを忘れて行ったぞ…。水着に着替えたから…。
 着替えのパンツを忘れたナキアの現代の旅は、今、始まろうとしていた。

「ぶはっ!」
 ナキアは公園の噴水から顔を出した。
 スクール水着姿で、ジャバジャバと噴水から出た。
「明くん。見ちゃいけません」
 子連れの親は、子供に変態を見せないように必死だった。
「ふう、ここに半紙が売っているのか…。まずは着替えるとするか…」
 公園の中にある公衆便所まで行った。その間にナキアに向けられる視線と言ったら…。
 どうやったらあの髪型になるんだろうと考えさせられる髪は乱れ、そんなに身につけていては、
さぞや重しになっただろうと思わせるジャラジャラのアクセサリー。それに加えて、スクール水着。
まだ若さあふれていたピチピチの肉体は、公園全部の視線を集めていた。
 公衆便所の個室で着替えるナキア。
「―――あっ! パンツがない…。どうしよう…。まあ、いっか。仕方ない。転ばないようにしよう」
(あなたはこういう経験ないか? 私はある! 小学校のとき…BY薔薇子) 
 いつものヒラヒラ、メソポタミア系の衣装で再び公衆便所から登場。
 またもや、視線を集めたのは言うまでもない。
「さてさて…半紙は何処に売っているのやら…」
 辺りを見まわした。ベンチにはイチャつくカップルがいた。イチャついているのもお構いなしに…。
「そこの二人。ちょいと聞くが、半紙はどこに売っておる?」
「なーに? このオバさん。カバ男さんの知り合い?」
「知らないよ、ブタ子さん。オバさん、コスプレ会場ならあっちだよ。
ゆりかもめに載って、国際展示場で降りるんだ」
 カバ男、ブタ子カップルは、ナキアの格好に驚き、質問の答えとは見当違いのことを言っていた。
「ゆりかもめ? かもめがユリでも背負っているのか? 薔薇じゃないだけまだマシだな…。
それより、動物カップル。もう一度聞くが半紙は何処に売っておる?」
「半紙? 半紙って書道のときに使う奴? あれなら文房具やさんに…。ねえ、カバ男さん」
「ああ、文房具やに行けばいくらでも売ってるから、あっちにいけよ!」
 ナキアは、動物カップルに石を投げられた。

 さてさて、街中を歩くナキア。浴びるような視線をそっちのけで、なんとか文房具やさんまで着いた。
『ガラガラガラ』
 引き戸を開けた。文房具やの中には、他に客はいなかった。
文房具やの主人もナキアが入ってきたのに気づかず、コクリコクリと居眠りをしていた。
キョロキョロして半紙を探す。けど、現代慣れしていないナキアには見つからなかった。
 そこへ、他の客が入ってきた。
「わーい♪ 今日はママがカンペン(←懐かしすぎ…)買ってくれるってー。早く! 夕ちゃん!」
「待ってよ、詠美!」
「あらあら、そんなに急ぐと転ぶわよ」
 夕梨、小学校3年生。詠美、幼稚園。その母親の夕梨ママ。3人が文房具やに入ってきた。
 可愛らしい絵のついている筆箱やカンペンの前に張付く、夕梨と詠美。その後ろにニコニコ我が子を
見守りながら、夕梨ママが立っていた。
「もし、そこのお嬢さん。半紙は何処にあるか分かるかね?」
 ナキアは夕梨と詠美に向かって訪ねた。
「半紙? 半紙ってお習字のときに使う紙ね。ほら、あそこよ」
 やさしい夕梨は、半紙をナキアのところまで持ってきてくれた。
「おお、ありがとう。娘よ」
「どれもかわいいなー。どのカンペンにしようかなー」
 夕梨と詠美は、ワクワクしながらカンペンを見ていた。
 ナキアは眠っている文房具やの主人を起こした。主人はぼんやり目を開けた。
ナキアのメソポタミア系のヒラヒラ古代服を見て、主人の目もパッチリ冴えた。
「お客さま…、半紙をお買い上げですね。コスプレして書道ですか?
…それなら、新聞紙で十分に練習してから、清書で半紙をお使いになったほうがいいですよ」
「新聞紙…。練習…そうしたほうがいいのか?」
「はい、もちろん!」
 おじさんは、さっさとナキアに帰ってもらいたくって仕方なかった。
 その一方、夕梨ママは…
(うちの子ってば、なんて優しいの…)
 レジで会計しているナキアの背中を見ながら、我が子に惚れ惚れしていた。

 ノーパンナキアは、転ぶことなく無事に噴水のある公園まで辿り着いた。
「さっきの文房具やの主人は、新聞紙で練習したほうがいいと言っていたな…。新聞紙は…と…」
 公園のベンチで昼寝をしているホームレスを見つけた。
「ちょっともらうぞよ!」
 ナキアは、布団代わりにしているホームレスのスポニチをぶん取った。
「何をする! ババア! 俺の布団返せ!」
 ビビビビビビ!
 ナキアの目から、スペシウム光線! 哀れ、ホームレスは帰らぬ人に…。(爆)
「さあ、自分の世界に戻るとするか…。文房具やの主人が言っていたように、濡れ新聞紙で練習して…。
もちろん練習だいはウルヒさっ! ん? この新聞紙、ちょっと臭いな…。まあいいか…ウルヒだし!」
 
 こうしてヒンティ殺りく計画は、成功の道に1歩近づこうとしていた。
半紙のありかを教えたユーリが、ヒンティ殺しに手を貸したとは…、カイルは夢にも思ってこといないだろう……。

♪おわり