***がんばれ天河天子!(国立天河病院物語)***



 私は天河天子。今年医学部を卒業したばかりのホヤホヤのDoctorだ。
国家試験にも合格して、天河総合病院の小児科に医師として勤めることとなりました。
 今日は初日。不安と希望に胸を膨らませ、私の研修医生活は始まろうとしています。

さあ、あなたも天河天子になったつもりで、読み進めて行こう!(爆)

 天子担当は、小児科のカイル先生。
カイル先生は外来で患者さんを診ていると言うことだったので、見学と挨拶を兼ねて天子は会いに行った。
 待合室には人が溢れかえっていた。小児科ということもあり、小さな子とそのお母さんがいっぱいいた。
 その人をかき分けて診察室まで入ると……。
 な、なんと! 日本人離れした堀りの深い顔立ちのカッコイイ白衣を着た先生がいるではないか!
神秘の海を思わせるアイスブルーの瞳にはよどみがなく、鼻筋はすっとのび、整った凛々しい唇は
この世の奇跡のよう…。
「カイル先生。このカルテはどうしましょう」
 看護婦の一人が、私の見とれていた先生に話しかけた。
(こ、この人がカイル先生!? 私って何て幸せ! 医者になって良かった!)
 天子は心からそう思った。
「ああ、それはいいとして、デイル君(←患者)の血沈(赤血球沈降速度)を
迅速で測っておいてくれないかな?セルトさん(←看護婦)」
「はい♪直ちに」
 セルトという看護婦の目はハートマークだった。
「いえ、私がやりますわ、おどきなさいセルト!」
 そう言った看護婦のネームプレートを見るとアクシャムと書いてあった。
「私がカイル先生に頼まれたのよ。どきなさいアクシャム!」 
「いいえ、バビロニアの王女である私にお任せを」
「まあ、イシン=サウラまで! 私がやるって言ったらやるのよ!」
 セルト、アクシャム、イシン=サウラ…3人の看護婦はどうしてもカイル先生から
頼まれた仕事をやりたいらしい。採血器と赤沈棒の奪い合いをしていた。
「あ、あのすみません…私、今日からカイル先生にお世話になる研修医の天河天子と申すものですが・・・」
 天子は、争う看護婦に恐れをなしてビクビクしながら言った。
「ああ、話は聞いているぞ。今は忙しいからとりあえず見学するように。
あとで病院内を案内するからな」
「あ、ありがとうございます」
 突然、ナイフで刺されるような視線を感じた。
 さっきまで争っていた3人の看護婦が天子のほうを睨みつけている。
「ちょっと…あんた…。もしかしてカイル先生につく研修医?」
「あ、はいそうですが…」
「まあああああ! カイル先生は渡さなくってよ。ねえ、皆さん!」
「そうだわ!」
 セルト、アクシャム、イシン=サウラ、サバーハ、ウ−レという5人の看護婦からきつい視線を浴びた。
「心配することございませんわ。カイル先生は、こんな身分の低い研修医など
相手になんかしませんわ!おーほほほほ」
「それもそうですわね。私達は、皇家の血を引く者。このような平民に負けるわけありませんわよね」
「ほーほほほほ」
 5人の看護婦は、5人5用の笑い方で、天子のことをあざ笑った。
 突然のことに唖然とする天子。
 何も言えずただ立ち尽くす天子の肩をトントンとたたく者がいた。
 振り向くと、背の高いすらっとした白衣のよく似合う知的な看護婦が立っていた。
「気にしちゃだめよ。カイル先生のこととなると、いつもあの5人はこうだから…」
 看護婦のネームプレートにはアッダシャルラトと書いてあった。

 どうやらカイル先生というのは患者(患者の母親)にも、看護婦にも人気のある医師のようだ。
待合室に溢れていた患者とその母親はカイル先生が目当てのようだった。
 なにはともあれ、カイル先生は私の担当。午前の診察も終わり、
午後の空いた時間に病院内を案内してもらうこととなった。

「よし、病院の下から順に回っていこう。一階は、受付と会計、それと薬の受け渡し。
まあ、なんてことないんだが…。ただ一つ、ここの薬剤部なんだが…、ナキア薬剤師という
おばさん薬剤師がたまに、変な色付きの水を渡すことがあるんだ。
外来にかかるときは気をつけるように!」
「はぁ…」
「じゃあ、次は2階だ。2階は主に検査関係だな。レントゲン室には、主任のカッシュ検査技師。
リハビリ室には同じく主任のミッタンナムワ技師。2人とも有能な技師だ。
おっと忘れちゃいけない!ここ2階には、名物『イル=バーニの恋の悩み相談室』もある。
何か恋愛について困ったことがあったら、イル先生に相談するように。
無表情だが、いいアドバイスをしてくれるぞ。今、大人気なんだ」
 確かに、『イル=バーニの恋の悩み相談室』の前には、若い女の子達の列が連なっている。
(す、すごいところだわ…天河総合病院…)
 あっけにとられた天子は、カイル先生に連れられ3階に行った。
「この階には眼科と美容整形外科がある。どちらの科も素晴らしい名医がいるんだ。
まずは、眼科だが…。おい!ルサファ!」
 眼科に入って行くと、シャギーの入った黒髪の真面目そうな医師がこちらを振り向いた。
「今度、小児科に入った天河天子君だ」
「これはこれは、カイル教授の召された方とお会いできるなんて光栄でございます」
 ルサファは現代版でもカイルに忠誠を誓うらしい。
「いえ! こちらこそお願いします。ルサファ先生!」
 天子は深々とお辞儀した。
「じゃあ、隣の美容整形外科だ。どうやら診察しているようだな…」
 中をチラッと覗くと、金色の輝く絹糸のような髪を持つこれまた、
カイルに負けないくらいの美形の先生がいた。
 北海道出身のウルヒ=シャルマ医師だとカイルは言った。
 ウルヒはサラサラとした髪を手でたくし上げながら、
「フフフ、整形すれば私のようになれますよ」
 と患者に整形を薦めていた。
 診察の邪魔になっては悪いと思い、カイルはウルヒには話しかけずに美容整形外科を後にした。
「同じフロアにあるが、ルサファとウルヒは仲が悪いんだ。気をつけるように」
「仲が悪い?どうしてですか?」
「いや、なんでもルサファが、ウルヒの眼を弓矢で射貫いた…じゃなくって手術に失敗したとか…」
「あ……、そうなんですか」
「さあ、そんなことはいいとして、一番問題…いや、一番重要なオペ室(手術室)に案内しよう。
確か今は、外科のオペをしていたような…」
 カイルはオペ室のドアを開けた。
 その途端!
 ビュン
 と顔面を何かか横切った。
 メスが飛んできたのだ!
「黒太子! 今日こそ勝負だ! 俺様の薔薇薔薇攻撃受けてみろー。」
 第一外科ラムセスとネームプレートのついた医師が、薔薇の花を投げつけていた。
 投げつける相手は、同じく第一外科の黒太子とネームプレートのついた医師だった。
「くっ、負けるものか! お主が薔薇なら、こちらは黒太子の黒!
黒いチューリップ攻撃だー!」
 黒太子は、負けずに黒いチューリップをラムセスに向けて投げていた。
「ふん!こんなもの!」
 ラムセスはそう言いながら、黒太子の投げたチューリップをメスでグサグサ刺してよけていた。
「いいかげんにしてください!早くオペを続けてください!」
 自称美人外科医師かーか(爆)が、2人のflower対決を止めた。
 その状況を見ていたカイルは、オペ室の看護婦ハディにラムセスと黒太子の喧嘩の理由を聞いた。
「はあ、今日の喧嘩は、患者の傷口の縫い方を、薔薇刺繍にするか、チューリップ刺繍にするかで
揉めているんです…」
 ハディは困ったようにカイルに言った。ハディの後ろでリュイ・シャラの2人の看護婦も
溜め息をついていた。
「そうか…、まあいつものことだけどな」
 カイルは、呆れながらオペ室のドアを閉めた。

「天河天子君、これから頑張って働くように!」
 カイルは天子の方をポンと叩いた。
(カイル先生と一緒に仕事できるのは嬉しいけど…、この病院って…)
 少し不安になる天子。これから、彼女にはどんな運命が待っているのだろうか!

♪おわり(または、まゆねこさん続き書いて)

2000年1月の河のほとりの書き込みを参考にさせて頂きましたm(__)m