****一寸法師編****


 むかしむかし、京の都から遠く離れた小さな村に夫婦が住んでおりました。
夫婦の名前は、シュッピリウマとヒンティ。夫婦の間には一人の男の子がおりました。
男の子の名前はカイル。しかしこの男の子は普通の男の子ではありません。
身長が大人の小指(一寸)ほどしかなかったのです。それでも夫婦はたった一人の
息子だったので、たいそうかわいがったそうです。
 一寸カイルは、まだ村の外には一度も出たことありませんでした。
そんなある日、一寸カイルは 村で一番大きな木に登り、目の前に広がる広大な景色を
目にしたのです。
 その夜、一寸カイルは父、シュッピリウマに聞きました。
「なあ、おとう、今日村で一番大きな木に登ったら、はるか遠く彼方にきれいなきれいな
大きなお屋敷のようなものがあったんだ。あれは なんじゃ?」
「なに・・・ってあれは京の都じゃよ。京の都には立派な建物がいっぱいあって
きれいなお姫さまがたくさんおる。」
 おとうの話を聞いた一寸カイルは 都への夢で胸がいっぱいになりました。
綺麗な姫、綺麗な姫、綺麗な姫・・・カイルの頭の中ではこの言葉が
連呼していました。
 そしてとうとうカイルは都へ行く決心をしたのです。
「おとう、おかあ、おらは都へ行く。都へ行ってえらくなる。」
「何を言うのですカイル。あなたは普通の体じゃないんですよ。おやめなさい。」
母、ヒンティはやさしくカイルを説得した。だがカイルの都への思い入れは
ヒンティの息子カイルに対する思いを はねとばしました。
両親は仕方なくカイルが都へ行くことを承知し、カイルのために
針の刀に麦わらのさや、それにおわんの舟にはしを用意してあげました。
「おとう、おかあ、おら きっと偉くなって、皇帝...いや帝(みかど)になって
迎えに来る。それまで達者でな。」
「気をつけるですよ。カイル。」
母、ヒンティの目には涙が浮かんでいました。

 両親に別れを告げ、カイルはどんどん川を下って行きました。
小さなカイルにとっては、それはそれは、大変なことでした。
水草に舟が引っ掛かったり、急流にのみこまれそうになったり、
何度おわんがひっくり返りそうになったことでしょう。
「こんなことで負けるもんか、綺麗な姫、綺麗な姫・・・。」
カイルは呪文のように唱えながら、荒れ狂う川と闘いながら進んで行きました。
 村を出てから、何日経ったときのことでしょう。カイルはやっと都につきました。
早速、カイルは帝のお屋敷へ行って、家来にしてくれるよう頼み込みました。
帝は一寸カイルのあまりのちいささに びっくりしましたが、カイルのあまりの願いに
帝は家来になることを許しました。
 こうしてカイルは、帝の一人娘、ねね姫付きの護衛兵になりました。
「一寸カイルとやら、よろしくね。」
「こちらこそねね姫様、よろしくお願いします。」
カイルは念願の綺麗な(?)姫の側でお仕えすることが出来幸せでした。
ねね姫とその側近のユーリ、ハディ、リュイ、シャラ、そしてカイルは、共に時を過ごし、
楽しい年月が瞬く間に過ぎてゆきました。

 ある年の春のこと、ねね姫は清水寺にお参りにいくことになりました。
ところがそのころ都では、おそろしい鬼が 若くて美しい娘をさらっていくという
うわさがあったのです。ねね姫がさらわれては大変と、帝は十分な護衛兵をねね姫の
お供につけました。もちろん、一寸カイルも一緒です。
 さて、無事にお参りを済ませた帰り道、ねね姫一行が山道を歩いていると
空が急に暗くなり、冷たい風が吹いてきました。
「その娘もらったぞ。」
真っ赤な赤鬼が目の前に現れました。名前はラムセス。真っ赤な体をよく見ると
細かい薔薇の模様になっていました。でも、そんなことは今は関係ないのです。
鬼がねね姫の方へ近づいて行きました。
「きゃああああ。」
と悲鳴をあげるねね姫。護衛兵達は、ねね姫を守りました。だが、鬼はねね姫の前を
通り過ぎました。
「ねね姫、お前は若くて美しい娘のどちらの条件も満たしていない。帰っていいぞ。
それよりもこっちの ユーリとかいうほうが好みだ。フフフフフ。」
 護衛兵たちは、鬼に向かって行きました。が、あっという間にやられてしまいました。
「まて!わたしが相手だ。」
力強く一寸カイルは叫びました。しかし、さすがに大きな鬼にはかないません。
「このちびっこめ。食ってやる。」
と、一寸カイルはなんと鬼、ラムセスに食べられてしまったのです。
「邪魔ものはいなくなったし、さて、ユーリを頂くとするか。」
ラムセスはユーリに近づいて行きました。と、そのとき
「あいててててて・・・・。」
ラムセスが急にお腹をかかえて 悲鳴をあげました。
どうやら、ラムセスの胃の中で カイルが針の刀で大暴れしていたのです。
「どうだ!参ったか!」
「参った。や、やめてくれ。もう悪さはしない。」
「本当だな、待て、今 外に出るからな。」
カイルはラムセスの胃の幽門部をでて、十二指腸、小腸、盲腸、回腸、
上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸、肛門を経て、ラムセスの体外に出ました。
「うわあああああああ。」
ラムセスは逃げて行きました。逃げた後に ラムセスはうちでのこずちを落として行きました。
「まあ、うちでのこずちだわ。これで一寸カイルを大きくしてあげましょう。」
ねね姫は一寸カイルの頭に向けて うちでのこずちを振りました。
 するとどんどんカイルは大きくなり 凛々しい青年になりました。
「ありがとう、ねね姫。」
と言い、カイルはねね姫の方に近づいて....いって通りすぎてしまいました。
「ユーリ、本当はそなたが好みだったんだ、どうか私のタワナアンナになっておくれ。」
ユーリは二つ返事でOK。心の広いねね姫はカイルとユーリの結婚を認めました。

 その後カイルは村から 両親を呼び寄せ、帝にはなれなかったけれどカイルとユーリは
末永く、幸せに暮らしましたとさ。

♪おしまい

***おまけ***
ハディ「また、ねね姫様。行き遅れましたわね。」
リュイ「そうねぇ〜ねね姫様も もう結構なお年だし・・・。」
シャラ「帝も安心できないでしょうね。誰かいい殿方いないかしら?」