〜ラムセスより薔薇をこめて〜

BYまゆねこ

注:「エロイカより愛をこめて」とは何の関係もありません。(爆)                コードネ−ム
                                                             ↓

カイル 先祖はヨーロッパのとある小国の王で今は貴族
住んでいる城の修理費とイル達を養うためスパイ稼業
     皇帝
ユーリ 事件に巻き込まれるダンスが得意なアイドル歌手  
ザナンザ カイルの弟でやはりスパイ      殿下
キックリ カイルに振り回される部下A  
3隊長 実戦あがりのカイルの部下、最初はならず者!  
ラムセス カイルにからむ怪盗(注:ホモではない)。
表向きは大泥棒しかしてその正体はエジプトの情報将校
   王ファラオ
ホレムヘブ ラムセスの上官、エジプト情報部部長  
ナキア ロシアの大物女スパイ 皇太后(陰では魔女)
ウルヒ その手下  
ウルスラ ウルヒの元部下だった女スパイ(後で寝返る)  
イル=バーニ カイルの城の執事  
ハディ&双子 カイルの城のメイド                         
黒太子 ルーマニアのスパイ    ドラキュラ

 

<その1 ナキアの陰謀>
199×年、NATO軍情報将校カイル=ムルシリはある情報を入手した。
「日本人アイドル、鈴木夕梨はロシア女スパイ、ナキアの手下にて軍事機密を手に入れる。
コードネームはイシュタル」
 そこでカイルは仕事でヨーロッパに来ていたユーリに近づいた。彼女は日本のアイドルで
コンサートに出演するためステージに立っていたのだった。
「よし、コンサート終了後イシュタルに接触するぞ!それまで見張るんだ!」
カイルは舞台関係者に化けてステージの袖口に立っていた。

 その時、ひとつの銃口がユーリを狙っているのに気がついた。
何と、銃を持っているのはユーリを操っているはずのナキアではないか!
「バアアーン」会場に銃声が響いた。
「危ない!」カイルは思わずユーリをかばって床に伏せた。
「キャア、エッチ何するのよ!」ユーリが思わず叫ぶ。
「キックリ、いや部下Aこのままイシュタルを連れ去るぞ!」
「はい、少佐!かしこまりました。」キックリが叫ぶ。
「バカ、私はこの前大佐に昇進したんだ。どっかの万年少佐と一緒にするな。」
 
 会場内が騒然とする中誰もユーリを連れ去ったカイル達に気づく者はいなかった。

「あれ、ここはどこ?」ユーリは気づくと自分が天蓋つきのベッドに寝かされていることに
気がついた。
「ここはカイル様のお城でございます。」メイドのハディが言った。
「カイル・ムルシリ様はさる王国の血を引かれる高貴な貴族でございます。」
と長い髪を頭の後ろでお下げにたらした執事のイル=バーニが言った。
「え、さるが王国を作ったの?」思わずボケるユーリ。
「バカ、誰がさるだって?私はこの城の主人のカイル・ムルシリだ。
お前はどうやらロシアのスパイではないようだな。」とカッコよく出てくるつもりだったのに出鼻をくじかれたカイル
が言った。
「え?スパイとかロシアって?あたしはただの日本のアイドルだよ!」とユーリ。
「どうやら、お前を殺してお前になりすまし、軍事機密を盗むつもりだったらしい。」
そこでカイルは初めて自分の正体を明かし、ユーリがロシア側に狙われていることを話した。
「すると、あたしになりすまして悪いことをしようとする奴らがいるんだね?」
「その通り、お前はアイドルだから世界中どこでも自由に行くことができる。そこを狙われたんだ!」
「でも、あなたはこんなお城に住むほどの人なのになんでこんな事してるの?」
「それはですね!」と横から執事のイル=バーニが口をはさんだ。
「この城の維持費に莫大なお金がかかるのです。うちはさる王族とは言え貧乏で!」
「全く!メイド頭としてもカイル様に倹約していただかなくちゃ!」と声をそろえてハディ
が言った。

 そこへ、カイルの部下Aことキックリがあわてて入ってきた。
「少佐、大変です。」
「バカ、何度言えばわかるんだ!私は大佐になったと言ってるだろうが!」
(なぜかこだわるカイルであった。)
「失礼しました。大佐!アイドル、ユーリの偽者が動き始めました。」
「何!それは本当か?ナキアの陰謀だな。さっそく手配しろ!」
「カイルあたしも行くよ!」とユーリが叫んだ。
「バカ、お前は危険だ!かくまってやるからこの城にいろ!」とカイル。
「でも、あたしの名前が騙られたんだよ!これにはあたしが関わる権利がある。」

 ついにカイルは折れて、ユーリも連れていくことにした。2人はナキアの陰謀をうち破る
ことができるのであろうか?
                          

<パート2>

 偽ユーリが現れたという劇場に向かいながら、ユーリはカイルに言った。
「あたしに考えがあるの!まかせて」
「まかせるって・・相手はプロだぞ。危険すぎる。」
「でも、あたしの偽物なんだから、これはあたしが決着をつけたいの!」
「それほど言うのなら、わかった。その代わり見張りはつけるぞ。」

 やがて劇場に着いた。カイルは部下達をあちこちに手配し、自らはユーリとともに
舞台の袖に隠れた。
「舞台の中央には奈落があるよ。偽ユーリが登場すると同時にあたしも姿を現す。
そうすると相手はびっくりするでしょう?その時に奈落を開けて!そうしたら、あたしは
そこへ彼女を追い込むから!」ユーリが言った。
「しかし穴があくのだろう?落ちたら危なくないか?」カイルが言うと、
「大丈夫あたしは一度ここを下見したことがあるから知っているの。下にマットが敷いて
あるから、そこへ降りるってわけ。」ユーリが目くばせした。
「さあ、反対の袖から偽物が出てくるよ!」

 ほどなく舞台に黒髪の少女が現れた。と同時にユーリが反対側から登場した。
2人のアイドルの出現にざわめきが起こった。
「今だ!カイル奈落を開けて!」偽物があとずさりすると同時に奈落が開き、ユーリは
偽物少女と一緒に奈落へ落ちていった。

「あっ!」ユーリが叫んだ!何と奈落の底にはマットではなく無数のやりが突き立てて
あったのだ。
「ふふふ、奈落にナキアとはこのことよ!ユーリめ偽物と一緒に串刺しになるがよい。」
何と奈落の底のマットはすでにロシアの女スパイナキアの手によってやりへとすり替えられていたのだ。
「皇太后!シャレを言ってる場合じゃないです。まだ我々にはマイクロフィルムを手に入れる任務が!」と傍らの部下ウルヒが言った。
「お黙りウルヒ!マイクロフルムは奴らが串刺しになったあと、ゆっくり取ればよいのじゃ!」ナキアは持っていた扇子でウルヒのほおをはたいた。

 その時、一陣の風が吹いて大量の薔薇の花びらが舞い込んだ!
「秘技!薔薇崩し!」その声とともに褐色の肌をして口に薔薇をくわえた男が現れた!
と同時にユーリと偽ユーリはやりをかわして何とかマットの上に降りることができた。
「いくら何でも女の子を串刺しにするとはいただけないな!ふん俺様が許さないぜ。」
とその男は薔薇の臭いをプンプンさせてキザに言った。
「なんじゃと!お前は誰だ?」
「ふん!俺様か?俺の名は怪盗ラムセス!または薔薇男ラムセスと人は言う。」
薔薇をくわえて気取っているその男は言った。

 そこへカイルが部下達を連れてやって来た。
「ユーリ大丈夫か?」「うんなんとかね。」
 たちまちナキア率いるロシア側との銃撃戦が始まった。
ユーリもピストルを構えて応戦する。
「お前、いつの間に?」「一応足手まといになりたくなかったもんで!」
 やがて劣性に立たされたナキア側は
「ええい、くちおしい、覚えておれ!」と言い残して去っていった。
「ふーん、スパイ戦か!これはいいものを見せてもらったぜ!おみやげももらったしな!」
ラムセスもそう言い残すと姿を消した。
「待て!お前は誰だ!」カイルがそう言った時逃げ足の速いラムセスの姿はなかった。

 「私皇太后にだまされていたんですね!」そう言って偽ユーリは泣き崩れた。
「私を最初から殺すつもりだったなんて!」
「ロシアのスパイ<皇太后>ナキアとはそういう冷酷な女だ!」カイルが言った。
「どうするユーリ?お前はまだアイドルとして復帰できるよ!日本へ帰ってもとの通り
暮らすといい。」
「あたし帰らないよ!」ユーリが言った。
「帰ったとしてもここまで首をつっこんじゃったんだ。また狙われるに決まってる。
それなら逆に迎え撃ってやりたい。カイルあたしにも手伝わせて!」
「手伝うって・・これは危険な任務なんだぞ。いつも最前線で。そんな所にお前を連れて
行けるか!」
「一緒にいたいの。連れてって!」
「ユーリ!」「カイル!」ひしと抱き合い人目もはばからずキスをするカイルとユーリ!

「あの〜皇帝いや少佐!」ついに部下Aキックリが我慢できずに声をかけた。
「何だキックリ無粋な!私は大佐だと言ったろう!」とカイル。
「この偽物を名乗った女はどうしますか?」
「そうだ!カイルこの人は助けてあげて!ナキアにだまされていたんだもの。」とユーリ。
「女!名前は何と言う?」
「ウルスラと申します。それから手に入れたマイクロフィルムがここに!」
 しかしウルスラは何も持っていなかった。代わりに「薔薇男参上!」と書かれた赤い
暑中見舞いの葉書が出てきた。
「くそお!薔薇男とはラムセスのことだな!」カイルが悔しがった。
「中東を根城にする大泥棒らしいですよ!本拠はエジプトとか?」
「しょうがない!城に帰って作戦練り直しだ!」
 そこでカイルはユーリと部下達を連れて自分の城に帰って行った。
ユーリの偽物を名乗ったウルスラはユーリの口添えでハディの下で働くことになった。

「この分だと次の舞台は中東かもしれないぞ!」
さて彼らの運命はいかに? 

<パート3>

ラムセスにマイクロフィルムを盗まれた後、カイル達はとりあえず城に戻って
次の作戦を練り直すことにした。
 城に着くとさっそくイル=バーニが出迎えた。
「お帰りなさいませ。カイル様、さっそくですが・・」
「何だと!城の修理代の請求なら今取り込み中だと言え!」
「いえ、それもございますが、叔父上からお見合いパーティの招待状が届いております。
 それから弟君のザナンザ様が任務からお戻りで・・」
「何だと!そっちの方を先に言え!ザナンザが帰ったのか?」と嬉しそうなカイル。
「イル=バーニさん。ザナンザって誰?」ユーリが聞いた。
「ザナンザ様とはカイル様のすぐ下の弟君で空軍パイロットです。カイル様が裏の任務
と言うならザナンザ様は軍の表にあたります。やはり育ちの良さから殿下と言う通称で
呼ばれていますが。」

 そこへ空軍パイロットのいでたちをした背の高いカイルによく似た若者が入ってきた。
「兄上、お久しぶりです。私も久々に城に戻ってきましたが・・日本人の少女をお連れに
なったとか?城に女性を連れてくるのは初めてですよね。恋人ですか?」
「ま、まあな。それなのに叔父上ときたら、懲りもせずお見合いパーティなどと・・」
 それを聞いてユーリは不安になった。
「カイルは貴族の出身なんだ。身分の高いきれいな女の人にいつも囲まれて・・」
 あらためてカイルと自分との差を考えてしまうユーリであった。
「兄上、そのことですが・・実はパーティの招待名簿の中に1人不審な人物が・・」
「何だと!ちょっとその名簿を見せてみろ!」
 カイルがザナンザからひったくるように名簿をとって読んだ。各国の貴族の名前がきら星
のごとくならんでいた。

「ふうむ、これは臭いぞ!」カイルが突然叫び声をあげた。
 すると、たまたま近くを通りかかったハディがぎょっとして言った。
「すみません。そんなに臭いますか?この薔薇?」ハディは薔薇の花瓶を抱えていた。
「何?薔薇だと?今私の前にそんな不愉快な物を置くな!」
 あの薔薇男の不快な顔を思い出したのかカイルはむっとして言った。
「すみません。でも薔薇はお好きだと思ったのに。」
「ちょっと気にいらないことがあってな。薔薇は嫌いになったんだ!」
「兄上、今は薔薇が臭うとかそんな話じゃないでしょう!」とザナンザ。
「そうだった。いや、臭いのはこの名前だ!ロシア貴族バビロニワ夫人と言う女だ!」
「ふむ、ニワと言えばお庭番!お庭番と言えば忍者!忍者と言えばスパイに決まって
いますからね!」〜まるで連想ゲームである(^^;)〜
「バカ!誰が日本の忍者の話をしている!バビロニワと言えばバビロンの庭!すなわち
バビロンの空中庭園!バビロンと言えば、ロシアの女スパイ、ナキアではないか!」
「兄上の思考もそんなに私と大差ないと思いますけど・・」
「屁理屈はいい!あまり気は進まないがパーティに出席しよう!もしかしたら一石二鳥
になるかもしれないし・・ハディ!ユーリにドレスを選んでやってくれ!」
「えっ!あたしも行くの?」ユーリはびっくりした。
「兄上、ユーリを紹介して見合いを断る気ですね!考えたな。」

 そこで3人はパーティに出かけるしたくをいそいそと始めた。
                             

<パート4> 

「カイル=ムルシリ大佐閣下およびユーリ、イシュタル嬢のお着き」
 パーティ会場で名前が呼ばれ、カイルがユーリの手を引いて登場すると
会場はどよめきたった。上流社交界でも花形のカイルが今まで女性同伴で
パーティに来ることなどなかったのだ。
「カイル、いったいどういうつもりだ。今回のパーティはお前の花嫁候補を選ぶ
つもりだったのに!」カイルの叔父ズィダが近寄ってきた。
「もちろん、この方が兄上の恋人ってことですよ!」とザナンザがにやにやした。

 カイルの叔父ズィダ公爵は傍らの娘を見た。黒髪の小さな東洋人の娘。百合の花を
つけた清楚なドレスを着ているがまだほんの少女のように見えた。
「お前は名だたる貴族の姫君達を蹴って名もない小さな娘を選ぶのか!」
「そのつもりです。叔父上!それからもうひとつ私には目的が・・」
そう言ってカイルは会場を見回した。
「あっ!カイルあの女の人!」そうユーリが小さな声で言った。
 ユーリの目線の先には1人の着飾った女性がいた。確かにこの前とは感じが違い
うまく変装してはいるがひとつだけ隠しきれない白塗りの厚化粧の顔!
「あれだ!ロザリナ・バビロニア夫人というロシア貴族を名乗っているが、証拠がない。
しばらく泳がせよう。」

 しばらくしてカイル達は自分達の控え室で休んでいた。ザナンザがカイルに言った。
「兄上、ユーリの軍属が決まりました。NATO情報部所属で兄上の配下ですが。」
「ザナンザ、私はユーリを軍に所属させたくなかったのだが・・」
「それはわかりますが、ただの恋人でしたら、よけい敵に命を狙われます。
すぐ近くに置いて守るにはこれしか方法がないのです。
兄上の主義もわかっているのですが・・」

 カイルの主義、それは彼が「皇帝」というコードネームで呼ばれているのには、
それなりの意味があった。それは女性の部下を使わないこと、
すなわち色仕掛けで情報を得るというのは彼がもっとも嫌うところであった。
「兄上、もちろん私はユーリに自分を売って情報を得るということは
させるつもりは、ありませんよ!」
「あたりまえだ!」カイルはいつになく怒っていた。
「もちろん、こないだの劇場での働きは上層部も認めるところです。
ユーリはそんなことしなくても充分働けますから!」
「ザナンザ黙れ!誰か聞いている。」
ふいにカイルが会話をさえぎりドアの外を見た。

 「あっ!」そこには招待客の1人である西側の外交官が胸を短刀で
一突きにされて死んでいた。
「やられた!私達の目と鼻の先で!しかもこの男は情報部なんだ!」
カイルが言った。
「やっぱり短刀の指紋は拭いてあるな!おや?これは何だ?」
 見ると倒れている男の数メートル近くに麻のハンカチが落ちていた。
見るとP.Vとイニシャルが縫い取りしてあった。

 そこへ、1人の夫人が現れた。先ほど話題に出たバビロニワ夫人である。
彼女は死体を見ると大声で騒ぎ立てた。
「きゃあ、人が死んでいるわ!誰か、誰か来ておくれ。」
たちまちそこは黒山の人だかりになってしまった。
死体の身元を調べた結果男はロシアの外交官であることが判明した。
「おお、何てことでしょう。私の国のれっきとした外交官が西側で殺されるなんて!
これは国際問題ですわ。さっそく今日の出席者でP.Vと言う方を調べてもらえませんか?」
 さっそく係りの者が来て伝えた。それによると、出席者でそのイニシャルを持つ者は1人
でアメリカ人のNATO関係者でポール・バレー氏ということであった。

「まずいことになったぞ!」ザナンザが言った。
「そうだ。バレー氏はNATOの大物でパーティでも接触する予定だったのだ。
よりによってロシア外交官殺害の嫌疑をかけられるとは!」カイルが言った。
「カイル、これあのナキアが化けたバビロニワ夫人がしくんだ罠なんでしょ?
何で言ってやらないの?」ユーリが悔しそうに言った。
「そんなことはわかっている。だが証拠がないんだ。それにここで我々が騒ぎ立てたら
よけいまずい。情報部は極秘なんだ。」

 主催者のカイルの叔父ズィダ公爵もやって来た。
「カイル何とかならないのか!私のパーティで殺人が起こったなんて信用にかかわるし
第一国際問題になりかねん。お前も情報部なら何とかしろ!」

 そうしている間にもナキアことバビロニワ夫人はますます騒ぎ立て、本国の大使館に
連絡すると息巻いていた。
 カイル達はどうすることもできないのか?

 

<パート5>

「さてどうしたものか!」さすがのカイルもナキアの陰謀に考えこんでしまった。
自分達の控え室に戻ってからも黙り込んでいた。
「おい、ユーリ何を読んでいるんだ?」ザナンザがユーリに聞いた。
「え?これ?日本の雑誌だよ!
やっぱりアルファベットばっかりだとやんなちゃって!」
「ふ〜ん。日本語って変な字使うんだなあ。この複雑な字は何て言うんだ?」
ザナンザは興味津々の様子である。
「これは漢字って言うの。日本人だけじゃなくて中国人も使うんだよ。
でも中国人は読み方違うと思うんだけど・・」
「同じ字でも読み方が違うなんておもしろいな。」

「え、同じ字でも読み方が違う?そうか!わかったぞ。」
それまでずっと2人の会話を聞いていたカイルが声をあげた。
「ユーリ、ザナンザありがとう。
これでバビロニワ夫人の鼻をあかしてやれそうだ。」

 カイルはパーティに出席していた人々を集め検査官を呼んだ。
そして現場に落ちていた手がかりのハンカチを
もう一度持ってくるように言いつけた。
「みなさん。これが現場に落ちていた唯一の手がかりとなるハンカチですが・・」
カイルが言いかけるとバビロニワ夫人が口をはさんだ。
「何を言うておる。そのハンカチの持ち主は1人しかいないではないか!」
「そう、西欧のアルファベットでは・・しかしですね。バビロニワ夫人!
あなたの国の文字ではどうですか?キリル文字では確かPはRに、
そしてVはBにあたるのでは?そうするとこのイニシアルP.Vは
すなわちR.Bあなたのイニシャルになるのですよ!
ロザリナ・バビロニワ夫人いやロシアの女スパイ、ナキア」
「何ということだ!するとこの夫人は自分のイニシャルのついたハンカチを
わざと落として他人に罪を着せようとしたのか?」
カイルの叔父の公爵が言った。
「もちろん私の推論ですが、この方は西側に不利になるような事件を
でっちあげロシアに有利になるようにことを運ぼうとしたのです。」
カイルが続けた。
「何を言っておる。そのハンカチは麻で男物か女物かわからぬではないか!
そちらこそ それだけの証拠で私が捕まるとでも思ってるのか?」
 ナキアはこの期に及んであくまでしらを切るつもりらしい。

「ちょっと待って!証拠ならまだあるよ!」ユーリが叫んだ。
「ふん、小娘何を言うか!」あくまで強気のナキア。
「そのハンカチはあたしも見たよ!化粧をおさえたあとがあった。
バビロニワ夫人!あなたは特別な美白化粧をやってるよね!
日本でしかやってない鈴木その子の化粧を!
そのハンカチを調べればきっとその化粧品の成分が出てくるはずだけど・・」
 ここで初めてナキアの顔色が変わった。
「小娘!どこでそれを・・」
「さっきあたしも日本の雑誌見て思い出したんだけど
日本じゃ誰でも知ってるよ!」
「よし、それを鑑識に回せ!バビロニワ夫人、ご同行願えますか?」
カイルが言った。
「おのれ!私を誰だと思っておる!
ロシアのスパイを甘く見るでない!ええいウルヒ!」
 そう言うとナキアはどこからか黒マントの男を呼び出した。
するとたちまちナキアの周りは
黒煙に包まれたと思うと大音響とともに消えてしまった。

「くそ!逃げられたか!しかしこれでロシア大使館に正式に抗議できるし
既に国際手配もした。あとはナキアの行きそうな所をあたるだけだ!」
 カイルはさすがに悔しそうだったがナキアのたくらみを破ることができて
ほっとしていた。
「ユーリさすがだ。あなたのコードネームだがイシュタルに決まったよ!
戦いの女神という意味だ。これでずっと兄上のそばにいられるよ。」
ザナンザが言った。
「ありがとう。あたしもカイルの役にたてるなんてうれしい。」

 しばらくしてカイルの部下Aことキックリが報告に来た。
「カイル大佐!ラムセスの居所がわかりました。
中東あたりで見かけた者がいるそうです。」
「よしわかった。すぐに追いかけよう!
あいつはフィルムを持っているからナキアもきっと現れるに違いない!」
 さていよいよ舞台はオリエントへ
  

<パート6>  

 中東に出発するため、カイル達は荷物の準備をしにとりあえず城に戻った。
「カイル様、あなたの部下と名乗る者3名が面会を望んでおります。
取り次ぎましょうか?」執事のイル=バーニが言った。
「私の部下達?それぞれ家へ戻って中東へ行く準備をしてるはずだが・・
 イル、その3名とは誰だ?」カイルは少し不審そうであった。
「は?元3隊長と名乗っております。」
 元3隊長とはユーゴの実戦帰りでカイルの元に配属になったルサファ、カッシュ
ミッタンナムワのことであった。実戦経験のためか情報部のカイルを
バカにしてなかなか言うことを聞かない彼らのことである。
「はて、その3人が今頃私に何の用だ?」

 カイルが応接間に行くと果たしてその3人が待っていた。
「いったいお前達何の用・・・」カイルが言いかけるより早く3人が深々とおじぎをした。
「カイル大佐!私達は実戦帰りということで、あなたを見くびっておりました。貴族出身の
お坊ちゃん将校が何だと!」ミッタンナムワが最初に口を開いた。
「しかし、あなたは違っていた。ロシアの大物相手に実戦さながらのあの働き!
ロシアの戦車に抜け駆けされた俺は胸がすっとしました。」
と戦車隊長だったカッシュ。
「それに、あの小さな少女の活躍!ユーリ様とか言いましたっけ?」
どうやらルサファはユーリが気にいってしまったらしい。
「今度の中東行きにはぜひ我らもお連れください。実は先の戦争で重要な機密を手に
入れています。それをえさにすればラムセスばかりかナキアもつかまると思います。」
「それは何よりだ!それよりもお前達が私の本当の部下になってくれたことが
一番うれしいよ。」
カイルは今まで全然言うことを聞かなかった3人が初めて心を開いてくれたので
思わずひざまずいてしまった。
「大佐!そんな顔をお上げください。」
「そうです。敵にも「皇帝」と言われるお方に・・もったいない。」
「ありがとう。」そう言って4人は堅く手を握り合ったのであった。
(注:「桃園の誓い」と思ったけど1人多かったわ!)

 そう言うわけで、結束も新たにしたカイル達は早くも中東行きの軍用機の中にいた。
操縦桿を握っているのは空軍パイロットのカイルの弟ザナンザであった。
「おい!まだ着かないのか?もっと速く飛べないのか?」カイルはいらだっていた。
「全く!実の弟をアッシー代わりに使わないでくださいよ!
私は表の任務があるので兄上達を送り届けるだけですからね!」
「その辺の下手なパイロットよりお前の操縦のほうがよっぽど確実だ!
ザナンザ。最初にベイルートに潜入してそれからエルサレムあたりで
えさをまくつもりだが・・」
「あの辺はいつも危険地帯ですよ。モサドもうるさいし・・気をつけてくださいね。」
そう言ってザナンザはカイル達一行を目的地に降ろすと
いずこともへなく飛び去っていった。

 イスラエルおよびパレスチナ・・昔からカナンの地と言われるここでは紛争が絶えなかった。
3千年以上前にはエジプトとヒッタイトがオリエントの覇権を巡って争っていたし、
現在もユダヤ対アラブの抗争が続いている。
 カイルはまず餌となる偽情報を流すためベイルートのバザールに潜入することにした。
「ユーリ、お前はチャドルを深くかぶって顔を隠せ!ここでは東洋人は目立つからな。」
 カイルの言葉でユーリは黒いチャドルをすっぽりかぶった。
「カイル達はどうするの?ズルズルのアラブ風の服と頭巾をかぶるの?」
 ユーリが聞くとキックリが答えた。
「まさか!カイル様が着たらアラビアのロレンス風でかえって目立ちますからね。
我々はそのままですよ。」
「バカ!そのひとことはよけいだ。つべこべ言わずに準備しろ!」
さすがのカイルもキックリを蹴飛ばしてしまった。
 さて、こんなことで彼らの作戦は果たしてうまくいくのであろうか?                   


<パート7>


 やがて3隊長達が戻ってきた。
「大佐!情報は流しました。あとはラムセスか(皇太后)ナキアが
食いつくのを待つだけです。」
「よし、バザール中歩いてオッドアイの人物を探せ!」カイルが命令した。
「待ってよ、カイル、ラムセスのオッドアイは目立つから、
そのままじゃいないと思うな。
あたしの姿と同じだから、サングラスかカラーコンタクト入れてるかもよ!」
「大佐、ユーリ様の言う通りです。」キックリがユーリに相づちをうった。
 そこでカイル達は何人かで散って別行動を取ることにした。
カイルはユーリの身を案じて一緒に歩いてくれていた。
ユーリは気のせいか道を歩く人に注目されているような気がした。
「やっぱりカイルってかっこいいから目立つみたい。
これじゃラムセスに先に見つかっちゃうかも!」
ユーリはデートをしてるみたいと思ったが敵陣なので気を引き締めていた。

 その時黒い服を来てサングラスをかけた男達が近づいてきた。
「ちょっと一緒に来てもらおうか?」人相の悪い男達が声をかけた。
「嫌だと言ったら?」カイルが言うと相手は銃を出した。しかし・・
「えいっ!」カイルのかけ声とともに相手は銃を取り落とした。
急いで銃を取り出そうとするユーリにカイルは言った。
「ユーリ、ここではやたらと撃つな!たちまち銃撃戦になって危険だ!
それより相手の銃を取り上げるのが先だ!」
 たちまち大乱闘になった。バザールの大通りで起きたことなので騒ぎを聞いて
アラブ風の頭巾をかぶり軍服を着てサングラスをかけた男達がやってきた。
「カイル、どうしよう。取り囲まれちゃったみたい。」ユーリがささやくと
「ユーリ、静かにしろ、少し様子を見るんだ!」カイルが小声で言った。
 するとリーダー格と思われるひときわ長身の男が出てきた。
「カイル・ムルシリ大佐、ユーリ久しぶりだな。」
サングラスをはずしながら言うその声とオッドアイに見覚えがあった。
なぜか胸には軍服に不似合いな薔薇が・・
「ラムセス、やっぱり貴様出てきたな。」カイルがにやりとした。
「カイル、こうなると知っててわざと目立つようにしたの?」ユーリが小声で聞いた。
「たぶん、な。両方出てくるとは思わなかったけど・・」
 彼らの脇ではさっきの黒服達がのびていた。たぶんロシア人だろう。
「ムルシリ大佐、さっそくで悪いが、あんた達に用がある。一緒に来てもらえないか?」
 ラムセスが言った。
「おっと、部下に知らせるのは、なしだぜ!その代わりあんた達の安全は保証しよう!」
 2人はラムセスの後について歩いて行った。
ラムセスはバザールの奥へ奥へと進んで行った。


<パート8>


 ラムセスはバザールの店の1つの奥に入っていった。表に部下をみはり
に立たせてカイルとユーリに来るように手招きをした。
 そこには1人のチャドルをかぶった女が待っていた。
「待たせたな。」ラムセスが言うと女はチャドルをとった。
その下は目のさめるような美女であった。
アラブ人女性は普段顔を隠しているが実は欧米人のように金髪、
時にはそれ以上に美しい女性もいた。
「おひさしぶりにお目にかかります。」その女性はカイルに向かっておじぎをした。
「この女に聞いたら、あんたはここで待ってれば現れるだろうってね。」
ラムセスが言った。
「カイル、この女の人誰?」ユーリが聞くと
「ファティマと申します。以前カイル様にお世話になったことがありまして。」
カイルの代わりにその女性が答えた。
「あいさつはいい。ムルシリ大佐、用件を言う。実はあんたの協力がほしい。」
「なんだって?大泥棒のお前が私に協力要請とはおかしな話だ。」カイルはラムセスの
意外な切り出しにびっくりしていた。ラムセスはかまわず続けた。
「実は重要な情報が入ってな。イスラエルの新首相は知っているな?和平派の。
彼の暗殺計画があると言うんだ。」
「なんだって!」カイルはびっくりした。
「そんなことを言うなんて・・お前はただの泥棒じゃないな。
協力を頼む時はまず自分が何者か明かすのが礼儀じゃないのか?」
「それは失礼!でも有名な「皇帝」カイル・ムルシリ大佐なら すでに
ご存じかと思いましたがね。俺はエジプト軍情報将校、ウセル・ラムセス大尉です。」
ラムセスはさらに続けた。
「ロシアの「皇太后」ことナキアが動いているのはご存じでしょう?
彼女はサダム・フセインともつながっていて中東の混乱を望んでいる。
ところが最近当選したイスラエル首相は和平推進派だ。
彼にいてもらっては困るというわけさ。」
「中東の平和は我々も望むところだ。また暗殺事件なんか起こしたら大変なことになる。」
「その暗殺を防ぐために大佐の協力が欲しいのだが・・」
「よしわかった。ちなみに実行計画の場所はどこだ?」カイルが聞くと
「エルサレムだ。詳しい場所と時間は後で連絡する。次回そこで会おう。」
 そう言うとラムセスはすぐに立ち去ろうとしたが
「あんたが女の部下を連れてるとは・・いやユーリは部下じゃないな。」
 そう言うとユーリに目くばせして行ってしまった。

 ラムセスが立ち去るとファティマがカイルに言った。
「ではカイル様、私も少々情報を集めておきますので・・」
「いや、ファティマもうそんなことしなくていいんだ。」
カイルはそう言うとちょっと彼女を後ろめたそうに見ながらユーリを連れてそこを出た。

「ねえ、カイルさっきの女の人誰?」帰り道でユーリはカイルに聞いた。
「いや、以前ここで命を助けたことがあってね・・それ以来ここで任務がある時、
情報を提供してもらったことがあるんだ。」
「ふ〜ん、恋人じゃないの?ところでカイル、あたしも何か役に立ちたいんだけど、
任務をちょうだい。」突然のユーリの申し出にカイルはびっくりした。
「いや、お前はそんなことする必要はない。それより私から離れるな。」
カイルはそう言ったがユーリは
「いいもん。それなら、あたし1人で動くまでだ。」そうつぶやいてチャドルを深くかぶった。

 しばらく歩いてカイルはユーリに言った。
「ユーリ、そろそろホテルに行ってキックリ達の報告を・・」
ところが近くにいたチャドルの女性は通りすがりの別人だった。
「ユーリ、1人でどこへ行ってしまったんだ!」

 その頃ユーリはさっきの道を引き返していた。
「カイル、ごめんね。でもあたし、どうしても・・」
ユーリはさっきのファティマという女性がある店に入ったのを
そっと見ていてつけてきたのだ。
「おっと、ここは女性の入る店じゃないんでね。遠慮してもらおうか。」
入り口にいた従業員風のパレスチナ人が言った。
「ごめんなさい。あたし、ここに入ったファティマさんと言う女の人に用が・・」
「それなら裏口から入って楽屋へ行ってくれ。」
ユーリが言われた通り裏の楽屋へ行くとそこにファティマがいた。
きれいに着飾ってベリーダンサーの格好をしていた。
「お嬢ちゃん、ここはあなたの来る場所じゃないわ。」
「ファティマさん、あたしも何かカイルの役に立ちたいの!ここなら結構情報集まりそうだし
お願い、あたしにも手伝わせて!」ユーリは真剣だった。
 そこへ支配人がやってきた。
「ファティマ、東洋人の踊り子なんて珍しくていいじゃないか。ぜひやってもらおう。」
「でも・・この子は素人娘なんです。」
「あ、あたしダンスなら得意だよ!」ユーリが言った。
「そんなに、言うのなら・・でもお願い。あの人のためにも絶対危ないマネはしないと約束
してちょうだい。そうでないと私カイル様に会わせる顔がない・・」
「大丈夫だよ。こう見えてもあたし腕は立つんだ。」ユーリが言った。

 暗がりの中スポットライトが1人の踊り子を照らし出す。小さな東洋の少女。
だが駒のようにくるくると回る少女に観衆は引きつけられてしまった。
「いいぞ!」「色気は今ひとつだが、なかなか魅力的だ。」
 思った通りユーリはあちこちの席から指名がかかった。
その中からユーリはなるべく欧米人ぽい客を選び出した。
「お嬢さん、なかなかいい踊りだったね。あんたチャイニーズかい?」
「お客さん、そんなことどうでもいいじゃない。今夜は思い切り楽しんでいって。」
そう言うとユーリは彼らに強い酒をどんどんすすめた。
彼らはユーリが思った通り酔っぱらうにしたがってどんどんロシアなまりが
ひどくなり自分達のことをべらべらしゃべり始めた。
「俺達はこの中東へ大仕事をしにきたんだ。」
「へえ、すてき、いったいどんなことをするの?」
「世界をひっくり返すような大きなことさ。」さらにユーリが聞く。
「たとえば、ある国の首相を暗殺するとか?」
「まあ、そんなとこだな。それは・・」

 そのやりとりを近くの席でじっと聞いてる1人の男がいた。
褐色の肌にサングラスをかけている背の高い男だった。
「ふっ、モルジアナとも知らないで、ロシアのスパイはべらべら喋っているようだな。
さすがはユーリ・イシュタルだぜ。」
(注:モルジアナとは「アラビアンナイト」に出てくる奴隷女でアリババの間者として活躍)

 しかし、ユーリの様子を見ている者はもう1人いた。
女物のチャドルを深くかぶってはいるが片目で下から長い金髪がのぞいていた。

 

<パート9>
 ユーリ達の座っているところへ店の支配人が現れた。
「お客達からの指名だ。舞台に立ってくれないか?」
再びユーリはスポットライトを浴びて踊り始めた。
観客達はすっかり小さな踊り子に釘付けになっていた。

 そこへ、やっとのことでユーリの居所を突き止めたカイル達が
乗り込んできた。
「おい、ここに小さな東洋人の少女がいるだろう!」
「ちょっと、お客さん困るんです。静かにしてください。」
店のボーイともめるカイルのところへラムセスがやってきた。
「あんたのイシュタルなら舞台で踊ってるぜ。」
「なにぃ!そんなことは私が許さん!」怒るカイルをラムセスがなだめた。
「全くあんたは、あの娘のこととなると見境なくなるんだな。
「皇帝」ともあろう者が!
 それより彼女は結構うまくやってるぜ。少し様子を見るんだな。」

 そこでカイルは部下に指示して店を見張るように言い、
自分はラムセスと一緒に客のふりをして様子を見ることにした。
 すると、ユーリが踊っている間照明の落ちた客席に何かうごめく者がいた。
何と金髪の長い髪のウェイトレスがグラスに何か液体を入れているではないか。
 やがて踊りから帰ったユーリが席へ戻ってきた。
「あたしのど渇いちゃった。」
「なかなかよかったよ。1杯おやりよ。お嬢さん。」
ロシア人にすすめられてユーリがグラスに口をつけようとした時、
「待て!ユーリ飲むんじゃない。」カイルが叫んだ。
「何だ!このやろー。この女は俺達が指名したんだ。邪魔するな。」
「何を言う。この娘は私の女だ。」
たちまち場内は大乱闘になってしまった。
「もうカイルったら!せっかくうまくいくところだったのに!」
ユーリは怒ってしまった。

 やっと騒ぎがおさまったが混乱に乗じてロシア人達は逃げてしまい、
カイル達は店の損害を弁償するはめになった。
「全く大損害ですよ。この娘のおかげで今夜は盛況だったのに、
あんた達が邪魔するからこの有様だ。」
そう言って怒る支配人に金を渡し何とかその場を収めることができたが・・
「全く!私に黙って何てことするんだ。ユーリお前もうちょっとで危なかったんだぞ!
それにファティマ!ユーリにこんなまねさせて。」カイルはカンカンだった。
「待って!カイル。ファティマさんは悪くないの!あたしが無理矢理頼んだんだから!」
「いいえ、カイル様の大事な方をこんな目に合わせて!何とおわびしたらいいか。」
ファティマもしょんぼりしていた。
「それにしてもいいながめだな。ユーリ、今夜の踊り子なかなかよかったぜ。」
ラムセスが横から口をはさんだ。カイルはユーリの姿を見てはっと気づいた。
「バカ!ユーリ何て格好してるんだ。早くこれを着ろ。」
と言うが早いかユーリをチャドルでくるんでしまった。
「ちぇ、せっかくの目の保養を!ケチ減るもんじゃなし!」ラムセスが言うと
「お前に見られると減るような気がする。ユーリ帰ったらすぐに脱がせてしまうぞ。」
カイルが臆面もなく言ったのでまわりにいた部下達は真っ赤になってしまった。
「大佐!そのようなことはあとで2人きりになってから言ってください。」
「でもカイルおかげでいい情報が手に入ったよ!後で教えるね。」ユーリが言った。
「わかった、ユーリ、そのことは後でベッドでゆっくり聞こう。」
またカイルがそんなことを言うのでキックリは
「もう!早く帰りましょう。」と言うのがせいいっぱいだった。

 

<パート10>

 次の朝、カイルが目覚めるとユーリが隣でごそごそやっていた。
「ごめん、カイル起こしちゃった?」
「お前こそ何やってるんだ?まだ7時前なのに。」
「暑いから外のプールでひと泳ぎしようかと思って水着探し・・」
 そう言うユーリの唇をキスでふさいで、
カイルがもう1度ベッドへ引き戻したところへ電話のベルが鳴った。
「何だ!キックリ、こんなに朝早く!電話は盗聴されるから防止装置のついた携帯を
使えとあれほど・・」とカイルが言うと
「でも・・カイル様はユーリ様とご一緒の時は電源切ってるじゃないですか。それはそうと
ラムセスが会いに来てるんですけど・・」
「何!まだ早すぎるから追い返せ!」
「でも、もうすでにカイル様達の部屋の外のプライベートビーチのほうに・・」
「何だって?」それを聞いてカイルがカーテンの外を見るとプールの近くのテーブルに
ちゃっかり座って朝御飯を食べながら手を振っている男がいるではないか。
「あんのやろ〜!」仕事が一緒でなかったら絶対ぶっ殺してやる!と思いながらカイルは
ユーリにも促すと、身支度を済ませて外のテラスへ出た。

 「やっ、お早うムルシリ大佐、ユーリ」ラムセスは上機嫌だった。
「ラムセス、イスラム教徒が朝から酒だの豚だの食べていいと思ってるのか?」
カイルがむっとして言った。見ればラムセスは生ビール片手に
ベーコンエッグをほおばっていた。
「何!ここはエジプトじゃないからいいのさ!それに俺は来世なんて、
信じないんでね!」
「わあ!おいしそう。あたしオレンジジュースにパンケーキがいいな!カイルは?」
ユーリが言うとカイルは
「何だ、子どもみたいだな。私はコーヒーとライブレッドとチーズでいい。
キックリ、密談があるからウェイターに言ってお前が運んできてくれ!」
「かしこまりました。」キックリが行ってしまうとラムセスがユーリを見て
「ユーリ首筋にキスマークがついてるぞ!」と言った。
「えー?やだあカイルどうしてくれるの。」とどぎまぎしながら探し始めた。
「バカ、私が見える場所につけると思うか!」とカイルは咳払いをして
「ところで用件は何だ?朝っぱらから私達の邪魔をしに来たわけじゃないだろ?」
 ラムセスは茶目っ気たっぷりに言った。
「まあ朝早いのは単なる嫌がらせだが・・
イスラエル首相の暗殺計画の内容が詳しくわかったんでね。
先日あるイスラム諸国の国王が死んで葬式があったのは知っているだろう?
その弔問客達がイスラエルに立ち寄って会談をやることになったのさ。」
「その人が大勢集まる中で首相を暗殺しようと言うのか?
昨日ユーリが集めた情報によると敵さんが射撃手(スナイパー)を
集めているらしいので、ルサファに潜り込ませることに
したのだが・・ナキアのことだ。外交官に化けて潜り込むだろうし、
二重三重に罠をしかけてくるだろうな。」
「そこでだ!」とラムセスはビールを飲み干して言った。
「俺はエジプト政府要人のSPとして潜入できるのだが、
中の会談場所とパーティー会場までは無理だ。貴族の位を持つ大佐に
弔問客として入ってほしいのだが・・」
 そこへカイル達の朝食を運んできたキックリが言った。
「それは無理です。ラムセス!カイル様の国籍はドイツで「皇帝」家の血を引いてるので
イスラエルは絶対入れてくれないでしょう。」
「どうしてカイルはドイツ人で「皇帝」家だと入れてくれないの?」ユーリが聞いた。
「バカ!ユーリ、第二次大戦のホロコーストを知らないのか?
ユダヤ人はナチの戦犯を最後の1人まで捜してるんだ。これだから日本人ってのは・・」
黙ったままのカイルの代わりにラムセスが答えた。
「カイル、ごめんね。いくら歴史苦手だとはいえ、すっかり忘れてたよ。」
「いいんだ。ユーリ、本当のことだから。それより確かに内部に入れないのは痛い。
なんとかならないかな。ラムセスもう1度弔問客のリストを見せてくれ。」
「お安いご用だ!」ラムセスがそう言ってリストを渡すと、カイルは
「ふーん?英国皇太子も来るのか?おやズィダ叔父上も一緒に・・そうだ。ラムセス!
叔父上の息子に化けて入り込むという手があった。キックリすぐ連絡をとってくれ!」
「ねえ、カイルの叔父さんて中東へ来る前に会った人のことだよね?」ユーリが聞くと
キックリが答えてくれた。
「そうです。カイル様の叔父上はイギリス貴族へ婿入りなさったのです。
あちらではカーディフ卿と呼ばれてます。」
「そう言うわけで私は従兄弟に化けて潜入する。
ユーリは私の婚約者ということで入れるだろう。」
「頭いい。カイル大好き。」ユーリが叫んだ。

 すると横で朝ごはんをしっかり平らげたラムセスが言った。
「ごちそうさま、ムルシリ大佐。どうせ朝飯は公費で落ちるんだろ?
NATOのツケにしといてくれ。ところでユーリ昨日の艶姿に
すっかり参ってしまったんで贈り物があるのだが」
 ラムセスはうやうやしく真っ赤な薔薇の花束を取り出してユーリに捧げた。
 ついにカイルは我慢できなくなって叫んだ。
「もう話は終わった。出ていってもらおうか。出ていかないとつまみ出すぞ。」
 カイルはラムセスを蹴飛ばそうとしたが彼の逃げ足のほうが速かったようだ。

 


<パート11>
 
 いよいよ当日、カイルとユーリはロールスロイスの中にいた。
「カイル!今回の車はリムジンでもベンツでもないのね?」と聞いたユーリにカイルは
「一応叔父上はイギリス貴族だからな!お前も日本人ではなく従兄弟が赴任していた
香港出身の婚約者ということになっているから。」と答えた。
「一応とは何だ!カイル、全くお前と言い、息子と言いどうして黒髪黒目の東洋人が
好きなんだ?いやこれは失礼、お嬢さん。」
と、カイルの叔父の公爵はイギリス紳士らしくユーリに礼を尽くした。

 車が首相官邸に着くと、カイルの叔父を筆頭にタキシードを着たカイルと
白いチャイナドレスを着たユーリは中に入っていった。
 しばらく行くと、エジプト政府の関係者がいて近くにSPの任務についた
ラムセスがいた。彼はそっとグラサンをとりカイル達に目で合図をした。
 いよいよナキアの陰謀を阻止する作戦開始である。

 広間に入るとさすがに各国の関係者がたくさんいた。
カイルがロシアの関係者を見つけてユーリにそっとささやいた。
「どうやらナキアも潜入したらしい。大使館書記という肩書きで・・
目立たないようにしているが注意してくれ!」
 ユーリがちらと見ると彼女がいた。メガネをかけ地味なスーツを着て控えめだが、
あのタマネギ頭は確かにナキアであった。

 その時、カイル達に声をかけてきた者がいた。
「こちらが公爵のご子息とその婚約者かね?」
ユーリがびっくりして振り向くより速く、
「これは首相!恐れいります。」とカイルが答えた。
「背の高い美男子と東洋の美女の組み合わせは目立つのでね。
ところでかわいい婚約者との式はいつかね?」
「この会議が終わり本国へ帰りましたら、すぐにでも・・ところで首相、
閣下のお命を狙う者が・・身辺だけでなく食べ物や飲み物にも注意してください。」
 首相は一瞬びっくりした顔をしたが、
「わかっている。ありがとう。」と言って顔を引き締めた。
 
 その後、他の国の要人と話を始めた首相を見ながらユーリがカイルに言った。
「やっぱりカイルって目立つんだね、首相でさえ声をかけるんだから・・
でも今言った言葉って本当?」
 ユーリはカイルが言った「式」と言う言葉を思い出して真っ赤になった。
「本当さ!順序が逆になってしまったが、ユーリこの任務が終わったら結婚しよう!
お前に真っ白なウエディングドレスを着せてハネムーンはクルーザーで地中海だ!」
「本当?カイル、あたし嬉しい。」
ユーリはカイルの言葉だけで胸がいっぱいになってしまった。
「しっ!油断は禁物だ!この職業では目立つのはよくないのでね。
早くも敵に目をつけられたようだぞ。」カイルはあたりを見回した。

 その後しばらくして、乾杯が終わり食事を交えての歓談となった。
ユーリはカイルに言われた通り首相の飲み食いに気を配っていた。
 ふと見ると、ナキアが化けた書記がメイドを手招きしてグラスを取った。
何か飲み薬を1滴か2滴たらしたようである。
「あれ、ちょっと変?」
 ユーリが見ているとナキアはそのグラスを素早く首相の近くに置いた。他の国の要人と
話していた首相は何気なくそのグラスを取った。
 その時である。
「首相、もう一度乾杯しましょう。」とユーリは言ってよろけた振りをして
首相のグラスの中身をこぼしてしまった。
「すみません。あたしってドジで・・首相濡れませんでしたか?」
 そう言ってユーリはハンカチを取り出した。
「いいえ、あなたはさっきのお嬢さん、こちらこそ失礼しました。」
 (よかった!首相が飲まなくて)ユーリはほっとしてカイルのそばに戻った。
「ユーリ、よくやった。こちらにも連絡がきてルサファがスナイパーを何人か片づけたそうだ
これで狙撃の危険もなくなったわけだ。」
「よかったね。これでひと安心かな?」
 そう言ってユーリとカイルが廊下に出るとラムセスが近づいてきた。

「おい、大佐首尾は?」ラムセスが聞くとカイルは
「結構進んでる。今毒薬と銃が片づいたところだ。」と言った。
「そうか?ちょっと気になることがあるんだが・・」ラムセスが言った。
「ナキアの腹心の金髪、ウルヒが見えないのだが・・何だかうまく行きすぎるんでね。」
「そう言えばそうだな・・」さすがのカイルも心配になったようだ。

 話は変わって、その頃外では歩兵あがりのミッタンナムワが
別口で暗殺ゲリラを追っかけていた。しかもバズーカ砲を持って・・
「どけどけ!白兵戦ならこっちのもんだ!実戦あがりをなめるなよ!」
 さらに一部隊つぶしそうな勢いである。
「おい、こら待てミッタンナムワ。あんまり派手にやると目立つからやめろって大佐に・・」
カッシュが声をかけた。それにもめげずミッタンは続けた。
「バーカ!戦車に乗って言える立場かよ!」
「違う!俺は単にパトロールをだな・・ちょっと待て!おいウルヒを見つけたぞ!
乗れミッタンナムワ、追いかけるから」
 そう言うとカッシュはバズーカ砲を持ったミッタンナムワを戦車の上に乗せて走りだした。
(ちょっと、いやかなり目立つかも(-_-;)

 その頃、首相官邸では市民の歓声に応えて首相がバルコニーに出て
手を振る時間になった。
 するとラムセスがばたばた走りながらカイル達のところへやってきた。
「おい、大変だ!ムルシリ!罠がもうひとつあったぞ!バルコニーにしかけが!
すぐに知らせるんだ。俺は中まで無理だからお前が頼む!」
「何だって?」カイルは飛び上がった!
「もう間に合わないよ!カイル、携帯で誰かに連絡して!」
ユーリが叫ぶと同時に飛び出していった。
「おい!何をするんだ?ユーリ!」
 カイルが叫んだがユーリは聞かなかった。果たして首相は無事なのだろうか?
  

 <パート12>
 その頃バルコニーではイスラエル首相が市民達の歓呼に応えようと
手を振っていた。首相が市民により近づこうと手すりに手をかけた瞬間!
細工のしてあった手すりは崩れ、首相は真っ逆様に落ちようとした・・

 その時、「首相!あたしの手につかまってください。」
と言う声とともに1人の黒髪の少女が飛び出して首相の手をつかんだ。
「き、君は、あのお嬢さん!あなたでは私を引き上げるのは無理だ!」
と首相は言ったが、ユーリは
「いいえ、ここであなたが死んだら中東の平和はどうなります!」
 と言ってちぎれそうな手を絶対放すものかとがんばっていた。
たちまち市民達は騒ぎ出した。そのせいでユーリを追って
バルコニーに行こうとしたカイルもなかなか近づけないでいた。

(ああ、もうだめ!カイル役に立てなくてごめんなさい。)必死で首相の手
をつかんでいたユーリの気もさすがに遠くなろうとした、その時・・

「どけどけ〜このヤロー!ウルヒ待て!」
と叫ぶ声と戦車の轟音が響いた。なんとバズーカ砲をかついだハゲ頭の男の
乗った戦車が近づいてくるではないか。

ユーリが「落ちる!」と思った瞬間!
「あれユーリ様!どうやって戦車に乗ったんですか?」
と脇でミッタンナムワの声がした。
「あれ何であたしここにいるの?首相は?」
ふと横を見ると首相も一緒に戦車の上にいた。

実はミッタンナムワとカッシュは戦車に乗ってウルヒを追いかけるうち、どうやら
首相官邸に入り込んでしまったのだ。戦車はウルヒをなぎ倒して止まったところに
ユーリ達が落ちたらしい。
 しかし市民達は新しいパフォーマンスかイベントと思ったらしく
「首相万歳!」という歓声がわき起こった。

 こうしてナキアとウルヒらによるイスラエル首相暗殺計画は失敗に終わった。
カイルの通報でナキアとウルヒ(よく生きてたわね。ゴキブリみたい)はシベリア
送りとなった。でもナキアとウルヒのことだからいつの日かまたしつこく復活する
かもしれない。

 この任務が終わって一番喜んだのはカイルだろう。なにせ半年のごほうび
休暇をもらったうえにユーリとの結婚式があるのだ。
「さあ、ユーリすぐに国に帰って結婚式だ。イルやハディ達も待っているぞ!」
「カイル様、鼻の下がとってものびていますが・・」
「うるさい、キックリ!ザナンザに早く迎えに来いと連絡しろ」
 その様子を陰でじっと見ていたグラサン姿の怪しい男がいた。
「カイル・ムルシリ!ユーリは俺がいただくぜ!」
 もちろん薔薇男ラムセスであった。      
〜終わり〜

<エピローグ>〜おまけ〜

 結婚式の朝であった。カイルは白いタキシード姿でうろうろしていた。
もちろん胸には胡蝶蘭をさしていた。
「おーい、ハディ!ユーリのしたくはまだか?」
「はーい、ただ今!あとベールをつけたら終わりですから!」ハディが言うと
「ねえハディ、あたしのブーケどこ?」とユーリが聞いた。
「はい、ブーケなら直接教会に届くことになってますので」と双子が言うと
カイルは待ちきれないのかユーリの手を引いて車に向かいだした。

 もちろん車は真っ白なリムジンである。
「カイル、どう?」ユーリが聞くとカイルはにこにこしながら言った。
「もちろん、きれいだよ。でもユーリ、いくら歩きにくいからといって
ドレスの裾をそんなに持ち上げるのはやめてくれ!膝が丸見えだ」
(そう言えば今まできれいだよ!って言ってくれたことなかったもんね!言わなきゃ
けとばしてやろうと思ったけど)・・とユーリが思ってたことをカイルはもちろん知らない!

 やがて車は教会に着いた。しかしユーリがそこで受け取ったブーケは何と真っ赤な
薔薇だった。
「や〜ん、ハディ!何で注文ミスすんのよ!こんなのやだ〜!」ユーリが言うと
「おかしいですわね。私は確かにユーリ様のお好きな百合、カサブランカのブーケを
頼みましたのに!」
「おい、私は胡蝶蘭のブーケと言ったはずだぞ!」とカイル。
「とにかく時間がありません。早くお式に!」とあわてたイル・バーニがせきたてた。
(こんなことで成田離婚になってはたまらない!と思うイルであった)
 式は厳粛に進み誓いの言葉となった。なぜか薔薇模様のついた
神父の服が気になったが式は続いていた。
「ユーリ・イシュタルよ!汝は病める時も健やかなる時も
このウセル・ラムセスを夫とし・・」
と神父が変な言葉を言いだした。
「へへっ!ユーリ!この俺が変装名人な大泥棒だってことを忘れてたな!
今日は俺と結婚しようぜ!」
 と、そこに立っていたのは変装を解き薔薇模様のタキシードを着たラムセスだった。
「冗談!あんたなんかごめんよ!さては赤いブーケもあんたのしわざね!」
「全く!ルパン3世のまねなんかしおって!
ユーリこの場はひとまず退散してすぐに新婚旅行に行くぞ!」
「待ってよ!カイル、ドレスなんか着てるからあたし走れない!」
 結局カイルはウエディングドレスのユーリを抱えて走るはめになった。

 しばらく後、2人はラムセスの追跡を逃れて地中海の上にいた。
「ユーリここならラムセスも追ってこれまい。しばらくクルーザーでのんびりしよう。」
「ねえ、カイルあたし、パレオつきのビキニ着ちゃおかな?」
 その時であった。海の向こうに真っ赤な薔薇模様の帆をはった一艘のヨットが見えた。
「へへん、俺様がそう簡単にあきらめると思ってるのか?」
 彼はそう言って日焼けした(もともと日焼けしてますが)
肌を誇らしげに太陽にさらしていた。もちろんグラサンに薔薇ビキニパンツである。
「やばい、ラムセスが来た。ユーリ、ビキニはとうぶんお預けだ。」
 そう言ってカイルはエンジンの速度をあげた。
2隻の船はずっと追いかけっこをしているようだ。

 その様子を見ていた1隻の潜水艦がいた。中には3隊長が乗り込んでいた。
「全く、よく飽きないよな。ずっとおっかけっこしてるぜ。」
                                  
                                       〜終わり〜

<番外編> ラムセスの独り言