***1号続き***
BYまゆねこ


 ユーリがカイルの身を案じて部屋で祈っていた頃、ルサファと別れた
ラムセスが屋敷に帰ってきた。
「ジイサンだと・・・。ルサファの奴め!俺としたことがちょっとカッコつけ
過ぎたかな?」
ラムセスはルサファが別れ際に残したセリフ「王になるころには、きっと
ジイサンだぜ!」がよっぽどこたえたようである。
「あんなこと言うなんて、あんまりだよな!このオレサマに向かって!
でもまあもう1度俺のエジプト王計画を練りなおさなくっちゃ」
 そう言ってラムセスは部屋に籠もって何やら始めた。

 その夜ユーリがトイレに起きると柱の蔭から手招きする者がいた。
見ればラムセスである。
「何よ!こんな夜中に。あんたの部屋なんか行く気ないからね。」
とユーリがそっけなく言うとラムセスは
「まあ、そう言うなって。今夜は襲う気はないからちょっと俺の部屋へ来いよ。いい
もの見せてやるからさあ。」

 あんまりラムセスが言うのでユーリはしぶしぶ彼の部屋へ行った。
中へ入ると高価な紙パピルスが何枚かテーブルに広げてあった。
「なあに、これ?この枠で囲ってある記号みたいなのは?」
ユーリが聞くとラムセスは胸をはって答えた。
「これはカルトゥーシュと言ってまあファラオの紋章だな。これは記号じゃなくてヒ
エログリフなんだけどな。このアヒルみたいなのがくっついてる
のがツタンカーメン、このハヤブサマークは今の王ホレムヘブさ!」
「ふーん、ツタンカーメンのは20世紀で見たことあるかもしれない。
おもしろいのねえ。」
 ユーリが感心して聞くとラムセスはさらに続けた。
「そこでだ!俺がお前に見せたいのは俺のカルトゥーシュとエジプト王
になる計画さ!いずれはお前にも関係あることだからさ」

 と、その時ガタンと音がして扉とともにネフェルトが倒れ込んだ!
「何だ!ネフェルト、お前また聞いてたのか?」
ラムセスが聞くとネフェルトは悪びれもせず答えた。
「うーん残念。おもしろいものが見られると思ったのに!でも兄様相変わらず実現し
そうもないバカな計画たててんのね?」
「うん、あたしもそう思った。エジプト王計画なんて、あたしがテスト一週間前にた
てる計画のようなもんね。結局計画倒れでやらなかったりして
さあ・・」
 ユーリがそう答えるとネフェルトも相づちをうった。
「何を言う!これは男のロマンだ。今度こそ俺は正々堂々とムルシリを
倒してお前を王妃にするんだから。見ろ!この俺のカルトゥーシュを」
 そう言って彼がユーリに見せたカルトゥーシュにはやっぱり!薔薇の
記号が入っていた。それを見たユーリは言った。
「こんな恥ずかしいのやめてよね!20世紀には吉村教授と言ってエジプト遺跡掘っ
てる人がいるんだから。もし間違ってあんたが王になって
こんなの発見されたら世紀を超えた大バカ者よ!」
「そうそう!稀に見る珍発見!エジプトの薔薇王とか何とかさ。ユーリ様
こんなアホほっといて私の部屋に来ない?今度は胸の出ない流行の服
と新しいアクセサリーがあるのよ!」
「わあ、見せて見せて今から行ってもいい?」
 そう言って2人はラムセスを1人残して出て行ってしまった。

「ふっ、所詮女だな、ユーリも!やはり俺のロマンがわかるのは
具合が悪くても同じ男のムルシリ2世くらいかな?チキショー早く
元気になって出てこい!俺は待ってるぜ。」
 ラムセスが1人寂しく哀愁を漂わせていた頃、ウガリットでは
カイルがさかんにクシャミをしていた。キックリが心配して言った。
「陛下、今度はお風邪ですか?やはり当分戦いは無理かな?」
 どうやらカイルの復活も先になりそうであった。

                      〜おわり〜