ラムセス(^_^)vGAT!
BY金


     T

 シ〜〜ンとしたウセル家の奥間で、ラムセスの母は寝所でうずくまっていた。
やっと我が息子が嫁を決め、これで孫の顔を見せてくれると安心しきっていたのに……
4日前の悪夢で望みは粉々になってしまったのだ。
 なんと嫁として連れてきた姫は、敵国ヒッタイト皇帝の側室ユーリ・イシュタル
だったのだ!!
 彼女は、シヨックで3日3晩すすり泣きながら寝こんでしまった。
 4日目の早朝―――。
「こうしては、いられないわ!」
 ラムセス母は、ガバッと跳ね起きた。
「このままでは、ウセル家には跡取りがいなくなる。それでは、名家がつぶれてしまうわ。
何とか、せねば〜!!」

 静寂だった館内に、ラムセス母の呼び声が響き渡った。
「みんな! 起きて、集まってちょうだい! 今日から、このわたくしに協力しても
らいます!!」
 たくさんの侍女や、使用人たちが集まってきた。
「なによ〜、お母さま〜。せっかく実家に帰ってきたから、ゆっくりと眠っていたのに〜」
他家へ嫁いでいた娘たちの、ぼやき声も聞こえてきた。
「いいですか? みなさん。明日からテーベ中の姫君たちに、ウセル家から招待状
を配ります。一致団結して、あの子にすばらしい嫁を選んであげましょう〜!!」
 それから……館内は、絶え間ない修羅場に変わっていった。

 だが当の本人は、テーベにはいなかった。
 ラムセスは肋骨を折る大怪我で病院に入り、退院したあとはネフェルトの
付き添いつきで薔薇園に潜んでいたのだ。
そんな薔薇園に、ハトが一羽飛びこんできた。末の妹が可愛がっていた、白いハトだ。
「兄さま! 大変よ! お母さまが、動きだしたわ〜!!」
 ドシャ〜ン!!
 昼寝をしていたラムセスは、ネフェルトの声に驚きハンモックから転げ落ちた。
「しっかりしてよ! 兄さま!! テーベへ帰るわよ」
「う〜〜〜!(>_<) 」
 痛む腰と胸をさすりながらラムセスは船上の人となり、ネフェルトとともに
テーベへと入っていた。
「まぁ〜! 絶景ね〜。これ、みんな兄さまの妻の座をGATしてやろうと
集まってきたの〜? やっぱり、わたしの兄さまよね〜」
 変な感心を浮かべているネフェルトとは違い、ラムセスはうんざりとした
表情で睨んでいた。
 ウセル家の館前には、五千人の娘たちが長い行列をつくって待っているのだ。
7歳のおませな少女から、50代の熟女たちがいる。
そのなかには、過去に付きあっていた女性たちの姿も見えていた。
「おい、ネフェルト。おれ、薔薇園へ帰る」
「あらっ、いさぎよくないわね〜、兄 さ ま。エジプト1のプレイボーイなら、
こんな人たちを手玉にして、お嫁入りを全部あきらめさせるべきよ! 
それとも逃げ回って、お母さまから無理やり結婚させられた方がいいかしら?」
「おまえには、負けるよ! 」
 賢い妹から見透かされしまったラムセスは、おとなしくネフェルトのあとに
付き館内へと入っていった。

    U

 ド、 ドドド〜ン―――。
 あれから4日後の朝、18人の姫君たちが館内の大広間に勢ぞろいしていた。
彼女らは、ラムセス母の御めがねに適った愛する息子のお嫁有力候補者たちなのだ。
それぞれ身分も財産も違う出身で、ラムセス好みのナイスバディの淑女たちだ。
その前では、ラムセスとラムセス母がデ〜ンと腰かけている。
大広間の周りでは、野次馬となった姉たちが覗き見をしていた。
「さぁ〜、これからみなさんは、ラムセスに自分のご自慢をアプローチして
みてくださいな〜。どんな事でも、よろしいですのよ〜」
 姫君たちはひとりずつ、ラムセスの前に出てPRに精を出しはじめた。
これで彼をGATできたら、美しくすてきな夫と一緒にいられて、裕福な貴族の生活を
楽しめられるのだ。
 
 シコン姫は自分の美声、バレー嬢はたおやかな裸体、リレバ姫は妖しい踊り、
コスモ熟女はみすぼらしい水着姿、
 マサプ娘はハーブを奏で、ユユ姫はすばらしい小説、オリノ姫はみごとな絵、
ネット姫は楽しいHP、ドンクク姫はファッションショー、
 ビルド娘は弓の腕前、ライフ姫はプロレスの腕前、モード嬢は刺繍の絵、
スタム熟女はベリーダンス、メディア娘は自家製の酒、
 サーライ娘は料理、バンド嬢はロックのライブ、マーケ姫は恐ろしい詩、
ヒュール姫は薔薇の花を・・・・(う〜疲れた〜(ーー;))
 
 だが当の本人ラムセスは、何度も大あくびをして乗り気ではない様子だ。
「ねぇ〜! ネフェルト姉さま。みんないい人たちだけれど〜、あたし、
メンフイスで兄さまが連れてきていたユーリがいいなぁ〜。
あの人見ていると、元気になるもの」
 末の妹の意見に、ネフェルトも頷いていた。
「そうよね。ここはひとつ、兄さまにがんばってもらいましょうか?!
ユーリを連れてきて欲しいわよね〜」
「おっ、ネフェルト。その意見、おれも大賛成だ! 馬の用意してくれたか? 
それでは母上、行ってきます」
 ラムセス母の頬に軽くキスを送ったラムセスは、すばやく立ち上がった。
「えっ? ちょっ、ちょっと待ちなさい! ラムセス〜。この方たちから、
お嫁を選んでいきなさい!」
 だがラムセスは、母の手からするりと身をかわした。
「すまねぇな〜、母上。ちょっと、ヒッタイトまで行ってくる。あそこには、おれが
狙っていた娘がいるんだ。彼女たちには気の毒だが、みんなお断りだね!
じゃぁ〜な〜!! 」
「あぁ〜………………\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ? 」
 哀れラムセス母は、去っていく息子を見ながら気を失ってしまった。
そのあとでは、姫君たちの声がテーベの都を揺らしていった。
「きゃぁー! ラムセスさま〜」
「あたしも、行く〜! 」
「きー! くやしい〜! 」
「うわぁぁ〜〜ん」

 ねねさんのネネスをきりっと引き締めたラムセスは、馬上ではるかヒッタイトの
ハットウサの方角を望んでいた。
また新たなライバルとの競い合いが、続いていくのだ。
「がんばってね〜、兄さま。ユーリと、子供ができたら連れてきてよ! 
さっ、それまでは、こちらも……ふんばらなければね!」
揺れる館内で、そうネフェルトは祈り続けていた。

<おそまつ>


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 姫君たちの紹介がすごいわ! 凝っていて。
ただ一人の息子だったら、きっとよき姫と結婚してほしいと
思うラムママの気持ちがわかりますわ〜。
側室、いや、ラムセス家のお掃除係でいいから側においてほしいわ!