イル・バーニの朝顔日記

  5月のある日、生活科の学習で種を選びに行ったイル・バーニは
朝顔の種を選んで育てることにした。カイルには「物好きだな!」と言われ、
ラムセスには「そんな地味なの、どこがいいんだ?」と言われた彼だが、
そんなことには動じない。さっそく種を蒔いて育てることにした。

   5月○日 天気 晴れ

  朝顔の種を鉢に蒔いた。色は赤紫。念のため2個蒔く。あと家の庭にも蒔く予定。種は人差し指の

第2間接の深さに蒔いた。水も忘れずにやる。       

  
「ずいぶん几帳面な日記だわね!イル・バーニ君」
と、先生が言ったがイル・バーニは
「はい、朝顔は薬草になるとも聞いてますし…大事に育てる予定です」と涼しい顔で言う。
クラスのみんなは呆気にとられていた。

   5月△日 天気 曇り

  双葉が出た。大きさは2pくらい、高さは1pくらい。雨が降りそうなので水やりはやめる。以上! 


 「おいイル・バーニ!シーエムって何だ?コマーシャルか?」
ラムセスがとんちんかんなことを聞いた。
「何?ラムセス長さの単位も知らないのか?」
 これにはイル・バーニもあきれたと言うような顔をした。
「何だよ!まだ習ってねえじゃないか!それに素っ気ない文じゃないか?」
 とラムセスはやり返した。
「私は科学的見地から観察しているので…」

イルの言葉はクラスの誰も理解できない!

   6月□日 天気 雨

  本葉が1枚出た。直径は2p3oほど。高さも5pほどに成長する。色は双葉よりやや濃い。以上!

 「あのね…イル・バーニ君!正確なのはいいんだけれどねぇ」
 先生が言った。彼の日記にやや不満があるらしい。
「何でしょうか?先生」
 イル・バーニは顔色も変えずに答えた。
「最後に感想とかそういうのを入れるといいんじゃないかな?そうすれば、その時の自分の気持ちとかが
わかるんじゃないかと思うのだけど…」

 どうやら彼の日記は彼と同じにぶっきらぼうらしい。

   6月☆日 天気 曇りのち雨

  本葉が3枚にふえたのでぼうをたてた。高さは10p。となりのラムセスの薔薇のとげが痛い。以上

  「おいイル・バーニ!俺のとげが痛いってのは何だ!」
 ラムセスが叫んだ。
「何だラムセス?まあ悪く思うな。感想も書けと言われたのでな」
 イルは顔色も変えずに答えた。
「あのなぁ!感想ってのは自分の朝顔に対して書くの!」

 どうやら頭のいいイルにもよくわかってないことがあったらしい…

   7月◇日 天気 晴れ

  本葉も7枚にふえた。つるの長さも10pに成長しラムセスの薔薇にからまっている。

カイル君のユリはやっと芽が出たばかりでかわいそうだ。以上

  「イル・バーニ!ぼくに何かうらみがあるのか?」
カイルが言った。
「いや…別に」
 とイルはこともなげに言った。
「人のユリなんかいいから『朝顔が大きくなってうれしい』とか書くんだってば!」
 とカイルが言うと
「いや気温が上がると成長するのは当たり前ですから」
 
 おいおい!そんなことでいいのか?イル・バーニ!


   7月●日 天気 晴れのち曇り

  つぼみが2個できた。明日の朝には咲きそうである。つぼみは左巻き。ラムセスの頭と同じだと思う。

  「うがー!俺様の頭と同じってどういう意味だ?」
 ラムセスが怒って言った。しかしイルは冷静に…
「だから単なる感想です」
 と言った。先生が日記を見て
「まあイル君!だいぶ感想が書けるようになったじゃない?」
 と半分顔をひきつらせながら言った。

(どうやら彼は客観的な記録文は得意だが感想文は苦手らしい)
 先生も個性が強い生徒達で苦労してるようだ…。

 

※と、ここまでイル・バーニが書いた時点で、夏休みのため育てた鉢を各自が持ち帰りとなった。

 夏休みに彼が続けてどんな日記を書くのだろうか?