***リュイとシャラ(ぐりとぐら編)***


王宮仕えの リュイとシャラは 大きなかごを持って、
王宮から一番近い 森へ 出かけました。

 わたし達の名前は リュイとシャラ
 この世で一番 すきなのは
 お料理すること 製鉄すること
 リュイ シャラ リュイ シャラ

リュイとシャラは 森の奥へ 木の実を拾いに来ました。
「栗を かご いっぱい拾ったら あまーい あまーい 甘栗にしましょうね。」
「ぎんなんを かご いっぱい拾ったら ゆでて 茶碗蒸しに 入れましょうね。」
と、2人が話しながら 拾っていると・・・
まあ!みちのまんなかに とても大きな・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たまごが落ちていました。
大きな大きな戦車くらいのたまごです。
「まあ!なんて大きなたまごでしょう。
これなら ハットゥッサ中の人に配れるくらいの 茶碗蒸しができるわ。
もちろん 拾ったぎんなんも入れてね。」
と、リュイがいいました。
「これだけあれば 王宮の食費はずいぶん浮くわ。財政は 大助かり。
お月さまくらいの 目玉焼きもいいけど ふんわりやわらかな卵焼きもいいわね。」
と、シャラがいいました。
「それよりも ユーリさまが以前おしゃっていた カステラはどう?
朝から晩まで食べても食べても 食べきれないくらいの おおきいカステラができるわ。」
と、リュイがいうと
「それは いいわ。」
と、シャラも賛成しました。

ところで どうやって 持って帰ったらいいのでしょう。
「このたまごは あまり おおきくて、かごにはいらないわ。」
と、リュイがいいました。
「かついでいこうか?」
と、シャラがいいました。
「わたしたち かよわいから かつぐなんてできないわ。」
「足で蹴りながら ころがしていこうか?」
「蹴とばすなんて下品なこと 宮廷女官として できないわ。」

2人は向かい合って うで組みをしながら しばらく考えました。
リュイがポンッと手をたたきました。
「それじゃあ、おなべを持ってきて ここで カステラを作りましょう。」
「うん!それはいい考えだわ!」
シャラもポンと手をたたきました。

リュイとシャラは急いで 王宮にかえりました。
一番 大きなおなべ、小麦粉、バター、牛乳、お砂糖、ボールと
泡立て器、エプロン2枚、火打石、リュックサック。
おなべはおおきくて リュックサックに入りません。
「しかたがない。ひっぱっていこう。」
「しかたがない。ころがしていこう。」
リュイとシャラは おなべをころがしていきました。

リュイとシャラは まず、エプロンをしめました。
「さあ たまごを割るわよ。」
リュイは げんこつで たまごを たたきました。
「おお、いたい。なんて固いんだろう。」
リュイは涙を流して 飛びあがりました。
「たまごをウルヒだと思って たたくのよ。えいっ!!!」
シャラが ありったけの力をこめて たたきました。けれど たまごは割れませんでした。
「固いものには やっぱり鉄よね。鉄でたたいてみましょう。」
 鉄でたたくと たまごは すぐに 割れました。
 リュイは急いで たまごを ボールへ 流しこむと、お砂糖と一緒に
泡立て器で かきまぜて、牛乳と小麦粉を入れました。
 その間に シャラは 石でかまどをつくり たきぎをあつめました。
火打石でシュッと火をつけました。

 さて、おなべにバターをよく塗って、
ボールの中の 材料を 入れて、ふたをして かまどにかけました。

 わたし達の名前は リュイとシャラ
 この世で一番 すきなのは
 お料理すること 製鉄すること
 リュイ シャラ リュイ シャラ

歌いながら やけるのを待っています。

「カステラを作っているのでしょう!とっても いい匂いがするもの。」
リュイとシャラの作っていたカステラの匂いは 王宮までとどきました。
ユーリにカイル、ラムセス、イル=バーニ、カッシュ、ルサファ、ミッタンナムワにハディ。
匂いは 天にまで昇り 天国のザナンザやウルスラ、ティトも集まってきました。

 カステラ作りの リュイとシャラ
 けちじゃないのよ リュイとシャラ
 ごちそうするから 待っていて

「さあ、できごろだわ。」
リュイがふたをとると、
まあ!黄色いカステラが ふんわり とかおをだしました。
「わあ!おいしそう!」
みんなは 目を丸くして 感激しました。

そのカステラが またおいしかったこと!
「20世紀の文明堂のカステラよりおいしいわ。」
ユーリが言いました。

 後に残ったのは、からっぽの おおきいおなべと
あの とってもおおきな たまごの殻だけでした。

 さあ、このからで リュイとシャラは 何を 作ったと 思いますか?

 

                                       参考文献;中川李枝子 「ぐりとぐら」福音館書店