***お風呂の話***
これは私が中学生の時の話である。
真冬の冷たい空気が肌を刺す師走。
この日、忘年会のあったねね父が日付変更線を超える頃帰ってきた。
カチャ、ガラガラ、ドターン。
門に躓いたのであろうか、大きな音を立てての帰宅である。
なんだかボソボソと話し声が聞こえる。どうやらかなりお酒が入っているらしく
ペットのコロとお話しているようだ。
「キャイン」
コロが悲鳴をあげている。ぶたれたのだろうか?
まあ、いいやいつもの事だから放って置こう。
あっ、それよりも早く寝たふりしなくっちゃいつまで起きてるんだ!って怒られるかも。
私はとりあえず電気を消して布団に入った。
ガラガラガッシャン!
しばらくするとまた音がした。どうやら今度は自転車をドミノ倒ししたようだ。
近所迷惑になるからお願いだから早く入ってきてー。私はそう心の中で叫んだ。
キー、バタン。
やっと家の中に入ったようだ。良かった。これで近所迷惑の心配も
そのまま外に寝てしまって凍死もないな。安心してねねはそのまま眠りについた。
次の朝、あれだけ飲んでたのに、ねね父は朝から元気よくペットのコロの散歩に行き、
仕事にもいつもと変わりなく行った。
その日の夜、夕飯も食べ終わって お風呂を沸かした。
「先に入っちゃいなさい」
ねね母が先にお風呂に入るよう 私に言った。私はパジャマを用意して お風呂に入った。
その日の湯船は、ツ○ラの名湯?にごり湯の元が入れてあり湯船の底は見えなかった。
一番風呂のお湯は、暖層と冷層の地層をなしているので私は湯船をかきまぜた。
「ん?何だ?」
かき混ぜた先に何か布らしきものがあたった。
おおかたタオルでも湯船に落ちたのかな?と思い、ガシっとその布らしきものを
つかんで湯船から出してみた。
パンツだった。
それも男物のパンツ。湯船の中で泳いでいたのだ。
私は驚きのあまり、鷲づかみしていたパンツを放した。
「な、なんでパンツが入っているの???」
他にもまだ何か入ってないか湯船の中を手探りした。
その他に、靴下1足とオヤジシャツが にごり湯で底の見えない湯船から発掘された。
「なんなのこれ!?!?!?なんで パンツや靴下がお風呂の湯船に入ってるの?」
私は急いで着替えて、ねね母とねね父を問いただした。
「ああ、そういえば昨日、洗濯機と湯船間違えて洗濯物入れたような気がする」
ねね父が思い出したような一言。
じゃあ、ひょっとして、使用済みパンツや靴下を湯船で煮込んでしまったわけ?
「いやぁ〜そんなの〜!」
ギャ−ギャ−私は騒ぎまくり ねね父を責めた。
「うるさい!そんな小さなことにぎゃーぎゃーわめくな!」
ねね父は怒った……。
ねねは泣いた……。